【小児科医blog:薬剤】抗菌薬の基礎 (Basics of Antibiotics) | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:薬剤】抗菌薬の基礎 (Basics of Antibiotics)

感染症
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  1. 総論
  2. 小児の生理学的特性と抗菌薬の体内動態:成人との違い
  3. 主要抗菌薬の特徴と作用点:臨床での使い分けのヒント
    1. ペニシリン系抗菌薬 (アミノペニシリン)
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨されない細菌
        1. SPACE+K
      3. 使用が推奨される臓器・感染症
      4. 副作用
    2. ペニシリン系 (βラクタマーゼ阻害薬配合薬)
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 使用が推奨されない細菌
      4. 主な副作用
    3. ピペラシリン/タゾバクタム
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 使用が推奨されない主な細菌
      4. 主な副作用
    4. 第1世代セフェム系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 使用が推奨されない主な細菌
      4. 主な副作用
    5. セファマイシン系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 使用が推奨されない主な細菌
      4. 主な副作用
    6. 第3世代セフェム系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 使用が推奨されない主な細菌
      4. 主な副作用
    7. 第4世代セフェム系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 使用が推奨されない主な細菌
      4. 主な副作用
    8. カルバペネム系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 主な副作用
    9. マクロライド系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 使用が推奨されない主な細菌
      4. 主な副作用
    10. スルホンアミド系抗菌薬
      1. 投与量
      2. 使用が推奨される微生物
      3. 使用が推奨される臓器・感染症
      4. 主な副作用
    11. アミノグリコシド系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 主な副作用
    12. ニトロイミダゾール系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 使用が推奨されない主な細菌
      4. 主な副作用
    13. グリコペプチド系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 主な副作用
    14. ニューキノロン系抗菌薬
      1. 使用が推奨される微生物
      2. 使用が推奨される臓器・感染症
      3. 主な副作用
    15. +α
  4. 薬剤耐性(AMR)の脅威:小児医療における現状と課題

総論

・今回は、小児の抗菌薬について、代表的な各薬剤の特徴についてをまとめていきたいと思います。

・それぞれの得意とする細菌について、注意すべき副作用についてをまとめます。

・まずは、小児科における(成人への抗菌薬使用とは異なる) 注意点についてから始めます。

小児の生理学的特性と抗菌薬の体内動態:成人との違い

・まず理解すべき最も基本的な点は、「小児は成人のミニチュアではない」ということです 。

・特に新生児や乳児期においては、薬物を吸収し、体内に分布させ、代謝し、そして排泄するという一連の薬物動態が、成人と大きく異なります。例えば、消化管機能が未熟であるため経口薬の吸収は不安定であり 、体水分量の割合が成人より多いために水溶性の薬剤は分布容積が大きくなる傾向があります。また、肝臓における薬物代謝酵素の活性や、腎臓における排泄機能も発達段階にあるため、同じ薬剤であっても成人と同じように投与すると、予期せぬ高濃度となって副作用を引き起こしたり、逆に効果が得られないほど低濃度になったりする可能性があります。  

参照:小児感染症学会 小児感染免疫第28巻第2号

https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02802/028020089.pdf

・このような生理学的な未熟性は、抗菌薬の投与量や投与間隔を決定する際に、極めて慎重な判断を要求します。例えば、腎機能が未熟な新生児では、腎排泄型の抗菌薬の投与間隔を通常より延長する必要があるかもしれません。これらの特性を無視した画一的な投与は、治療効果の低下や重篤な副作用のリスクを高めることにつながります。

主要抗菌薬の特徴と作用点:臨床での使い分けのヒント

・小児科領域で頻用される抗菌薬には、ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系、ニューキノロン系など、いくつかの主要なクラスが存在します。

・それぞれ異なる作用機序を持ち、効果を示す細菌の種類(抗菌スペクトラム)も異なります。

ペニシリン系抗菌薬 (アミノペニシリン)

