【小児科医blog:アレルギー】薬物アレルギーについて | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:アレルギー】薬物アレルギーについて

アレルギー

Intro

・薬物アレルギーとは、免疫学的機序を介して生じる薬物有害反応(Adverse drug reactions)である。

・薬物有害反応には、「用量依存的に発生する予測可能な反応(中毒・副作用・薬物間相互作用)」と、「常用量以下でも起こる予測不可能な反応(薬物過敏症)」がある。

・薬物過敏症は、一般的に「薬物アレルギー」と呼ばれるものと、「非アレルギー反応」がある。

非アレルギー反応

・偽アレルギー反応、薬物不耐症、特異体質反応により生じる。①その薬物を使用することで発症する副作用が生じることが事前に予測できるタイプと、②不耐症など副作用が生じることが予測できないタイプに分類される。

・最近では、ヒト白血球抗原(HLA: human leukocyte antigen)などに遺伝的要因が原因ともされています。

・病態として、「非特異的肥満細胞脱顆粒」「炎症性メディエーターバランス異常」の2例を挙げる。

非特異的肥満細胞脱顆粒

・造影剤

・筋弛緩剤

・バンコマイシン:red man症候群

炎症性メディエーターバランス異常

・NSAIDs

・アンジオテンシン変換酵素阻害剤

時相による分類

・それでは、本題の薬物アレルギーについてまとめます。

・まずは、薬物摂取からどのくらいの時間経過で症状が出るか、時相による分類です。

・大まかには、症状出現まで早い「即時型」、症状出現が遅い「遅延型」に分けられます。

即時型

・多くは薬剤投与1時間以内に生じる。

・症状:膨疹、血管浮腫、気管支攣縮、喉頭浮腫、低血圧

遅延型

・多くは投与後6時間以降に生じる。典型的には数日後に発現する。

・症状:紅斑、粘膜障害、血球減少

※WHOは、即時反応(暴露後1時間以内発症)と遅延反応(1時間後に発症)に分けることを推奨。

問診事項

・薬物の種類

・併用薬

・症状

・時間経過

・治療反応性

・薬物の使用歴

・どのくらい前のエピソードか

・家族歴

※鑑別疾患として、ウイルス性中毒疹、特発性蕁麻疹に注意。

薬物アレルギー診察での注意点

・薬物アレルギー診察の際、判断を複雑にする因子については要注意の姿勢で見ていく。

複数の薬物使用

・時間経過、アレルギーの起こりやすさ、その後使用歴があるか….などが診断の手がかり

・ひとつひとつデラベリングしていくことが重要

非特異的な症状

発疹・掻痒

・特発性蕁麻疹、ウイルス性発疹でも生じる。本当に薬剤性なのか?

