総論
・新生児に起こる生理的な黄疸であり、高(間接)ビリルビン血症。
・赤ちゃんの皮膚や眼球結膜(白目)が黄色く見える状態となる。
・これは、赤血球が壊れる時に出てくる血色素から産生される間接ビリルビンという黄色い物質が血液中にたまり、血管から皮膚に移動するために起こる。
・日齢2-3から肉眼的に黄疸が出現。日齢4-5にピークを迎える。生後2週間頃までには消失する。
・ある一定の値以上になると治療が必要になるが、それ未満では特に治療不要。
特徴
・黄疸は顔面から始まり胸部に拡がり、眼球結膜の黄染が最もわかりやすい。
・黄疸の消失は、顔面を含む身体の末梢から始まる。
病的黄疸
以下の病的黄疸では原因検索が必要になる。
早発黄疸
・生後24時間以内に出現する肉眼的黄疸が出る
重症黄疸
・ビリルビン値が正常域を超えて高い重症黄疸
・総ビリルビン値(TB)≧ 5 mg/dL/日 の上昇
遷延性黄疸
・黄疸が生後2週間(早産児では生後3週間)以上長引く
検査
黄疸には以下の検査が行われる。
経皮的ビリルビン測定機器
・血清ビリルビン値とは高い相関が示され、精度は±1.5mg/dL、25.5μmol/Lほど。
<計測機器>
2光路2波長光学濃度差式黄疸計JM-105(コニカミノルタ)
多波長スペクトラム解析式黄疸計ビリチェック(アトムメディカル社)
※早発黄疸および光線療法中止直後は皮膚組織と血中ビリルビンの平衡状態が成立していないので、経皮的ビリルビン測定機器でのビリルビン値は血清ビリルビン値と比較して低値にでるため注意すること。
血液検査
・総ビリルビン値(TB)
・アンバウンドビリルビン値(UB)
TB≧2mg/dL、TB/UB≧10%の場合は見かけ上高値になるので注意。
・アルブミン
鑑別疾患
直接、関節ビリルビンのうち、何が高値となるかで鑑別疾患が異なる。
直接ビリルビン高値の場合
・敗血症
・胎内感染(トキソプラズマ、風疹、サイトメガロウイルス、単純性疱疹、梅毒)
・胆道閉鎖症(肝内性、肝外性)
・巨細胞性肝炎
・先天性胆汁うっ滞
・総胆管嚢腫
・cyctic fibrosis
・a1-アンチトリプシン欠損症
間接ビリルビン高値
直接Coombs試験陽性
・溶血性疾患
・Rh不適合
・その他の不適合
同型成人血球による間接Coombs試験陽性
・ABO不適合による溶血性疾患
ヘマトクリット上昇
・双胎間輸血
・母児間輸血
・遷延臍帯結紮
・SGA
赤血球形態異常
・赤血球内酵素欠損症(G6PD, ピルビン酸キナーゼなど)
・αサラセミア
・遺伝性赤血球形態異常
上記以外
・閉鎖性出血(帽状腱膜下出血、頭血腫)
・腸管循環増加(幽門狭窄症、腸閉鎖、血液嚥下)
・代謝内分泌異常(Crigler-Najjar症候群、ガラクトース血症、甲状腺機能低下症、下垂体機能低下、無脳児、チロシン血症)
・薬剤、ホルモン(プレグナンディオール、ノボビオシン、母乳による遷延性黄疸、Lucey Driscoll症候群)
・糖尿病母体児による出生児
・仮死、呼吸窮迫
・先天性心疾患(左室形成不全、大動脈縮窄)
治療・ビリルビン脳症(核黄疸)について
・高ビリルビン血症の治療目的は、ビリルビン脳症(核黄疸)後遺症の予防。
・ビリルビンが神経細胞の細胞内に取り込まれると、細胞のエネルギー代謝系と酸素伝達系に障害を及ぼし、ミトコンドリアの電子伝達系を制御し、アデノシン5′-三リン酸(ATP)の産生を抑制して細胞障害を惹起する。
・中枢神経に対して毒性を持つビリルビンは脂溶性の間接ビリルビンで蛋白と結合しない遊離ビリルビン、すなわちアンバウンドビリルビン(UB:unbound bilirubin)である。脳内のUBが上昇する要因としては、①血中でのUBの上昇、②血液脳関門の透過性の亢進、③脳血流の増加が考えられる。
・ビリルビンは脳細胞に対して毒性があり、特に脳の基底核と言われる場所が障害を受けやすく、後遺症として運動障害、難聴、知的障害が問題となる。
●Praaghによるビリルビン脳症の分類
ビリルビン脳症には急性・慢性があり、それぞれ以下の時期に特有の症状がみられる。
急性ビリルビン脳症(核黄疸)
1期(発病約2〜3日):筋緊張低下、嗜眠傾向、吸啜反射減弱、モロー反射減弱