・細菌の細胞壁合成を阻害することで効果を発揮します。アモキシシリン(AMPC)などが代表的で、多くの小児感染症の第一選択薬として推奨されています。

注射:アンピシリン (ABPC)

内服:アモキシシリン (AMPC)

使用が推奨される微生物

・気道感染症系の菌 (S. pneumoniae, H. influenzae)

・B郡連鎖球菌 (GBS)

・A群連鎖球菌 (GAS)

・腸球菌 (E. faecalis)

L. monocytogenes

使用が推奨されない細菌

Klebsiella spp

・SPACE+K (Serratia spp., Pseudomonas spp., Acinetobacter spp., Citrobacter spp., Enterobacter spp., Klebsiella aerogenes)

 →SPACE+Kは、主に院内感染で問題となるグラム陰性菌。アンピシリンやセファゾリンなど小児でよく使用する抗菌薬が有効ではないので要注意!このうち、ブドウ糖非発酵菌であるP・Aに関しては、セフォタキシムも有効ではない。

・MRSA

・非定型菌 (M. pneumoniaeなど)

SPACE+K

・SPACE+Kは、主に院内感染で問題となるグラム陰性菌。アンピシリンやセファゾリンなど小児でよく使用する抗菌薬が有効ではないので要注意!このうち、ブドウ糖非発酵菌であるP・Aに関しては、セフォタキシムも有効ではない。

使用が推奨される臓器・感染症

・新生児感染症:Listeria やGBSを対象をする。CTXやGMと併用して使用

・A群溶連菌咽頭炎:外来でAMPC内服

・Gram染色でGPC chainを認めた尿路感染症 (腸球菌s/o):E. faeciumは多くが耐性のため注意

・肺炎・中耳炎:BLNARでも高用量なら治療可能。誤嚥性肺炎も問題なく治療できることが多い。

副作用

・薬剤アレルギー

ペニシリン系 (βラクタマーゼ阻害薬配合薬)

注射:アンピシリン/スルバクタム (ABPC/SBT)

経口:アモキシシリン/クラブラン酸 (AMPC/CVA)

・スペクトラムが広く、使用しやすい。

・偏性嫌気性菌カバーにより、膿瘍や腹腔内感染症にも使いやすい。

使用が推奨される微生物

・腸球菌 (E. faecalis)

・気道感染症関連 (S. pneumoniae, H. influenzae, M. catarrhalis)

・口腔内嫌気性菌 (Prevotella属, Fusobacterium属)

・耐性のない腸内細菌目細菌 (E. coliの他、K. pneumoniae, K. oxytoca, Proteus spp.など)

・Acinetobacter baumannii (スルバクタムが有効)

使用が推奨される臓器・感染症

・AMPCに不応性の中耳炎、急性副鼻腔炎:外来治療の第二選択はAMPC/CVA

・頭頚部膿瘍、膿胸:気道系+嫌気性菌をカバーするのに最適。

・尿路感染症:Empirical therapyとして選択可能。

・腹腔内感染症:Enterobacter属などすべての腸内細菌目細菌をカバーできる訳ではない。

・動物咬傷関連感染症:多くはAMPC/CVAで外来治療可能。

使用が推奨されない細菌

・SPACE+K

・MRSA、多くのE. faecium

・非定型菌 (M. pneumoniaeなど)

主な副作用

・薬剤アレルギー

・消化器症状(特に下痢)

ピペラシリン/タゾバクタム

注射:PIPC/TAZ (ゾシン)

・緑膿菌も偏性嫌気性菌もカバーし、スペクトラムが非常に広い。

・中枢神経感染症には効きにくい。

使用が推奨される微生物

・腸球菌 (E. faecalis)

・多くの腸内細菌目細菌 (E. coli, Klebsiella spp., Proteus spp., Enterobacter spp., Citrobacter spp.など)

・緑膿菌 (P. aeruginosa)

・偏性嫌気性菌 (Bacteroides fragilisなど)

