病態
・糞石や、粘膜〜粘膜下層の腫大したリンパ組織、屈曲が虫垂内腔を狭窄・閉塞し、盲端側の内圧上昇を引き起こし発症の機転となる。そして腸内細菌が増殖し急性炎症を起こす。
・周囲腸管の炎症が虫垂に波及する場合もある。
・4歳以上、徳に10代前半に多いが、4歳未満でも発症する。
身体所見・診察所見
・3主徴は、①嘔吐、②右下腹部痛、③発熱。しかし全て揃うのは全体の半数くらい。
・炎症の影響が腹膜に及ぶと、体性痛として右下腹部痛となる。
・年齢が小さいほど、腹部全体の圧痛を訴える場合が多い。またそもそも、腹痛を正確に訴えることができない場合もある。
・逆に年齢が高いほど、右下腹部の痛みを訴える割合が増える。
・発熱は必須の症状ではない。
・腹痛から嘔吐の順が一般的ではあるが、2割は嘔吐が先行する。胃腸炎と間違わないように注意。
診断
・診断にはPAS(Pediatric Appendicitis Score)が参考になる。
| 症状・所見 | 点数 |
| 右下腹部に移動する痛み | 1 |
| 右下腹部痛 | 2 |
| 咳・打診・跳躍による痛み | 2 |
| 嘔気・嘔吐 | 1 |
| 食欲不振 | 1 |
| 発熱38度以上 | 1 |
| WBC10,000以上の増加 | 1 |
| 左方移動(好中球7500以上) | 1 |
・PASは症状と血液検査所見から算出し、7点以上で急性虫垂炎と診断する。感度は70%程度。
・画像診断としては超音波検査が1stである。次に必要に応じて腹部CT検査を考慮する。
・急性虫垂炎は腹部緊急疾患であり、治療方針決定のためにも外科医へのコンサルテーションは必須。
超音波検査
・エコー検査は被曝の心配がないので小児において特に重要となります。
・圧迫しても潰れない虫垂(横断像最大径≧6mm)を探し、同部位に圧痛・反跳痛があれば虫垂炎の疑いです。
・壁構造はリニアで5層構造で描出されるが、炎症があれば不明瞭化する。
・虫垂炎は大体1cm大くらいまでの腫大で、2cmくらいでれば、虫垂というより回腸が疑わしいです。さらに腸蠕動があれば、回腸の疑いが強まります。
・成人では憩室でも糞石がありますが、小児においては糞石があれば虫垂炎の可能性はかなり高いと言えます。
虫垂の探しかた
①右側腹部にて、上行結腸に沿って、縦方向にプローブを当てていく。
②下に行くと、腸腰筋がエコーで描出される。
③圧迫を徐々に解除すると、回盲部が見えてくる。
④エコーを横方向(水平断:長軸像)にすると、腸腰筋の内側に腸骨動静脈が見えてくる。その腹側にソーセージ様で、カラーののらない構造部が見えてくれば、それが虫垂。
・上行結腸と終末回腸、回盲弁を道程し、盲端から連続して径が細まり数cmの長さで盲端に終わる腸管が最終的に虫垂を同定するための根拠となる。
⑤エコー短軸像では、虫垂の直径を確認できる。1cmくらいの腫大であれば虫垂炎の疑い。
疫学
・好発年齢は学童期以降だが、低年齢では症状が非典型的で診断が遅れる傾向がある。
・低年齢児の虫垂炎は腹部所見が限局せず、また腹部膨満、哺乳低下、不機嫌など虫垂炎と関連の乏しい徴候をきたしやすい。
・下痢の頻度も少なくなく、乳幼児では30-40%、小学生でも16%くらいでは認められる。そのため胃腸炎と診断されることもあり注意が必要。
・5歳以下では、穿孔の割合は年齢と逆相関する。
原因微生物
・穿孔性虫垂炎の1割に菌血症を合併するが、非穿孔例には基本的に合併していない。
・E. coliをはじめとした腸内細菌
・α-溶血性レンサ球菌
・腸球菌(多くはE. faecalis)
・嫌気性菌(B. fragilis, Fusobacterium属, Peptostreptococcus属など)
治療
・頻度の高いE. coliと、B. fragilis嫌気性菌のカバーのある抗菌薬を選択する。
・膿瘍形成のない場合には、ABPC/SBT or CMZでOK
・膿瘍形成のある場合には、CMZ or CTX+MNZ or TAZ/PIPC
・穿孔がなければ3-7日間。穿孔があれば7-14日間(手術すれば膿瘍のない例では5-10日間)or膿瘍消失まで。
超音波検査や造影CT検査で穿孔が『ない』場合
手術をしないケース
・下記抗菌薬を点滴で1-2日間。内服と合わせて3-7日間。
ABPC/SBT 300 mg/kg/day 分4
CMZ 100 mg/kg/day 分3
手術を行うケース
・ABPC/SBT、CMZを術前1回。
超音波検査や造影CT検査で穿孔が『ある』場合
外科的手術を行わず、膿瘍なし
・ABPC/SBT or CMZ 経口摂取可能となれば内服移行、症状と合わせて7-14日間
内服
錠剤・カプセル内服可能/20kg以上
オーグメンチン250RS ®️3錠+サワシリン®️カプセル 250mg 3cap 分3
上記以外
クラバモックス®️ AMPCとして90mg/kg/day 分3
外科的手術を行わず、膿瘍あり
・CMZ
・CTX(orCTRX)150 mg/kg/day 分3(or 60mg/kg/day 分1)+ MNZ 30mg/kg/day 分3
・PIPC/TAZ 337.5 mg/kg/day 分3−4
・経口摂取可能となれば内服薬移行。原則膿瘍消失まで、次回の手術も考慮する。
外科的手術を行い、膿瘍なし
・治療開始はABPC/SBT or CMZ
・経口摂取可能となれば、AMPC/CVA
・内服抗菌薬と合わせて術後5-10日間
外科的手術を行い、膿瘍形成あり or 術中所見で残存病変あり
・治療開始は、CMZ or CTX+MNZ or PIPC/TAZを5-7日間程度。
・状態安定後は、培養結果も踏まえてABPC/SBT or CMZ
・経口摂取可能となった後は、AMPC/SBT or ST合剤+MNZ
ST合剤 0.125g/kg/day 分2
・内服と合わせて膿瘍消失まで行う。


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