【小児科医🍎Blog】急性虫垂炎(Appendicitis)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医🍎Blog】急性虫垂炎(Appendicitis)について

感染症

こんにちは!『ゆるっと小児科医ブログ』へようこそ。

今回は、子どもが急にお腹を痛がったときに、パパやママが一番に心配するかもしれない

急性虫垂炎(いわゆる盲腸)」について解説します。

ただの胃腸炎だと思っていたら実は…ということも多いこの病気。

いざという時に慌てないためのポイントをまとめました。

疫学

急性虫垂炎は、大腸の入り口にある「虫垂」という細長い管に便などが詰まり、細菌が繁殖して炎症を起こす病気です。 小学生から高校生(10代)に最も多く見られますが、実は「小さい子どもほど重症化(虫垂が破裂)しやすい」という厄介な特徴があります。

・好発年齢は学童期以降だが、低年齢では症状が非典型的で診断が遅れる傾向がある。

・低年齢児の虫垂炎は腹部所見が限局せず、また腹部膨満、哺乳低下、不機嫌など虫垂炎と関連の乏しい徴候をきたしやすい。

・下痢の頻度も少なくなく、乳幼児では30-40%、小学生でも16%くらいでは認められる。そのため胃腸炎と診断されることもあり注意が必要。

・5歳以下では、穿孔の割合は年齢と逆相関する。

なぜ子どもの虫垂炎は「発見が遅れやすい」のか?

なぜ発見が遅れ、重症化しやすいのでしょうか? 理由は2つあります。

大人のように「バリア機能」が発達していない

大人のお腹の中には、炎症を包み込んで被害を最小限に食い止める「大網(たいもう)」というエプロンのような脂肪組織があります。しかし、乳幼児はこの大網が未発達なため、虫垂が破れると一気にウンチや膿がお腹全体に広がり、命に関わる「汎発性腹膜炎(はんぱつせいふくまくえん)」を起こしやすいのです。

■子どもは痛みを正確に伝えられない

「どこが痛い?」と聞いても、最初のうちはおへそ周り全体を指すことが多く、ピンポイントで痛みを訴えられません。

病態

・糞石や、粘膜〜粘膜下層の腫大したリンパ組織、屈曲が虫垂内腔を狭窄・閉塞し、盲端側の内圧上昇を引き起こし発症の機転となる。そして腸内細菌が増殖し急性炎症を起こす。

・周囲腸管の炎症が虫垂に波及する場合もある。

身体所見・診察所見

・3主徴は、①嘔吐、②右下腹部痛、③発熱。しかし全て揃うのは全体の半数くらい。

・炎症の影響が腹膜に及ぶと、体性痛として「右下腹部痛」となる。

・年齢が小さいほど、腹部全体の圧痛を訴える場合が多い。またそもそも、腹痛を正確に訴えることができない場合もある。

・逆に年齢が高いほど、右下腹部の痛みを訴える割合が増える。

・発熱は必須の症状ではない。

・腹痛から嘔吐の順が一般的ではあるが、2割は嘔吐が先行する。胃腸炎と間違わないように注意が必要である。

診断

・診断にはPAS(Pediatric Appendicitis Score)が参考になる。

症状・所見点数
右下腹部に移動する痛み
右下腹部痛
咳・打診・跳躍による痛み
嘔気・嘔吐
食欲不振
発熱38度以上
WBC10,000以上の増加
左方移動(好中球7500以上)