使用が推奨される臓器・感染症

・胆道系感染症:再発型の胆道系感染症では、緑膿菌や腸球菌のカバーなども必要になる。

・腹腔内膿瘍、汎発性腹膜炎:適切ではあるが、緑膿菌までカバーされるのはやや過剰かもしれない。状態が安定しているのであれば、CTX+MNZで十分。また、逆にショックバイタルをきたすほど重症であれば、MEPMも考慮される。

・発熱性好中球減少症:ESBL産生菌を含む耐性菌や嫌気性菌のカバーも必要であれば、MEPMの方が有効。

使用が推奨されない主な細菌

・MRSA

・多くのE. faecium

・S. maltophilia

・非定型菌 (M/ pneumoniaeなど)

主な副作用

・バンコマイシンとの併用による急性腎障害

第1世代セフェム系抗菌薬

・ペニシリン系と同様に細胞壁合成を阻害しますが、世代によって抗菌スペクトラムが異なります。第3世代セフェム系などは広域なスペクトラムを持ちますが、その分、耐性菌誘導のリスクも考慮する必要があります。

・狭域ですが、皮膚軟部、骨・関節関節症には非常に便利。

注射:セファゾリン (CEZ)

内服:セファレキシン (CEX)

使用が推奨される微生物

・メチシリン感受性 S. aureus

・連鎖球菌 (GASなど)

・耐性のない腸内細菌目細菌 (E. coli, K. pneumoniae, K. oxytica, Proteus spp.など)

使用が推奨される臓器・感染症

・皮膚軟部組織感染症

・骨関節感染症

・周術期抗菌薬予防

※MRSAにはVCMなどの抗MRSA薬、経口薬はCLDMやST合剤を選択

・尿路感染症:耐性率は施設により異なるので、アンチバイオグラムを確認すること。

使用が推奨されない主な細菌

・腸球菌

・L. monocytogenes

・MRSA

・B. fragilisなどの偏性嫌気性菌

・非定型菌など

主な副作用

・薬剤アレルギー

セファマイシン系抗菌薬

・嫌気性菌とESBL産生菌をカバーしている。

・内服薬へのオーラルスイッチの選択肢がほぼないのが弱点。

注射:セフメタゾール (CMZ)

使用が推奨される微生物

・耐性のない腸内細菌目細菌(E. coli, K. pneuminiae, K. oxytoca, Proteus spp.など)

・偏性嫌気性菌(腹腔内含む) (Bacteroides fragilisなど)

・特徴的な耐性菌 (ESBL産生菌)

使用が推奨される臓器・感染症

・腹腔内手術の抗菌薬予防

・軽症の腹腔内/胆道系感染症のEmpirical therapy:Enterobacter spp.やCitrobacter spp.などは十分にカバーできていないため、あくまで軽症の場合。その場合は内服移行しやすいABPC/SBTを選択しても良い。

・ESBL産生菌に対するDefinitive tharapy:特に尿路感染症の場合は問題なく使用できる。

使用が推奨されない主な細菌

・腸球菌

・L. monocytogenes

・SPACE+K

・MRSA

・非定型菌など

主な副作用

・ビタミンK欠乏による凝固障害(非常に稀。ルーティーンでの凝固能評価は不要。)

第3世代セフェム系抗菌薬

・小児の重症細菌感染症 (敗血症、細菌性気道感染症、尿路感染症、細菌性髄膜炎など)において非常に重要な薬剤。GPC、GNRいずれについても幅広いスペクトラムをもつ。

注射:セフォタキシム (CTX), セフトリアキソン (CTRX)

経口:セフジニル (CFDN) など

使用が推奨される微生物

・グラム陽性球菌 (メチシリン感受性S. aureus, A群連鎖球菌:GAS, B群連鎖球菌:GBS)

・気道感染症 (S. pneumoniae, H. influenzae, M. catarrhalis)

・口腔内嫌気性菌 (Prevotella spp., Fusobacterium spp.)

