定義
・好酸球性消化管疾患(EGIDS; eosinophilic gastrointestinal disorders)は好酸球の消化管局所への異常な集積から炎症が生じ、消化管組織が傷害され、機能不全を起こす疾患の総称である。
分類
部位による分類
・炎症の起きる部位によって、好酸球性食道炎(EoE; eosinophilic esophagitis)、好酸球性胃炎(EoG; eosinophilic gastritis)、好酸球性(小)腸炎(EoN; eosinophilic enteritis)、好酸球性大腸炎(EoC; eosinophilic colitis)に分類される。好酸球性の略語をEoとしている。
・2022年に国際的な疾患名の統一がなされ、EoE以外は、食道意外のEGIDsという意味のnon-EoE EGIDSと分類されるようになった。
原因による分類
一次性
・多くはアレルギー疾患の関与がある。
・アトピー性、非アトピー性、家族性に分類される
二次性
・さまざまな疾患の影響でEGIDSが引き起こされ、好酸球性と非好酸球性に分けられる。
好酸球性
・好酸球増多症候群
・他部位のEGIDの合併
非好酸球性
・医原性
・感染
・炎症性腸疾患
・先天性食道閉鎖・狭窄関連
・セリアック病
・血管炎
・強皮症状など…
疫学
・EoEは男性に多く、2000年代以降欧米で急増している。成人を中心に患者数が増加しており、小児の報告数は少ない。
・国際的にはEGEはEoEより稀な疾患とされているが、本邦ではEGEの報告は多く、2011年の報告ではEGEはEoEの5.5倍の患者数であった。小児例もあり。
病態
・一次性EGIDsの多くは喘息などと同様にアレルギー性炎症性疾患である。
・IgE依存性と非IgE依存性があるため、症状出現時期も、食事摂取の数分から数日後と幅広い。
・EoEでは特異的な病態が示されている。抗原による食道粘膜上皮への損傷刺激からthymic stromal lymphopoietin(TSLP)が産生され、樹状細胞を介してTh2細胞からIL-13産生がなされ、IL-13が食道粘膜上皮に作用し、eotaxin-3が産生され好酸球が集積し炎症を起こす。そして集積した好酸球からのtransforming growth factor(TGF)-βがIL-13とともに線維芽細胞からのperiostin産生を促し、繊維化亢進に作用している。つまりTh2系の免疫反応誘導と上皮細胞のバリア機能異常に関連して病態が形成されている。
臨床所見
EoEの症状
・食道の狭窄、機能障害に起因する症状。本邦では通過障害は少なく、胸焼けや心窩部痛が多い。
・乳幼児は哺乳障害、幼児から学童は嘔吐、学童から10歳代では腹痛、嚥下障害、さらに10歳代から若年成人では嚥下障害、つかえ感、食物嵌頓が主要症状。
EoNの症状
・主な好酸球の浸潤部位が消化管粘膜である粘膜浸潤型では嘔吐、下痢、吸収不全をきたし、低蛋白血症や鉄欠乏性貧血を起こす。
・筋層に浸潤の主体がある筋層主体型は閉塞症状、漿膜側に浸潤のある漿膜主体型では腹水が認められる。
・しかし、実際は上記の症状が混在することも多い。
診断
EoEの診断
必須項目
1. 食道機能異常に起因する症状の存在
2. 食道粘膜の生検で上皮内に好酸球数15以上/HPFが存在
参考項目
1. 内視鏡検査で食道内に白斑、縦走溝、気管様狭窄を認める
2. CTスキャンまたは超音波内視鏡検査で食道壁の肥厚を認める
3. 末梢血中に好酸球増多を認める
4. 男性
non-EoE EGIDsの診断
必須項目
1. 症状(腹痛、下痢、嘔吐)を有する
2. 胃、小腸、大腸の生検で粘膜内に好酸球主体の炎症細胞浸潤が存在している(20/HPF以上の好酸球浸潤、生検は数箇所以上で行い、また他の炎症性腸疾患、寄生虫疾患、全身性疾患を除外すること)
3. あるいは腹水が存在し腹水中に多数の抗酸球が存在
参考項目
1. 喘息などのアレルギー疾患の病歴を有する
2. 末梢血中に抗酸急増多を認める
3. CTスキャンで胃、腸管壁の肥厚を認める
4. 内視鏡検査で胃、小腸、大腸に浮腫発赤、びらんを認める
5. 副腎皮質ステロイドが有効である
アレルギー検査
・食物抗原が原因となることが多く、原因食物抗原の同定が重要だが一般的に困難である。
・EGIDsは混合性消化管アレルギーとされており、抗原特異的IgE抗体は必ずしも妖精にならない。
鑑別疾患
EoEの鑑別
・食道病変を有するEGE
・胃食道逆流症(GER)
・好酸球増多症候群
・好酸球性白血病
・セリアック病
・Crohn病
・感染症(カンジダなど)
・アカラシア
・薬剤アレルギー
・移植片対宿主病(GVHD)
non-EoE EGIDsの鑑別
・過敏性腸症候群
・炎症性腸疾患
・アレルギー性肉芽腫性血管炎
・IgA血管炎
・感染症(寄生虫含む)
・好酸球増多症候群
・好酸球性白血病
・放射性腸炎
・虚血性腸炎
・悪性リンパ腫
・薬剤アレルギー
治療
EoEの治療
・第一選択薬としてPPIを使用する(約8割に効果あり)。
通常量で2ヶ月治療し、臨床的・病理組織学的に治療効果がない場合に倍量のPPIを使用する。
・PPIに対する反応性が不良の場合、局所ステロイド薬を中心とした薬物療法、原因食物の除去を目的とした食事療法があり、食道の繊維性狭窄にはバルーン拡張療法が行われる
ステロイド療法
・吸入ステロイド(フルチカゾンやブデソニド)を口腔内に噴霧し嚥下する方法。重症例では全身ステロイド療法も考慮
食事療法
・疑わしい食物除去により症状が改善する場合がある。しかし原因食物の同定は困難であり4種あるいは6種のアレルゲンとなりやすい食物の除去、あるいは成分栄養療法がしばしば行われる。これらの食事療法で寛解が得られた場合、2-4週ごとに1食物群ずつ再導入する。
・症状の改善後は食物の再導入を行い、症状を誘発した食物に関しては除去継続。
non-EoE EGIDsの治療
・第一選択薬として、全身性ステロイド薬が奏功する場合がある(小児で30%、成人で50%が効果)。
EoEよりも罹患部位の表面積も広く、全身性ステロイドを使用する。
・しかし、ステロイドを使用した症例では60%程度で再燃したり、ステロイドの副作用が問題となる。厚生労働省のガイドラインでは、モンテルカストが十二指腸の好酸球浸潤による症状に対する改善効果を示す研究がある。よって、急性増悪時や重症難治例ではなく、時間的猶予がある症例では、ロイコトリエン受容体拮抗薬をまず行ってみる治療も推奨されている(効果:小児55%、成人40%)。しかし、症状が悪化する前に遅延なくステロイド治療を使用できることも重要です。
・食物で疑わしいものがあれば除去で対応する(小児での効果50%)。


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