こんにちは。現役小児科医であり、一児の父でもある小児科医りんご🍎です。
今日は、離乳食相談で今でもされる質問の一つ、「赤ちゃんに果汁ってあげなくていいの?」というテーマについてお話しします。
実家のご両親から「お風呂上がりには果汁をあげなきゃ」「私たちの頃は3ヶ月からあげていたわよ」と言われて、戸惑っているパパ・ママも多いのではないでしょうか。
結論から言うと、現代の育児において、離乳食開始前の赤ちゃんに果汁を与える必要はありません。
なぜ昔は推奨されていたのか、その理由を知るとスッキリ納得できるはずです。
なぜ「昔」は果汁をすすめていたの?
おじいちゃん・おばあちゃん世代が「果汁」を勧めるのには、当時の切実な理由がありました。
昔の人工乳(粉ミルク)の課題
一昔前の粉ミルクは、今ほど栄養設計が完璧ではありませんでした。特に不足しがちだったのが「鉄分」と「ビタミンC」です。
- 鉄分の不足: 鉄分が足りないと貧血のリスクがあります。
- ビタミンCの不足: ビタミンCは鉄分の吸収を助ける役割があり、また欠乏すると壊血病(かいけつびょう)などのリスクもありました。
そのため、当時の医学界では、不足する栄養を補うために「生後3〜4ヶ月頃から果汁でビタミンを補給する」ことが推奨されていたのです。
「今」果汁が必要ない3つの理由
現代では、母子手帳の記載も消え、『必要ない』と明言できます。それには以下の理由があります。
① 粉ミルクの進化
現代の人工乳は、母乳の成分を徹底的に研究し、鉄分もビタミンCも、赤ちゃんが成長するのに十分な量がバランスよく配合されています。 母乳や今のミルクを飲んでいれば、果汁で補う必要はまったくないのです。
② 母乳・ミルクの摂取量が減ってしまう
赤ちゃんの胃袋はとても小さいです。甘くて美味しい果汁でお腹がいっぱいになると、メインの栄養源である母乳やミルクを飲む量が減ってしまい、結果としてタンパク質などの重要な栄養が不足する恐れがあります。
③ 虫歯のリスクと味覚形成
早い段階から糖分の多い果汁を覚えると、お水を飲みたがらなくなったり、将来的な虫歯のリスクを高めたりすることにつながります。乳歯が出てからは、齲歯の原因となり得ます。
また、特に就寝時に哺乳瓶で果汁飲料を飲ませるのは厳禁です。乳歯を果汁中の糖質に長時間暴露してしまうことになります。
いつからならあげていいの?
果汁は「栄養補給」としてではなく、離乳食が進んだ時期の「お楽しみの嗜好品」として考えましょう。また、果汁を飲むよりは、果実全体を食べた方が、食物繊維含め、栄養として優れています。
- 時期: 離乳食が始まる5〜6ヶ月以降。
- 与え方: スプーンでひとさじから。あるいは、果物そのものをすりつぶして。哺乳瓶は使わないこと!
- 注意: 市販のベビー飲料(果汁)の飲み過ぎは、肥満や下痢の原因にもなるので注意が必要です。果糖はブドウ糖と同量の時には腸管上皮から効率よく吸収されますが、リンゴやナシの果汁のように果糖が多い時には吸収不全が起こりやすいです。また、ソルビトールはリンゴやナシ、サクランボ、スモモなどに含まれますが、多量に摂取すると小腸では吸収できず、大腸で発酵して、下痢や鼓腸、腹痛を引き起こします。
「昔はこうだった」というアドバイスは、当時の赤ちゃんを守るための知恵でした。でも、今は製品の質も医学の常識もアップデートされています。自信を持って、「今はミルクの栄養が十分だから大丈夫なんだって!」と、おじいちゃん・おばあちゃんに伝えてあげてくださいね。」


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