・耐性のない腸内細菌目細菌 (E. coli, K. pneumoniae, K. oxytoca, ENterobacter spp., Citrobacter spp.など)

使用が推奨される臓器・感染症

・原因不明の小児/新生児の市中重症敗血症のEmpirical tharapy

・肺炎:通常はABPCで十分。初期治療を外すと全身状態悪化が予想されるケースで使用

・髄膜炎 (新生児含む):PRSPも考慮しVCMを併用する。明らかにグラム陰性菌の場合は、CTXをMEPMに変更する。

・尿路感染症:抗菌薬予防投与中の尿路感染症含め、Empirical therapyとして適切

・腹腔内膿瘍、汎発性腹膜炎:偏性嫌気性菌カバーのため、MNZを併用する。

使用が推奨されない主な細菌

・腸球菌

・MRSA

・L. monocytogenes

・B. fragilisなどの偏性嫌気性菌

・緑膿菌

・非定型菌

・ESBL産生菌、AmpC過剰産生菌 など

主な副作用

・胆石症:セフトリアキソンの場合

・新生児期の核黄疸:セフトリアキソン

・低カルニチン血症:ピボキシル基を含む経口薬

※セフトリアキソンは、セフォタキシムと異なり1日1回投与が可能であるため、外来での抗菌薬加療が行える。しかし合併症はCTXをより多く、注意を要する。

第4世代セフェム系抗菌薬

注射:セフェピム (CFPM):マキシピーム

・「緑膿菌をカバーできるCTX」というイメージ。

・SPACE(+K)と呼ばれる、院内感染で問題となりやすい菌腫をカバーしたい時に便利。よって、血液腫瘍分野などで重宝される。

・肺炎球菌とインフルエンザ菌の耐性には注意。

使用が推奨される微生物

・多くの腸内細菌目細菌 (E. coli, Klebsiella spp., Proteus spp., Serratia spp., Enterobacter spp., Citrobacter spp.など)

・緑膿菌 (P. aeruginosa)

・特徴的な耐性菌:AmpC過剰産生菌

使用が推奨される臓器・感染症

・デバイス関連を含めた院内感染:多くの腸内細菌目細菌をカバーしており、院内発症尿路感染症にも適している。人工呼吸器肺炎のグラム染色でGNRを認めた場合も有効。脳室-腹腔シャント感染症など緑膿菌や黄色ブドウ球菌を対象とする場合には、VCMと併用して使用。

・発熱性好中球減少症:CFPMがキードラッグとなる。緑膿菌カバーのために重要。

・AmpC過剰産生菌による感染症 (特に菌血症):Enterobacter spp.属などAmpC過剰産生菌の頻度が多い菌による菌血症に対して使用する。

使用が推奨されない主な細菌

・腸球菌

・L. monocytogenes

・B. fragilisなどの偏性嫌気性菌

・MRSA

・S. maltophilia

・非定型菌

・ESBL産生菌 など

主な副作用

・セフェピム脳症:投与開始から4日ほどで生じる。けいれん発作・ミオクローヌスを呈する。脳波検査異常は80%で認めるが、MRI検査異常は稀。特に腎機能低下患者において高リスク。ほとんどの場合は可逆性。

カルバペネム系抗菌薬

・超高域抗菌薬。最後の切り札的存在。

 注射:メロペネム(MEPM)

使用が推奨される微生物

・多くの腸内細菌目細菌 (E. coli, Klebsiella spp., Proteus spp., Serratia spp., Enterobacter spp., Citrobacter spp.など)

・緑膿菌 (P. aeruginosa

・偏性嫌気性菌 (腹腔内含む) Bacteroides fragilisなど

特徴的な耐性菌:ESBL産生菌、AmpC過剰産生菌 

使用が推奨される臓器・感染症

・GNRによる小児重症感染症のEmpiric therapy:AmpC過剰産生菌、ESBL産生菌を含め、グラム陰性桿菌のスペクトラムが広い。偏性嫌気性菌もカバーし、重症腹腔内感染症や、上記耐性菌の関連を疑うGNR菌血症などのEmpiric therapyに選択。