・PASは症状と血液検査所見から算出し、7点以上で急性虫垂炎と診断する。感度は70%程度。

・画像診断としては超音波検査が1stである。次に必要に応じて腹部CT検査を考慮する。

・急性虫垂炎は腹部緊急疾患であり、治療方針決定のためにも外科医へのコンサルテーションは必須である。

超音波検査

・エコー検査は被曝の心配がないので小児において特に重要となります。

・圧迫しても潰れない虫垂 (横断像最大径≧6mm )を 探し、同部位に圧痛・反跳痛があれば虫垂炎の疑いです。

・壁構造はリニアで5層構造で描出されるが、炎症があれば不明瞭化する。

・虫垂炎は大体1cm大くらいまでの腫大で、2cmくらいでれば、虫垂というより回腸が疑わしいです。さらに腸蠕動があれば、回腸の疑いが強まります。

・成人では憩室でも糞石がありますが、小児においては糞石があれば虫垂炎の可能性はかなり高いと言えます。

虫垂の探しかた

①右側腹部にて、上行結腸に沿って、縦方向にプローブを当てていく。

②下に行くと、腸腰筋がエコーで描出される。

③圧迫を徐々に解除すると、回盲部が見えてくる。

④エコーを横方向(水平断:長軸像)にすると、腸腰筋の内側に腸骨動静脈が見えてくる。その腹側にソーセージ様で、カラーののらない構造部が見えてくれば、それが虫垂。

・上行結腸と終末回腸、回盲弁を道程し、盲端から連続して径が細まり数cmの長さで盲端に終わる腸管が最終的に虫垂を同定するための根拠となる。

⑤エコー短軸像では、虫垂の直径を確認できる。1cmくらいの腫大であれば虫垂炎の疑い。

原因微生物

・穿孔性虫垂炎の1割に菌血症を合併するが、非穿孔例には基本的に合併していない。

E. coliをはじめとした腸内細菌

・α-溶血性レンサ球菌

・腸球菌(多くはE. faecalis)

・嫌気性菌(B. fragilis, Fusobacterium属, Peptostreptococcus属など)

治療

頻度の高いE. coliと、嫌気性菌 (B. fragilis等) のカバーのある抗菌薬を選択する。

・膿瘍形成のない場合には、ABPC/SBT (アンピシリン・スルバクタム) or CMZ (セフメタゾール)でOK

・膿瘍形成のある場合には、CMZ or CTX (セフォタックス) + MNZ (メトロニダゾール) or TAZ/PIPC (タゾバクタム・ピペラシリン)

・穿孔がなければ、『3-7日間』。

・穿孔があれば、『7-14日間』(手術すれば膿瘍のない例では5-10日間) or 膿瘍消失まで。

超音波検査や造影CT検査で穿孔が『ない』場合

手術をしないケース (軽症例) ※虫垂炎と鑑別の回盲部炎カバーにも有効。

・下記抗菌薬を点滴で1-2日間。内服と合わせて3-7日間

 ABPC/SBT 150-300 mg/kg/day 分4 (成人量 3g×2)

 CMZ 100-150 mg/kg/day 分3 (成人量1g×2-3)

手術を行うケース

・ABPC/SBT 75 mg/kg/dose、CMZ 50mg/kg/dose を術前1回。

超音波検査や造影CT検査で穿孔が『ある』場合

外科的手術を行わず、膿瘍なし

・ABPC/SBT or CMZ 経口摂取可能となれば内服移行、症状と合わせて7-14日間

内服

錠剤・カプセル内服可能/20kg以上

 オーグメンチン250RS ®️3錠+サワシリン®️カプセル 250mg 3cap 分3

上記以外

 クラバモックス®️ AMPCとして90mg/kg/day 分3

外科的手術を行わず、膿瘍あり

・CMZ  100-150 mg/kg/day 分3 (成人量1g×2-3)

CTX(orCTRX)150 mg/kg/day 分3(or 60mg/kg/day 分1) + MNZ 30mg/kg/day 分3

・PIPC/TAZ 337.5 mg/kg/day 分3−4

・経口摂取可能となれば内服薬移行。原則膿瘍消失まで、次回の手術も考慮する。

外科的手術を行い、膿瘍なし

治療開始はABPC/SBT or CMZ

・経口摂取可能となれば、AMPC/CVA

・内服抗菌薬と合わせて術後5-10日間

外科的手術を行い、膿瘍形成あり or 術中所見で残存病変あり

・治療開始は、CMZ or CTX+MNZ or PIPC/TAZを5-7日間程度。

・状態安定後は、培養結果も踏まえてABPC/SBT or CMZ

・経口摂取可能となった後は、AMPC/SBT or ST合剤+MNZ

 ST合剤  0.125g/kg/day 分2

・内服と合わせて膿瘍消失まで行う。

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