【小児科医blog】「お腹がパンパンで苦しい…」子供の呑気症(空気嚥下症)、治すための薬選びと実践的対処法 | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog】「お腹がパンパンで苦しい…」子供の呑気症(空気嚥下症)、治すための薬選びと実践的対処法

消化器
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はじめに:その「お腹の張り」、ただのガス溜まりではありません

・「子供がお腹を痛がる」「おならやゲップが止まらない」。 近所のクリニックで整腸剤をもらったけれど良くならない…と、紹介状を持って外来を受診されるお子さんが増えています。

・検査をしても腸に異常はない。でも、レントゲンを撮ると胃や腸には異常なほどのガス像。 これは「呑気症(どんきしょう)」、あるいは「機能性ディスペプシア(FD)」の一症状である可能性があります。FDについては、下記の内容を確認下さい

・「癖だから様子を見ましょう」と言われがちですが、本人にとっては非常に苦しいものです。今回は、小児科専門医の視点から、「症状の悪循環を断ち切るための薬物療法」について、用量の目安も含めて徹底解説します。


まずは物理的にガスを減らす「消泡剤」

・治療のファーストステップは、今ある苦しさを取り除くことです。

ジメチルポリシロキサン(ガスコン®)

・消化管内の細かいガスの泡(泡沫)の表面張力を低下させ、泡を破裂させて大きなガスにし、ゲップやおならとして体外へ出しやすくします。 「ガスの吸収を良くする」のではなく、「出しやすくする」薬です。即効性は期待できませんが、副作用が極めて少なく、長期投与が可能です。

  • 適応: お腹が張って食事が摂れない、腹痛がある場合。
  • 用量の目安(小児):
    • 散剤(ガスコン散2%など): 1日量として40〜80mg(散剤として2〜4g)を3回に分けて食後に服用。

     1歳:30mg/日、3歳:40mg/日、7歳:60mg/日、12歳:80mg/日

  • 液剤(ガスコンドロップ内用液2%など): 1日量40〜80mg(液として2〜4mLを3回に分けて食後または哺乳後に。
  • 錠剤(ガスコン錠40mgなど): 学童期以降で錠剤が飲める場合、1回1錠(40mg)を1日3回が一般的です。


「心と喉」のアプローチが鍵となる「漢方薬」

・実は、呑気症治療の主役はこちらかもしれません。 呑気症の子は、無意識に空気を飲み込む「噛み締め癖(TCH)」や、ストレスによる「喉の違和感」を抱えていることが非常に多いのです。

半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ / ツムラ16番)

【第一選択となる漢方】 「喉に何かが詰まっている気がして、つばと一緒に空気を飲み込んでしまう」。この感覚(ヒステリー球・梅核気)を取り除きます。不安や緊張が強い、繊細なお子さんに特によく効きます。

  • 用量の目安
    • 成人1日7.5g(分2〜3)に対し、体重換算を行います。
    • 未就学児: 成人の1/3〜1/2量(1日2.5g〜3.75g)
    • 小学生: 成人の1/2〜2/3量(1日3.75g〜5.0g)
    • 中学生以上: 成人と同量(1日7.5g)
  • 【医師からのワンポイント】 味が独特で飲みにくいのが難点です。「ココアに混ぜる」「チョコアイスに挟む」と、風味がマスキングされて驚くほど飲みやすくなります。

六君子湯(リックンシトウ / ツムラ43番)

【胃の動きが悪いタイプに】 すぐに満腹になる、胃もたれがあるタイプに適しています。胃の排出機能を高める「消化管運動機能改善薬」のような働きをし、胃の中にガスや食べ物が停滞するのを防ぎます。

  • 用量の目安: 半夏厚朴湯と同様、年齢・体重に合わせて成人の1/3〜2/3量で調整します。


補助的に使う「整腸剤」

ビフィズス菌・乳酸菌製剤(ビオフェルミン®、ラックB®など)

・単独でガスを減らす力は弱いですが、腸内環境を整えて「異常発酵による新たなガスの産生」を抑える目的で併用します。

  • 用量の目安: 製剤によりますが、1日3g(分3)程度が一般的です。


難治例への「次の一手」:腸管運動改善薬

・一般的な治療で改善しない場合、消化管の動き自体に問題があるケースがあります。

モサプリド(ガスモチン®など)

・胃や腸の動きを活発にするお薬です。本来は成人の慢性胃炎などに使われますが、明らかな胃排出遅延や頑固な便秘を伴う小児の呑気症に対し、用量を調整して処方することがあります。

※小児への安全性は確立されていないため、必ず小児科専門医の管理下で使用します。


薬だけでは治らない?:生活指導

・お薬はあくまで「補助輪」です。根本解決には、以下の3つの習慣を見直す必要があります。

  1. 「歯を離す」意識: 奥歯を噛み締めている時、人間は無意識に嚥下反射を起こしやすくなります。「口を閉じて、歯は離す」を合言葉にしましょう。
  2. 食事中の水分: 食事中に水やお茶で流し込むと、空気も一緒に飲み込みます。汁物は最後に飲むのがコツです。
  3. 便秘の徹底管理: 出口(肛門)が便で塞がっていると、ガスは逃げ場を失います。便秘治療を並行することが回復への近道です。

まとめ:かかりつけ医に相談するタイミング

呑気症は「気のせい」ではなく、本人にとっては生活の質(QOL)を下げる立派な疾患です。

  • お腹が張って食事が食べられない
  • お腹が痛くて夜も眠れない
  • 体重が減ってきている

このような症状がある場合は、単なるガス溜まりではなく、別の病気が隠れている可能性もあります。市販薬で様子を見ず、早めに小児科を受診してください。 まずはガスコンで症状を緩和し、必要であれば漢方薬で心身のバランスを整える。

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