・発熱性好中球減少症:CFPMによるEmpiric therapyで改善しない場合の候補。

主な副作用

・けいれん

・Clostridioides difficile感染症

・バルプロ酸ナトリウムの血中濃度を下げるため、併用禁忌。

マクロライド系抗菌薬

注射・経口:アジスロマイシン (AZM)

経口:クラリスロマイシン (CAM)

・非定型菌や百日咳などβ-ラクタム薬でカバーしにくい菌やペニシリンアレルギーの児に有効。

・細菌のリボソームに作用し、タンパク合成を阻害します。マイコプラズマやクラミジアといった非定型病原体にも効果を示しますが、近年、肺炎球菌やマイコプラズマにおける耐性化が問題となっています

使用が推奨される微生物

・非定型菌 (Mycoplasma pneumoniae, Chlamydis spp., Legionella spp.)

・A群連鎖球菌 (GAS)

・気道感染症関連 (S. pneumoniae, H. influenzae, M. catarrhalis)

・Campylobacter spp.

・Bordetella pertussis, Bordetella parapertussis

・Bartonella henselae

使用が推奨される臓器・感染症

・非定型肺炎や性感染症:マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、C. trachomatis感染症など

・百日咳(パラ百日咳)

・ネコひっかき病

使用が推奨されない主な細菌

・MRSA

・多くの腸内細菌目細菌

・緑膿菌

・偏性嫌気性菌

主な副作用

・新生児期の肥厚性幽門狭窄症(特に生後6週以内):生後2週以内の投与がよりリスクが高い。アジスロマイシンよりもエリスロマイシンの方が頻度高い。

・QT延長症候群、心室頻拍などの不整脈:頻度は少ないが重篤。QT延長については、エリスロマイシン>クラリスロマイシン>アジスロマイシンの順に頻度が高かった。

・消化器症状:頻度が多い。

・薬物相互作用:マクロライド系は、肝臓のチトクロームP 450 (CYP3A)に代謝され酵素の阻害反応を起こすので、併用薬に注意が必要。

スルホンアミド系抗菌薬

注射・経口:ST合剤 (SMX/TMP)

・第3世代セフェム系薬異常の広いスペクトラムを持つ。副作用も少なく、価格も比較的安い。

投与量

多くの場合、投与量はトリメトプリム量で表示されている。

・ST合剤の錠剤は、TMP(トリメトプリム):SMX (スルファメトキサゾール)が1:5の割合では配合されており、血中で最も相乗効果が出るように設計されている。

・1gのバクタにトリメトプリムは80mg入っている。

 →つまり、トリメトプリム量1 mg/kg= バクタ 0.0125 g/kg である。

使用が推奨される微生物

・グラム陽性球菌 (MRSA含むS. aureus, GAS)

・小児の気道感染症 (S. pneumoniae, H. influenzae, M. catarrhalis)

・耐性のない多くの腸内細菌目細菌

・その他特殊な菌 (Stenotrophomonas maltophilia, Pneumocystis jirovecii, Nocardia spp.)

使用が推奨される臓器・感染症

・MRSAの関与を疑う感染症:GASなどもカバーしており皮膚感染症に使用しやすい。移行性が良くMRSA関連の他の感染症にも使用できる。耐性には注意。慢性肉芽腫症などの予防内服にも有効。

・呼吸器感染症:基本的にAMPCで十分だが、CTXの内服移行の選択肢のひとつとして検討。

・尿路感染症:入院を要さない場合のEmpiric therapyに。予防内服としても使用する。

・腹腔内感染症:原因が不明の腹腔内感染症の内服移行でMNZとの併用を検討

・その他の推奨される状況:ニューモシスチス肺炎、ノカルジア症、S. maltophilia感染症

主な副作用

・薬疹 (Stevens-Johnson症候群など)

