※小児期ヘリコバクター・ピロリ感染症の診療と管理ガイドライン2018(日本小児栄養消化器肝臓学会)参照
https://www.jspghan.org/images/helicobacter_guideline2018.pdf
総論
・ピロリ菌の感染の多くは小児期、特に乳幼児期に成立する。
・日本における健常小児のピロリ感染率は約3~10%と言われている。
感染経路
・約80%は家庭内感染(母子感染70%、父子感染10%):離乳食時の口移しや食べ物を口腔内で冷やす行為などで感染。その他兄弟からの感染もある。
・残りの20%は家庭外感染;保育園での他児からの感染(嘔吐物、糞便など)、障がい者施設での感染。
症状
・ピロリ菌に感染している小児のほとんどは無症状です。
・しかし、胃十二指腸潰瘍発症での下血、貧血でのふらつき等の症状から発見されるケースもある。
疾患
・胃炎(結節性胃炎/非結節性胃炎)
・胃・十二指腸潰瘍
・鉄欠乏性貧血
・慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
診断
下記のうち、2つ以上の検査で陽性の場合、ヘリコバクター・ピロリ感染症と診断される。
生検組織を用いた迅速ウレアーゼ試験 (RUT)
・迅速ウレアーゼ試験(RUT: rapid urease test)は、培養法とならび H. pylori 感染診断のゴ
ールドスタンダードとして様々な研究で用いられてきた。
・原理は、胃粘膜に存在する H.pylori が産生するウレアーゼによって、試薬中の尿素がアンモニアと重炭酸イオンに分解され、アルカリ化によるpH指示薬の変色を利用している。判定までの時間は使用するキットによって違いはあるものの、1〜2時間以内に赤色に変化すると陽性と判断できる。
生検組織を用いた鏡検法(病理組織)検査
・鏡検法は、H. pylori の存在診断のみならず、胃炎の程度や分布、および H. pylori 感染以
外の症状の原因となる疾患の鑑別を同時に評価できる唯一の検査法であり、H. pylori 感染
診断のゴールドスタンダードの一つとされてきた。
・小児の一般診療では H. pylori の胃内の分布や胃炎の進展を考慮して、少なくとも胃前庭部と胃体部からの生検組織による診断が望ましいとされる。
尿素呼気試験 (UBT)
・UBTを行う際に、錠剤が服用できない小児に錠剤を粉砕して投与する場合には、服用後
に口腔内のうがいを行い、ウレアーゼ活性を有する口腔内細菌による偽陽性を防止する。
・UBTの小児におけるカットオフ値は3.5‰が適正との報告があり、カットオフ近傍(2.5〜5
‰)では他の検査を追加するなどして慎重に判定する。
・UBTは、H. pylori が有するウレアーゼ活性を利用し、13Cで標識された尿素の内服前後で
呼気中の13CO2の増加率を測定する検査である。簡便で非侵襲的な検査であるが、小児患者
に対して実施する場合には、フィルムコーティングされた尿素錠剤をかまずに速やかに内
服することができ、呼気の採取が可能である(紙風船を膨らませれば概ね問題ない)こと
が前提となる。やむを得ず錠剤が服用できない小児に尿素錠剤を粉砕して投与する場合に
は、ウレアーゼ活性を有する口腔内細菌による偽陽性を防止するため、服用後に口腔内の
うがいを行う。
・6歳以下ではUBTとHpSAの2法を施行することで診断の精度が上がるとの報告がある。
便中 H. pylori 抗原測定 (HpSA)
・HpSAは、胃から便中に排泄される H. pylori 由来の抗原を測定する検査であり、球状化
した H. pylori の菌体の検出も可能であることから、静菌的薬剤の影響を受けにくいとされ
ている。
・簡便で非侵襲的であり、乳幼児や呼気採取が困難な小児においても検査が施行で
きる。
・現在、モノクローナル抗体を用いた酵素結合免疫吸着法(ELISA: enzyme-linked
immunosorbent assay)とイムノクロマトグラフィー法(IC: immunochromatography)のキッ
トが市販されている。
・小児におけるHpSAのメタ解析では、特にモノクローナル抗体を用いたELISA法で高い精度が報告されており、UBTと並んで小児の感染診断法として推奨される。
抗 H. pylori 抗体測定
・抗体検査は、胃粘膜局所における免疫反応に伴い産生される抗体を測定する間接的な H.
pylori の感染診断法である。
・血清もしくは尿を検体としたIgG抗体をELISA法またはIC法による測定が一般的であるが、唾液や全血を検体として用いる方法などが報告されている。
・抗体検査は、H. pylori の初感染の直後は偽陰性となり、除菌療法成功1年後までおよそ65%が陽性のまま経過する。検査時点での H. pylori 感染の有無を直接証明する検査法ではない。
・また、尿中抗体検査は、蛋白尿のある症例では偽陽性が生じるため、尿中抗 H. pylori 抗体検査を実施する際には、必ず蛋白尿の有無に注意が必要である。
・急性 H. pylori 感染の診断、また H. pylori に対して静菌的な治療薬を中止できない消化性潰瘍の症例や菌体密度の低下が疑われる症例における感染診断の補助診断として利用される。
薬物療法
投与方法:1日2回朝夕
7日間内服治療を行い、8週間後に検査を行い除菌効果判定。
プロトンポンプ阻害剤
ランソプラゾール 1.5 mg/kg/day(最大60mg/day)
・カプセルをはずして腸溶顆粒として、口腔内崩壊錠(OD)は軽く粉砕して投与可
オメプラゾール 1.0 mg/kg.day(最大40mg/day)
・腸溶剤の粉砕投与は不可
ラベプラゾール 0.5 mg/kg/day(最大20mg/day)
エソメプラゾール 4歳以上・体重30kg未満 20mg/日、体重30kg以上 40mg/日
抗菌薬
アモキシシリン 50 mg/kg/day(最大1500mg/day)
クラリスマイシン 15-20 mg/kg/day(最大800mg/day)
メトロニダゾール 10-20 mg/kg/day(最大500mg/day)
治療薬選択
CAM耐性がない場合
PPI+AMPC+CAM療法(PAC療法)
CAM耐性があり、MTZ耐性がない場合
PPI+AMPC+MTZ療法(PAM療法)
CAM耐性、MTZ耐性いずれもある場合
PPI+高濃度AMPC+MTZ療法
何歳から除菌療法は行えるのか
日本消化器病学会
https://www.jsge.or.jp/member/shikkan_qa/helicobacter_pylori_qa
Q.小児は何歳から除菌可能ですか?
A.小児期ヘリコバクター・ピロリ感染症の診断,治療,および管理指針(加藤ら.日本小児科学会雑誌109:1297-1300,2005)では、除菌後の再感染のリスクを考慮して除菌対象年齢を5歳以上としています。しかし、蛋白漏出性胃症や消化性潰瘍を反復するなど除菌治療が必要と判断された場合では5歳未満でも除菌治療が行われています。ただし、除菌治療に関する添付文書では「小児等への投与:小児等に対する安全性は確立されていない(使用経験が少ない)」となっており、治療が必要な場合には保護者に充分な説明を行う必要があります。


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