こんにちは!日々の診療と子育てに奮闘中の小児科医りんごです。
検診の結果で 「悪玉(LDL)コレステロールが高いので、医療機関を受診してください」
という結果が返ってきた時。
大人は大体が肥満・食生活の乱れによる高コレステロール血症ですが、子どもの場合、さらに言うと「一族揃ってみんなコレステロール値が悪い」場合、疾患についても考えておく必要があります。
今回は、「家族性高コレステロール血症(FH)」について分かりやすく解説します。
1. 「食べすぎ」が原因ではない?FHの正体【疫学・原因】
家族性高コレステロール血症(FH)は、生まれつき血液中の悪玉(LDL)コレステロールが高くなる「遺伝的な体質」です。
コレステロールは細胞を作るために不可欠な栄養素ですが、FHのお子さんは、血液中の余分なLDLコレステロールを肝臓に取り込んで処理する「センサー(受容体など)」が、生まれつきうまく働きません。 そのため、食事にどれだけ気をつけていても、血液中にコレステロールが溜まってしまうのです。
💡決して珍しい体質ではありません
日本人の約200〜300人に1人(ヘテロ接合体の場合)がこの体質を持っていると言われています。小学校の全校生徒がいれば、必ず数人は当てはまる計算になります。
2. 子どものうちは「無症状」が当たり前【症状と早期発見のコツ】
FHの最大の特徴であり、同時に怖いところは
「コレステロールが高いこと自体には、痛みも不調もない」という点です。
長期間コレステロールが高い状態が続くと、アキレス腱が厚くなったり、皮膚や結膜にコレステロールの沈着(黄色腫・角膜輪など)が生じることがありますが、小児期にこれらの身体的変化が現れることは稀です。
では、どうやって早期に気づけばよいのでしょうか?
最も重要なカギは「ご家族の病歴(家族歴)」です。
💡 受診前にチェックしてほしい「家族歴」 ご両親、祖父母、おじ・おばの中で、若い頃(男性は55歳未満、女性は65歳未満)に、狭心症や心筋梗塞を起こした方はいらっしゃいませんか? または、ご家族の中に「コレステロールの薬を飲んでいる」という方はいませんか? これらが当てはまる場合、FHを疑う強力なサインとなります。
3. なぜ「子どものうち」から見つける必要があるの?【経過】
「無症状なら、大人になってから治療すればいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、小児科医が早期発見にこだわるのには理由があります。
動脈硬化のリスクは
「コレステロールの高さ × 高かった期間(年数)」で決まります(これをコレステロール・イヤー・スコアと呼びます)。
FHのお子さんは、お腹の中にいる時からずっとコレステロール値が高い状態です。
そのまま放置してしまうと、血管への負担が蓄積し、30代や40代といった働き盛りの時期に心筋梗塞などを起こすリスクが高まってしまいます。
「早めに体質に気づき、血管を守るケアを始めること」が、お子さんの将来の命と健康を守る最大のお守りになるのです。
4. 小児科での「検査」はこわくない
小児科を受診した場合、以下のような検査で総合的に判断します。
血液検査
悪玉(LDL)コレステロール値を確認します。
子どもの場合は「140 mg/dL以上」が一つの目安です。また、甲状腺の病気など、他にコレステロールを上げる原因が隠れていないかも同時に調べます。
アキレス腱の評価(画像検査など)
超音波(エコー)やX線を使って、アキレス腱の厚さを確認することがあります。子どもの場合は成長によっても腱が太くなるため、一度の数値で異常を決めるのではなく、定期的な「成長の記録」としてベースラインを確認します。
5. 将来を守るための「治療とケア」
FHと診断された場合、治療のゴールは「将来の動脈硬化を防ぐこと」です。
① まずは生活習慣のベース作り
食事療法(飽和脂肪酸を控え、青魚や大豆製品を取り入れる)や適度な運動は大切ですが、子どもの成長期において「極端な脂質制限」は絶対にNGです。 コレステロールは脳や神経の発達に欠かせないため、厳格すぎる食事制限は発育の妨げになります。「家族みんなで健康的なバランス食を楽しむ」というスタンスで十分です。
② お薬による治療(薬物療法)
生活習慣の工夫だけでは目標値に届かない場合、お薬(スタチンなど)の力を借ります。 一般的には、身体がある程度成長した10歳頃を目安に、血液検査の結果や家族歴を総合的に判断して開始時期を慎重に決定します。定期的な採血で、肝臓や筋肉への影響(副作用)がないかを確認しながら、安全第一で進めていきます。
まとめ:自分を責めず、まずは小児科へご相談を
もし健診で「コレステロール高値」を指摘されても、決してご自身の食事作りを責めないでください。それはお子さんのせいでも、親御さんのせいでもなく、ただの「体質」です。
FHは、早く見つけて正しく付き合っていけば、将来の大きな病気をしっかり予防できる疾患です。健診の用紙を受け取ったら、まずは「家族の病歴」を確認し、かかりつけの小児科医に用紙を見せてご相談ください。
お子さんの健やかな未来を、私たち小児科医と一緒に守っていきましょう!


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