・核黄疸(新生児):セフトリアキソンと同様に、遊離ビリルビンと競合し、核黄疸のリスクとなるので、生後2か月までは使用できない。

・消化器症状

アミノグリコシド系抗菌薬

注射:ゲンタマイシン (GM)、アミカシン (AMK), トブラマイシン (TOB)

・バンコマイシンが対グラム陽性菌とすれば、アミノグリコシド系は対グラム陰性菌に優れる。

・副作用が出現しないようにトラフ値に注意。

・βラクタム系とのシナジー効果もあり。

使用が推奨される微生物

・多くの腸内細菌目細菌

・緑膿菌

・特徴的な耐性菌:AmpC過剰産生菌、ESBL産生菌

・シナジー目的 (単剤では使用しない):GBS、L. monocytogenes、S. aureus、緑色連鎖球菌、腸球菌

使用が推奨される臓器・感染症

・尿路感染症:緑膿菌もカバーし、カテーテル関連尿路感染症などの院内感染も適応

・新生児感染症:GBSもやリステリア感染症のシナジー目的にABPCと併用。ESBL産生菌による非髄膜炎感染症に対して選択できる。髄液移行は不良。

・シナジー効果目的にβラクタム系と併用:新生児GBS感染症、リステリア髄膜炎、感染性心内膜炎

主な副作用

・腎機能障害:可逆性。病態としては尿細管壊死。Fanconi症候群(代謝性アシドーシス・低P血症)の場合もある。投与開始後5-7日目に血清Cr値が上昇するが、投与中止により数日で軽快する。

・蝸牛障害(難聴):耳毒性、不可逆性。

・前庭障害(平衡障害、めまい)

・筋弛緩作用:神経筋接合部でのアセチルコリン遊離を遮断することによる筋弛緩作用。

ニトロイミダゾール系抗菌薬

注射・経口:メトロニダゾール (MNZ)

・対嫌気性菌。

・βラクタム系などと併用されることもある。

使用が推奨される微生物

・偏性嫌気性菌

・Clostridioides difficile

・Helicobacter pylori

・その他特徴的な微生物 (Gardnerella vaginalis, Trichomonas spp., Entamoeba histolytica, Giardia lamblia)

使用が推奨される臓器・感染症

・膿瘍系疾患:脳膿瘍、膿胸、腹腔内膿瘍などβラクタム系と併用する

・CD感染症:軽症例はMNZで内服で十分治療できることが多い。重症例はVCM内服。

・H. pyloriの一次除菌失敗例:一次除菌ではAMPC+CAM+PPIを使用する。しかし近年CAM耐性のH. pyloriが増えており、CAMの代わりに二次除菌ではMNZを使用する。

・それぞれ:Gardnerella腟炎、膣トリコモナス症、赤痢アメーバ、ジアルジア症

使用が推奨されない主な細菌

・偏性嫌気性菌や上記以外の菌に対する単剤使用は推奨されない。

主な副作用

・嘔気

・頭痛

・食欲不振

・けいれん、脳症(小脳失調):メトロニダゾール脳症は小脳失調が特徴的。また末梢神経障害が起こることもある。いずれの神経障害も可逆性であり、中止後数日で改善する。

グリコペプチド系抗菌薬

注射・経口:バンコマイシン (VAM)

・対グラム陽性菌。

・耐性菌のカバーが必要な場合や、デバイス関連感染症のEmpirical therapyに用いる。

使用が推奨される微生物

・Clostridioides difficile (CD)

・ペニシリン耐性S. pneumoniae (PRSP)

・腸球菌 (E. faecium)

・セフェム耐性Streptococcus spp.

