【小児科医Blog:消化器】トドラーの下痢症 | ゆるっと小児科医ブログ
PR

【小児科医Blog:消化器】トドラーの下痢症

消化器
Screenshot

総論

・トドラーの下痢症は、Toddler(幼児)の時期に発生する下痢であり、栄養障害や体重増加不良といった病的な症状を伴わない慢性下痢をさす。

・果糖やソルビトールを含む果汁ジュースやスポーツ飲料の摂取で症状が悪化することが特徴であり、慢性非特異性下痢症や機能性下痢症としても知られている。

・本症は過敏性腸症候群の幼児型としてみなされることもあるが、トドラーの下痢症では腹痛を伴うことは稀である。

病因

・食事内容が関与するものの、浸透圧性下痢ではなく、消化管機能が関与する下痢と考えられている。

・トドラーの下痢症では、口から盲腸までの通過時間に健常小児との差はみられないが、結腸の通過時間が短くなっている。

・ある報告では、リンゴジュースの摂取で増悪し、中止で症状改善があったと言われている。

・果糖やソルビトールの他に、食物線維やオリゴ糖も病態に関与すると考えられている。食物線維やオリゴ糖は腸管内で発酵し、結腸内で短鎖脂肪酸に代謝される。短鎖脂肪酸は結腸のナトリウムや水分の吸収に関与し、腸管の構造と機能を維持するうえでも重要な役割を果たしている。

症状

・慢性的な下痢がみられるにも関わらず、全身状態が良好である点が特徴である。

・一般的に腹痛は伴わず、必要なカロリー摂取が確保されている限り、体重増加も適切に見られる。

・排便回数の増加以外の症状はみられない。

診断

・適切な問診と除外診断によって行われる。

・診断の流れとしては、全身状態の把握、トドラーの下痢症の疑い、そして他の疾患の除外の3点を考慮に入れて進める。

全身状態の把握

・トドラーの下痢症は、全身状態が良好であることが診断の根拠となるため、バイタルサインや活気、体重増加などの発育状況を評価する。

・特に発育の評価は栄養状態を総合的に評価できる重要なポイントである。

トドラーの下痢症を疑う所見

・フルーツジュースの摂取で増悪する下痢を認める。

・全身状態が良好で体重減少がなく、下痢以外に症状がないことが挙げられる。

他疾患の除外

・下痢の原因として頻度の高い感染性腸炎は、下痢症状が発症1週間以内に改善することが多く、トドラーの下痢症のように遷延することは少ない。しかし、乳幼児期においては集団生活の影響で感染性腸炎を繰り返すことがある。

・また、感染性腸炎罹患後に下痢症状が遷延する「腸炎後症候群」も発生することがあるため、長期間の下痢症状は珍しくない。

・また、低年齢であっても、炎症性腸疾患は鑑別の必要性あり。血便や発熱、関節痛、肛門周囲病変などについては丁寧に確認する。

治療

・食事内容の適正化が重要。「4F」に留意することが大切

・「4F」とは、「Fat(脂質)」「Fiber(食物繊維)「Fluid(水分)」「Fruits juice(フルーツジュース)」の頭文字をとったもので、これらの4種類の摂取を適正化させることを意味する。

脂質

過度な脂質制限が下痢を増悪させることが知られている。目安となる資質の摂取量は、総摂取カロリーの35−40%である。

食物線維

・糞便量の増大によって消化管通過時間が延長することにより、下痢症状が改善すると考えられている。食物線維が少ない透明なりんごジュースの方が下痢症状は強く、下痢の改善に食物線維の重要性が指摘されている。

水分摂取量

・慢性的な下痢が続くと、保護者が脱水を心配し、水分摂取が過剰になることがある。

フルーツジュース

・フルールジュースの制限は、脂質や食物線維、水分摂取が完全にコントロールすることは難しい。

・またソルビトールなども増悪因子となるため、頻繁に飲用する飲料については成分表示を確認し、適切に指導する。

ヒスタミンH2受容体拮抗薬

・上記のような食事療法に加えて、近年ではヒスタミンH2受容体拮抗薬の有効性が報告されている。

・ラニチジン(3mg/kg/日)投与により、便性や排便回数の改善が認められ、さらにラニチジン投与中止後も症状の改善が継続していたと報告している。

・作用機序としては、胃酸抑制によるガストリン分泌の増加により、胃の蠕動が抑制され、その結果異結腸反射が抑制されることが推測されている。この治療結果からも、トドラーの下痢症は浸透圧性下痢ではなく、腸管機能に由来する下痢であることが示唆される。

コメント

タイトルとURLをコピーしました
google.com, pub-9029171507170633, DIRECT, f08c47fec0942fa0