「なにか、皮膚にぽこっとふくらんでいるところがあるのですが….。」
今回は小児の皮下腫瘤(皮膚の下の部分にふくらんでいる部分がある)についてまとめます。
1. 鑑別診断
以下は小児内科(2016-4)に記載されている「小児で多くみられる皮下腫瘤・結節」についての表です。


それぞれの特徴を簡単にまとめます。
①毛母腫(石灰化上皮種)
・顔面、頸部、上肢に好発。
・単発性、表面常色〜青色に透見される直径1-2cm程度の硬い腫瘤。
・凹凸のある骨様硬腫瘤として触知する。
・自覚症状に乏しいが、軽度の圧痛を伴うことがある。
・エコーでは内部に石灰化を示す高エコー域がみられる。後方エコー減弱あり。
②皮様嚢腫
・出生時から存在する。
・頭部(特に上眼瞼からこめかみ部)に好発する。
・直径1-4cm程度の皮下結節。
・皮膚常色で弾性やや硬のドーム状結節。表皮嚢腫(類表皮嚢腫)と誤診されやすい。
・エコーでは、内部均一な低エコーを示す。後方エコー増強を示す。通常の表皮嚢腫と比較して嚢胞壁は厚く、不均一である。
③神経鞘腫
・圧痛や放散痛を伴う髄鞘を形成するシュワン細胞由来の良性腫瘍。
・皮膚常色、圧痛を伴う弾性硬の結節。
・エコー検査では内部血流の評価が重要。
④毛細血管拡張性肉芽腫(化膿性肉芽腫)
・外傷が誘因となり生じる毛細血管の増殖と血管腔の拡張を主体とした血管腫。
・易出血性の光沢のある鮮紅色〜暗紅色を示す弾性軟有茎性結節。
・小児では顔面に好発する。
⑤静脈奇形(海綿状血管腫)
・出生時より血管奇形があるが、臨床的には幼児期に軟らかい皮下腫瘤として触知されて気づくことが多い。
・色調は皮膚常色〜淡い紫紅色調であり、自覚症状に乏しい。
・超音波検査のカラードプラー法にて評価することが重要である。
⑥肥満細胞腫
・生後1年までに蕁麻疹発作を反復し、顔面や体幹に膨疹を繰り返すうちに1cm程度の円形〜紡錘形の褐色小結節が多発する。
・病変部皮膚をこすると膨疹を生じ(Darier徴候)、色素性蕁麻疹ともよばれる。
⑦スポロトリコーシス
・もっとも高頻度にみられる深在性真菌症。
・小児は顔面に好発する。
・関東、九州に多くみられ、関東以北では少ない。
⑧非結核性抗酸菌症
・プールや温泉、循環式浴槽、熱帯魚などから感染する。
・小外傷に汚染水が侵入することで感染する。
・培養検査で起炎菌を同定することが重要。
・治療は抗結核薬、マクロライド系あるいはニューキノロン系抗菌薬を併用する。
⑨結節性紅斑
・下腿伸側に好発する有痛性紅色結節
・小児の場合はウイルス感染や溶血性レンサ球菌感染症を誘発として症状することが多い。
・先行症状は発熱、全身倦怠感、関節痛がある。それに伴い下腿伸側を中心に対称性に境界不明瞭な1-数cm程度の紅色結節が多発する。
頻度としては、日小外会誌第49巻3号(2013-5)では以下のような割合になっています。
対象と方法:2008年1月〜2012年12月までの5年間、皮下腫瘤として摘出術を受けた入院症例を対象としている。術前診断が血管腫、リンパ管種、母斑であったものは除外(獨協医科大学越谷病院小児外科)。
結果:摘出術を受けたのは102例。性別は男児46例、女児56例。病理学的診断は石灰化上皮種が最多で39例(38%)、次に類表皮種17例(17%)、類皮腫6例(5.8%)、脂肪腫5例(4.9%)だった。病理組織検査で悪性腫瘍、境界悪性腫瘍と診断されたのは5例(4.9%)で、診断は悪性黒色腫、繊維粘液性肉腫、デスモイド、滑膜肉腫、神経節芽腫。
2. 画像検査
小児の場合、非侵襲的で外来にて施行できる超音波検査が第一選択です。
超音波検査は局在診断(位置関係、大きさ・形状の評価)が主体であり、エコー輝度によりある程度の質的診断(内部性状や構成物質の同定)は可能ですが、確定診断にまで至れないこともあります。
また、腫瘤が充実性か嚢胞性か、内部に石灰化を含有するか、カラードプラー法で内部血流の評価などに関してはエコーは優れていますが、肉芽腫疾患など非特的な疾患に関しては苦手としています。つまりエコー画像だけでは診断が難しい疾患もあるということです(あたり前ではありますが…)。
では、「CT・MRIなどさらに詳細な検査はどのような場合でおこなえば良いの?」ということですが、
①病変が深部に及ぶ場合
②周囲組織・臓器との連続性が疑われる場合
③手術による切除を検討する場合
にはMRI・CTでの画像検査が有用とされます。
3. 超音波検査でのチェックポイント
超音波検査では、皮下腫瘤の特徴的な所見を確認することで診断につながります。診断が可能な疾患は、毛母種(石灰化上皮種)、皮様嚢腫、表皮嚢腫、脂肪腫、神経鞘種などがあります。
エコーで特に注意すべきポイントは以下の3つです。
①腫瘤の内部性状(内部エコー輝度や後方エコーなど)
②腫瘤と周囲組織・臓器との関係(境界明瞭か不明瞭か、臓器との連続性の有無)
③カラードプラ法(内部血流の有無、辺縁血流の亢進)
4. 紹介するタイミング
小児の皮内・皮下腫瘤の多くは良性腫瘍であり、肉芽腫性疾患や皮下脂肪組織疾患などでは自然消退するものもあることから、原則は経過観察で大丈夫です。
しかし、以下3つのポイントがあれば皮膚科への紹介も考えられます。
①患児や親の心配が強いとき
②短期間で大きさや形状に変化が見られるとき
③痛みなどの自覚症状や先行症状がある場合
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