総論
・魚卵アレルギーは即時型症状で発症することが多く、本邦では魚卵は1-6歳では2番目に多い新規発症アレルゲンである。
・イクラ、タラコ、カズノコ、シシャモの卵、ワカサギの卵、トビコなどの魚卵を摂取する機会が多い。消費量も増加しており要注意。
・イクラはかつては贅沢品でしたが、安価な寿司店の普及などにより年少児のアレルギー発症が増加している。
・イクラの主要アレルゲンは、ビテロジェニンのβ’-コンポーネントであり、魚卵間で交差抗原性を示すが、実際には摂取できることもある。そのため魚卵といって一括りに除去することは推奨されていない。
発症年齢・臨床型分類
・イクラ、タラコ、シシャモの卵、わかさぎの卵、数の子、とび子などがある
・令和3年度に消費者庁食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告によると、魚卵は本邦の即時型食物アレルギーの原因食物として6番目(5.2%)に多かった。
・上記の報告では、年齢別のアレルギー初発原因食物としては、魚卵は1-2歳では第3位(13.0%)、3-6歳では第2位(19.1%)と就学前の幼児に多い結果だった。
・2017年の消費者庁食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告によると、原因食物の内訳は、イクラが最も多く(94.8%)、タラコが2番目に多かった。
アレルゲン, コンポーネント
・魚卵は鶏卵と異なり、卵白はなく卵膜と卵黄から形成される。
・卵黄の主要蛋白であるビテロジェニンが肝臓で合成された後に卵に取り込まれ、タンパク分解酵素によって硬骨魚類卵黄に特有のタンパク質であるβ’−コンポーネントやその他の蛋白に解裂され貯蔵される。
イクラ
・本邦ではサケ、マスの卵巣膜から分離さえた卵粒を塩漬けしたものを指す。
・サケ(Onchorhincus keta)の魚卵であるイクラの主要アレルゲンは、ビテロジェニンのβ’-コンポーネント(Onc k 5)である
・ほかの魚卵のβ’-コンポーネントとの交差反応性があり、同じサケ科の魚卵とは特に強いとされる。
・タラコ、カズノコ、シシャモ卵のβ’-コンポーネントとも交差反応性はあるが、サケ科ほどには強くない。
・その他の卵黄蛋白であるlipovitelin、phosvitinもアレルゲンとなりうる。
・診断には皮膚プリックテストが有用であり、この結果を参考に経口負荷試験を実施する。
・生イクラ10g=イクラ軍艦2個相当となる(3粒=1g, 30粒=10g)
・宮城県立こども病院で2014/1-2018/8に実施されたイクラOFCの研究によると、OFC30例中、要請例は11/30例(37%)であった。特異的IgE抗体抗体からのOFCの陽性率の予測として、50%予測値は7.7UA/mL、95%予測値は20.1 UA/mLであった。
仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019
・海外からの報告も増えており、イタリアやアメリカからもイクラアナフィラキシーの報告が出てきている。
タラコ
・タラコはスケトウダラの魚卵である。
・タラコのアレルゲンはビテロジェニンのβ’-コンポーネントであると考えられているが、詳細はまだ解明されていない。
・イクラのアレルゲンコンポーネントであるOnc k 5はタラコ(スケトウダラ魚卵)のビテロジェニンβ’-コンポーネントと交差抗原性を示す。
・加熱による抗原性変化についての報告はなし。
・タラコ負荷試験の陽性予測には、イクラ特異的IgEとタラコ特異的IgE抗体価比が有用とされている。
Mokito E, et al. Allergology international 2018; 67(3): 364-70.
シシャモ
・海外から輸入される安価なカラフトシシャモの卵。
・海外ではタラの餌として扱われておりアレルギーの報告は少ない。
・β’-コンポーネントはアレルゲンの候補だが、現時点では確定はしておらず、交差反応性についても明確な情報はない。
キャビア
・Beluga caviar, Sevruga caviar(チョウザメ由来)の2種類がある。
・我が国の報告はなく、2008年にBeluga caviar由来のビトロジェニン(Hus h 1)としてBeluga caviarのアレルゲンと同定された。
診断
・本邦での中央値6.6歳児を対象とした研究では、イクラ特異的IgE抗体価34.6 UA/mL以上がイクラアレルギーの診断における95%陽性適中率と報告されている。
・またタラコ特異的IgE抗体価/イクラ特異的IgE抗体価比が低い場合は、タラコが摂取できる可能性が高いとされている。


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