皮膚の紅潮

・薬剤自体の作用のこともあり。バンコマイシンのred man症候群は有名

血圧低下

・迷走神経反射の可能性もあり

賦活剤に対するアレルギー

・薬剤には賦活剤が使用されていることがある。

・賦活剤とは、医薬品、ワクチン、そのほかの製品の有効成分の支持体である。

・特に、複数の薬物、製品にアレルギー反応を認めた場合には、賦活剤への反応を疑うべきである。

原因となりうる医薬品

・コルチコステロイド

・ワクチン

・モノクローナル抗体…etc

原因となりうる賦活剤

即時型:ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール…etc

遅延型:プロピレングルコール….etc

検査:皮膚テスト

・薬物アレルギーの評価として、皮膚テストが有用性が高い。

・皮膚テストには、「プリックテスト」「皮内テスト」「パッチテスト」がある。

プリックテスト

①至適濃度に作成した薬物を前腕内側に1滴落とす

・健常な皮膚面に使用。皮膚炎症が起きている際は行わない

 ※このとき、陽性対照液としてヒスタミン、陰性対照液も使用して、被疑薬と比較できるようにする

②その上からプリック針で皮膚面に対して直角に刺す

・針で静かに刺したら、ティッシュペーパーなどですばやく拭く。

③15-20分後に判定。

 陽性:①膨疹径≧3-5mm、②発赤径≧15mm、③陽性対照液の膨疹径の2分の1以上

皮内テスト:delayed reading

・24-72時間で判定を行う。

・陽性:直径5mm超の浸潤を触れる紅斑の出現

・プリックテスト陰性でも、皮内テスト陽性となることがある。

・高濃度の薬剤で皮膚テストを行った場合、偽陽性が起こりうる。薬物毎に、推奨薬物濃度(反応の怒らない濃度=Non-irritating濃度)が報告されている。先行報告を参考に皮膚テストを行う

皮膚テストの実施推奨時期

・アレルギー症状収束後、4週程度空けてから検査する。これは、早すぎる場合や、逆に時間が経過しすぎた場合は陰性になりやすいためである。

・即時型の場合、花粉症で抗アレルギー薬を内服している場合注意

・非即時型では、ステロイド使用している場合に注意

検査:薬剤リンパ球刺激試験(DLST)

・血液を採取し、白血球のリンパ球を薬物と反応させる。その際のリンパ球の増殖反応を見る。

・原因薬剤に感作されたT細胞が薬剤を認識して特異的に増殖し、リンパ球が増殖する際にthymidineが取り込まれる。その取り込まれる量をcpmで表す。

・判定:180%以上を陽性とする。

・感度58-88%、特異度85-100%

・バンコマイシンやNSAIDs、一部の造影剤で非特異的に陽性になることがあるので注意

検査:薬物誘発試験

・薬物アレルギーにおいて、Gold-Stendardな検査である

・しかし、症状出現のリスクも高いので十分に注意し安全な環境を整えて検査する。

適応:検査のメリットがデメリットより高い場合

禁忌:薬物アレルギーにより生命に危険を及ぼす反応を起こした既往のある場合

検査手順

・統一されたプロトコルはなし。

即時型

High-risk:30-60分間隔で、最大1回投与量の1-10-40-49%を投与

Low-risk:30-60分間隔で、最大1回投与量の10-40-50%を投与

遅延型

Low-risk:初回に最大1回投与量の10分の1を投与し、問題なければ通常量を1-7日間投与

※投与間隔は、実際に薬物摂取から症状出現した時間を参考とする。

薬疹の臨床型と原因薬

・薬剤アレルギーの原因薬は、中枢神経系用薬や抗菌薬が多くを占める。

・薬疹の臨床型別の頻度の高い薬剤をまとめます。

軽度〜中等症

播種状紅斑丘疹型・多型紅斑(EM)型薬疹

・アモキシシリン

・ロキソプロフェン

・アセトアミノフェン

・セレコキシブ

固定薬疹

・NSAIDs

・抗菌薬

扁平苔癬型薬疹

・抗マラリア薬

・クロルプロマジン

光線過敏型薬疹

・フェノチアジン系抗精神病薬中毒

・高血圧薬

・抗菌薬

水疱型薬疹

・チオール含有製剤

・DPP-4阻害薬

乾癬型薬疹

・テルビナフィン

・高血圧薬

・ICI

重症

Stevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死症(SJS/TEN)

臨床的には、表皮壊死性障害に基づく水疱、びらんを特徴とする

境界が不明瞭で隆起のない中央が暗紅色のFlat atypical targetといわれる紅斑を特徴とする

病理組織学的に表皮の壊死性変化が認められ、一見正常にみえる皮膚に、擦るなどの物理的圧力を加えると容易に剥離するNikolsky現象を認める。

治療は、プレドニゾロン(PSL)換算で中等症は原則として0,5-1mg/kg/日、重症は1-2mg/kg/日で開始

・抗菌薬

・抗てんかん薬

・NSAIDs

・アロプリノール

薬剤性過敏症症候群(DIHS)

・抗てんかん薬

・アロプリノール

・抗菌薬

急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)

・抗菌薬

・カルシウム拮抗薬

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