・メチシリン耐性ブドウ球菌 (MRSA, MRCNS)

・CD以外のグラム陽性桿菌 (Corynebacterium spp., Bacillus spp., Cutibacterium acnesなど)

使用が推奨される臓器・感染症

・重症CD感染症

・乳児期移行の細菌性髄膜炎のEmpirical therapy:CTX(またはMEPM)と併用

・それぞれの菌腫が関わる感染症

 E. faecium:尿路感染症など

 セフェム耐性Streptococcus属:化学療法に伴う粘膜障害がある患者の菌血症

 MRSA,MRCNS:皮膚軟部組織・骨関節感染症、感染性心内膜炎、術後感染症など

・デバイス関連感染sh用のEmpirical therapy:カテーテル関連血流感染症、VPシャント感染

主な副作用

・第Ⅷ神経障害:耳鳴り、めまい、聴力低下

・Vancomycin infusion reaction:いわゆるレッドマン症候群やレッドパーソン症候群。急速に血中濃度が上昇した時に全身の皮膚の紅潮がみられる場合がある。アナフィラキシーやIgE関連のⅠ型アレルギー反応のように見えるが、バンコマイシンそのものがもつヒスタミン遊離作用による症状。投与速度を落としたり、抗ヒスタミン薬を併用することでコントロールできることが多い。バンコマイシンは60分以上かけて点滴静注。

ニューキノロン系抗菌薬

注射・内服:シプロフロキサシン (CPFX)

内服:トスフロキサシン (TFLX)

・細菌のDNA合成を阻害します。広域な抗菌力を持ちますが、小児では関節毒性などの懸念から、適応は慎重に判断されるべきです。

使用が推奨される微生物

・非定型菌 (Mycoplasma pneumoniae, Chlamydia spp., LEgionella spp.)

・多くの腸内細菌目細菌

・特徴的な耐性菌:ESBL産生菌、AmpC過剰産生菌

・その他特徴的な微生物:百日咳、結核菌など

使用が推奨される臓器・感染症

・非定型菌による感染症:小児の場合、マクロライド系が第一選択。経過不良の場合やマクロライド耐性の場合に使用を検討。

・βラクタム系耐性のGNRの感染症:カルバペネム耐性含め、βラクタム系耐性のGNR感染症に対して、CPFXの使用を検討。

主な副作用

・不整脈 (QT延長)

・末梢神経障害

・アキレス腱断裂:

+α

・抗菌薬を選択する上での大原則は、「可能な限り狭域スペクトルの抗菌薬を第一選択薬とする」ことです 。これは、原因菌に対して効果があり、かつ他の常在菌への影響が少ない薬剤を選ぶことで、耐性菌の出現と蔓延を抑制するためです。不必要に広域な抗菌薬を使用することは、耐性菌を育ててしまうリスクを高める行為に他なりません。  

薬剤耐性(AMR)の脅威:小児医療における現状と課題

・最後に、薬剤耐性(AMR)についてまとめます。

・薬剤耐性(AMR)とは、細菌などの微生物が抗菌薬に対して抵抗性を持ち、薬が効かなくなる、あるいは効きにくくなる現象です。

・AMRは、小児医療においても深刻な影響を及ぼします。有効な抗菌薬が減少すれば、一般的な感染症であっても治療が困難になり、入院期間の長期化、医療費の増大、そして最悪の場合は死亡リスクの上昇につながります。

・日本国内においても、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)、そしてマクロライド耐性マイコプラズマなど、小児科領域で問題となる耐性菌の報告は後を絶ちません 。これらの耐性菌の増加は、治療選択肢を狭め、より強力で副作用の懸念も高い抗菌薬を使用せざるを得ない状況を生み出します。  

・このような状況に対し、国は「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を策定し、抗菌薬の適正使用を推進しています 。

・このプランでは、例えば経口セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド系抗菌薬の使用量を2020年比で50%削減する(2027年目標)といった具体的な数値目標も掲げられています 。

・この目標達成のためには、私たち臨床医一人ひとりが「慎重投与」の原則を深く理解し、日々の診療で実践していくことが不可欠です。それは、目の前の子どもたちを最適な治療で守るという「個の視点」と、未来の医療資源を守り、社会全体の利益に貢献するという「社会の視点」が交差する、重要な責務なのです。

参照:日本臨床微生物学会雑誌第34巻第4号↓

https://www.jscm.org/journal/full/03404/034040259.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/ap_gaiyou.pdf


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