2期(発病約3日〜1週間):発熱、かん高い泣き声、落陽現象、筋緊張亢進、後弓反張、痙攣
3期(発病1-2週以降):痙性症状(筋緊張亢進)の消退
慢性ビリルビン脳症(核黄疸後遺症)
4期(1年〜1年以降):錐体外路症状が徐々に出現(アテトーゼ、難聴、上方凝視麻痺、知的障害)
<検査所見>
MRI(T2強調):淡蒼球の両側対称性高信号域
ABR:難聴異常の判定に有効
・そのため、ある一定の基準を超える高ビリルビン血症を認めた場合、以下の治療の適応となる。
光線療法
・T-Bilの日齢別の光線療法適応基準は、村田・井村の治療基準がある。神戸大の中村らは、T-BilとU-Bil濃度の両面からの治療適応について提唱している。
・新生児溶血性疾患では、日齢0から光線療法を開始する。
・機序:水に不溶な間接ビリルビンを立体異性体(EZ/EEビリルビン)、構造異性体(EZ/EEサイクロビリルビン)に変化させ、水溶性とする。そして腎臓・肝臓から排泄させることが目的。
・中止基準は、基準値より2-3 mg/dLを下回った場合。しかしリバウンドに注意し、12-24時間以内にビリルビンを再チェックする。
・不感蒸泄が増加するため、水分量を10-20 mL/kg/日増量する。
・眼および性腺(睾丸、卵巣)の保護をしっかり行う。
・直接ビリルビン優位の高ビリルビン血症児には、ブロンズベビー症候群を助長するので注意。
交換輸血
・中村の基準を参考に治療を開始。
・溶血性黄疸は原則として適応となる。
・PraaghⅠ期症状(筋緊張低下・嗜眠・哺乳力低下)の出現時は、ビリルビン値によらず適応となる。
・核黄疸危険増強因子を有している場合、基準を1ランク下げる。
・正期産児では、ビリルビン・アルブミン比 7mg/g以上。
用量
・全交換輸血(mL)=体重(kg)×2×循環血液量(mL/kg)
→循環血液量の約2倍の血液(160-200mL/kg)
循環血液量(mL/kg)=正期産児80, 早産児90, SGA infant 100
・部分交換輸血
多血症 (現在のHt-目標のHt)×体重(kg)×循環血液量(mL/kg) / 現在のHt
目標のHt=55%
高度貧血 (目標のHb-現在のHb)×体重(kg)×循環血液量(mL/kg) / (22-現在のHb)
使用血液
・ABPO不適合による溶血性疾患ではO型人全血液-LRまたは合成血(O型赤血球濃厚液-LR+AB型新鮮凍結血漿-LR)
・Rh不適合による溶血性疾患ではABO同型でRh(-)血、出生前に準備する場合はO型Rh(-)赤血球濃厚液-LR+AB型新鮮凍結血漿-LRを母体血とクロスマッチしておく。
ルート
<末梢動静脈法>
・末梢動脈から瀉血、末梢静脈から輸血を同時に行う。利点としては、isovolemicで血圧変動が少ない、繰り返し施行することが可能、交換率が良い。
・末梢動脈瀉血と中心動脈輸血の組み合わせは心負荷が強いので避ける。
交換速度
・末梢静脈法では 100mL/kg/hrを目安とする。
・交換速度が早すぎると循環系への負荷が大きくなる。
・交換輸血の時間が長い方が、ビリルビン除去効率が良い。
・カルシウムの補給:人全血および合成血使用時は、輸血100mLごとにカルチコール1mLをゆっくり静注する。
その他
・呼吸、心拍、血圧、SpO2、体温をモニター。血液加温は37度。
・施行中は血液バックをときどき混和する。
・開始前、術中、終了時の3回は、ビリルビン、血糖、血算、血液ガスなど検査する。
・合成血ではHtが低くNa濃度が高い製剤もあるため、貧血、高ナトリウム血症、アシドーシスに注意する。
終了後の管理
・ビリルビン値の変動は1時間後、4時間後にチェック。血糖チェックも1時間後に行う。
・新生児溶血性疾患では、交換輸血後体液シフトによる循環血液過剰が起こりやすいので注意する。
ガンマグロブリン療法
・PraaghⅠ期症状がみられず、TB値が交換輸血基準値+4mg/dL以下、UB値が1.5μg/dL以下の場合、ガンマグロブリンの2-5時間投与と光線療法2方向で交換輸血を回避できる場合もある。
・グロブリンの投与量としては、1gを投与する。
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