今年も小児科外来を賑わせ続けるRSウイルスです。今年の締めくくりとして、憎きRSウイルスについてまとめておきます。
1. RSウイルスとは
RSウイルス(RS-virus)は、Respiratory Syncytial Virusを略したものです。Respiratory は「呼吸の」と言う意味で、呼吸器系のウイルスであることを示します。Syncytial は、「syncytiumの」と言う意味です。RSウイルスが、ヒト培養細胞でsyncytiumを形成することがあることから、この名が付きました。syncytium(合胞体)は、顕微鏡下で、一つの細胞の核の数が多く、細胞核と細胞質との面積比は等しいため、あたかも、いくつかの細胞が合わさってできたかのように見える状態を言います。
RSウイルスは、2歳までにほとんどのお子さんが1度はかかるウイルスですが、最近はコロナでの感染対策で3歳4歳くらいのお子さんでも流行がみられます。私の地域でも、幼稚園で爆発的に感染がみられていました。特効薬などはなく、治療は基本的に対処療法(病気の症状をやわらげる)を行います。
従来は秋〜冬とちょうど今頃の流行でした。しかし、近年では流行開始時期が早まり夏に流行が認められており、2020年は1年を通じて流行は見られませんでしたが、2021年には5月下旬から急激に増加し、7月中旬にピークを認めました。しかも、定点あたりの報告数が例年の約2倍と大規模な流行となりました。
今年の流行については、小児科学会の資料から。
2022年もRSウイルス感染症の小児患者が増えており、その増加のペースは昨年と同様、従来よりも急峻となっています(図)。2022年第20週以降、中部・近畿を中心とした一部地域で報告数が増加し、その後全国へ拡大しています。

2. 症状
RSウイルスの潜伏期間は2~8日間とされ、発熱・鼻汁・咳などの症状が出ます。通常は数日から1週間くらいかけて徐々によくなります。しばしば、感染したこどもは、症状が現れる前にも、周囲の人たちを感染させる力があります。、感染したこどもは、症状が消えてからも、1-3週間は周囲の人たちを感染させる力があります。治ってからも注意が必要ですね。
基本は軽症で済むことが多いですが、重症化すると気管支炎や肺炎の兆候が見られ、中には呼吸困難を起こして入院することもあります。
3. 検査
RSウイルスでは、鼻咽腔(鼻穴から検査の綿棒をいれて検査します)から鼻汁を採取し
、迅速診断キットで検査を行います。5-10分ほどで検査可能です。ヒトメタニューモウイルス(RSウイルスと症状が似ています)と同時に検査可能なキットもありますが、少し感度(陽性の出やすさ)が低い気も…?
4. パリビズマブ
RSウイルスは基本的には対症療法でよくなるウイルスですが、ときには上記のように重症化して呼吸困難を起こす場合もあります。そのリスクの高いお子さんには、重症化予防としてパリビズマブという抗体製剤を使用してもよいことになっています。
有効性は高いですが、毎月の投与が必要であり、お子さんへの負担ともなります。そのため、しっかりと適応疾患のみに使用することが大切です。
<適応疾患>
1. 早産
在胎28週以下 12ヶ月齢以下まで
在胎29-35週 6ヶ月齢以下まで
2. 慢性肺疾患 24ヶ月齢以下
条件:過去6ヶ月以内に治療を受けた症例
3. 先天性心疾患 24ヶ月齢以下
条件:血行動態に異常のある症例
4. 免疫不全
先天性・後天性免疫不全症 24ヶ月齢以下
条件:T細胞機能異常を呈する症例
悪性腫瘍および移植後 24ヶ月齢以下
条件:移植後および骨髄抑制が予想される症例
腎およびリウマチ疾患 24ヶ月齢以下
条件:中等量以上のステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤使用中の症例、または
先天性ネフローゼ症候群、透析中の症例
5. ダウン症候群 24ヶ月齢以下
条件:解剖学的または生理的・機能的異常、呼吸器感染症での入院歴、
免疫に関する検査データ異常をもつ症例
また、タバコの煙を吸うことは、RSウイルスによる気道の感染症の危険因子の一つと考えられています。こどものRSウイルスによる気道の感染症を防ぐためには、こどもの受動喫煙を防ぐことも大切ですね。


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