総論
アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis:AR)は小児期に発症した場合、ほとんどは改善なく成人期に移行する。ARと喘息の合併例も多く、ARへの早期介入により喘息の状態改善にもつながる。
病態生理
ダニ・ハウスダスト・花粉・真菌類(カビ)などの抗原が鼻粘膜上に吸入されると鼻粘膜上皮細胞間隙を通過し、表層の分布するマスト細胞の表面でIgE抗体と結合し抗原抗体反応の結果、マスト細胞からヒスタミン・ロイコトリエン(LTs)など多くの化学伝達物質が放出される。これらに反応してくしゃみ・水様性鼻汁・鼻粘膜腫脹(鼻閉)がみられ、これが即時型反応(early phase reaction)と言われる。また、遅発性反応(late phase reaction)として鼻粘膜ではサイトカイン(IL-4, 5, 13)などによって粘膜の反応性が亢進し、鼻粘膜腫脹が起こる。
分類
季節性(花粉症)
発症時期:花粉、開花期
症状:くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉、眼や鼻のかゆみ
随伴症状:眼・咽頭・皮膚症状
・季節性はスギ花粉症が代表的(7割ほど)。
・飛散時期に地域差はあるものの、スギ2-4月、ヒノキ3-5月、イネ科5-9月、ブタクサ8-10月、ハンノキ/白樺1-4月に花粉飛散が多い。
通年性
発症時期:気温の変化、起床時、発作性
症状:季節性と同様
随伴症状:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎
・通年性のほとんどは、ダニが原因。
・通年性という名前だが、1年中同じ程度の症状ではなく、梅雨や秋といったダニ暴露の増える時期は症状が強くなる。
・また1日の中でも、起床時や気温の変化などで発作性に症状が増強する場合もある。
鑑別
急性鼻炎
発症時期:感冒罹患時に多い
症状:咳嗽、くしゃみ、膿性鼻汁、鼻閉、頭痛・発熱など
随伴症状:鼻副鼻腔炎、咽喉頭炎、下気道炎
診断基準
・まず、「鼻のかゆみ・くしゃみ」「鼻漏・鼻閉」「鼻閉」の3主徴について確認。
3主徴:反復性くしゃみ、水様性鼻汁、鼻閉
眼症状(掻痒感、流涙、充血)
咽頭症状(イガイガ感、掻痒感、乾燥感、違和感)
耳症状(外耳道の掻痒感、閉塞感)
呼吸器症状(乾性咳嗽、嗄声)
・小児では、3主徴や眼症状など特徴的な症状だけではなく、口呼吸、いびきや鼻の痒みなどによる鼻擦りや鼻出血など症状も多い。
・また慢性的な鼻閉から、いびきや睡眠時無呼吸など出現することで、落ち着きのなさや集中力低下なども認められることがある。
・検査としては、鼻汁好酸球、アレルゲン検査、誘発テストがある。
臨床的な症状を満たし、検査でも該当する場合、アレルギー性鼻炎と診断する。
治療
抗原除去
・まずは、アレルギー症状の原因となる抗原との接触をへらすことが第一。以下にアレルゲンごとの対策をまとめます。
ダニ
・寝具を清潔に。ダニ退治・駆除のため布団を天日干しして熱処理&乾燥。
・次にダニアレルゲン除去のため、掃除機で吸引。何度も布団を往復するより、時間をかけてゆっくりと掃除機をかける。
・そしてダニ再発予防のため、こまめな手入れや、市販のダニ対策グッズの使用。
花粉症
花粉飛散の多い時期の外出を控える
花粉の付着しにくい、ツルツルした素材の洋服を着る
マスク、メガネ、ゴーグルをつける
髪の毛を束ねて帽子をかぶる
ペット
・可能な範囲で接触を避ける。ペットを清潔に保つ。
薬物療法
第2世代抗ヒスタミン薬
・第2世代抗ヒスタミン薬が治療の中心。第1世代は眠気、胃腸障害、口渇など副作用が強い。第2世代は眠気などの中枢抑制作用が改善されている。
ロイコトリエン拮抗薬(LTRA、オノン®︎・シングレア®︎)
・中等症以上の場合、抗ヒスタミン薬と併用。また眠気が気になる際にも適応
・ちなみに、小児でよく使われるシングレア(モンテルカスト)は鼻炎には適応がない。
鼻噴霧用ステロイド薬(アラミスト®︎:1回左右1噴霧ずつ)
・循環血中への移行が少なく安全性が高い。
・抗ヒスタミン薬で効果不十分な際に適応
アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法含め)
・ARの治癒や治療寛解を期待できる治療法。これ以外の上記の治療法はあくまで対症療法。
・続けてアレルゲンを体内に少量ずつ入れることで、「脱感作(=好塩基球のアレルゲンに対する反応性低下)」をもたらす。
・また、アレルゲン特異的IgG4の産生、制御性T/Bリンパ球誘導によるアレルゲン特異的なTh2細胞の抑制などをもたらし、治療終了後の効果持続や、新たなアレルギー疾患発症抑制、アレルゲン感作の抑制作用もある(すばらしすぎる!)。
・喘息の発症を抑制できる治療としても注目されている。
・皮下免疫療法、皮下注射法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)がある。
・舌下法は2014年〜スギ花粉症、2015年〜ダニ通年性アレルギー性鼻炎に対して保険適応。2018年より小児にも保険適応となっている。
SLIT (舌下免疫療法)
・5歳以下の小児では使用経験が少なく安全性が確立していない。しかし添付文書上の年齢制限はなしと記載されている。
スギ花粉(季節性AR)→シダキュア®︎
ダニ(通年性AR)→ミティキュア®︎
対象患者
・特異的IgE抗体が病態に関与している患者を対象とする
・ダニアレルギー性鼻炎患者あるいはスギ花粉症患者では軽症から最重症までを治療対象とする
・喘息管理についての国際文書であるGlobal Initiative for Asthma(GINA)においては、ダニに感作された鼻炎合併喘息で、%FEV1が70%以上の症例ではダニSLITを考慮することとされているが、わが国では喘息単独の場合には現段階で保険適用はない。
禁忌
・当該アレルゲンのSLIT製剤の投与によりショックを起こしたことのある患者
・重症の喘息患者
慎重投与
・当該アレルゲンのSLIT製剤またはアレルゲンによる診断、治療によりアレルギー症状を発現したことのある患者
・喘息患者
・悪性腫瘍、または免疫系に影響を及ぼす全身性疾患を伴う患者(自己免疫疾患、免疫複合体疾患、または免疫不全症)
開始までの流れ・患者さんへの確認事項
①問診・診察・抗原検査を証明
→アレルギー性鼻炎と診断されている場合、重症度に関わらず使用可能。
②説明資料を渡しておく(家庭で読んできてもらう)
自宅で行うアレルゲン免疫療法のため、医師のみではなく、患者自身も十分な治療の知識をもつ必要がある。そのため、始めるにあたってはガイダンス、治療継続の確認が重要。投与に関する注意事項は、徹底させる必要性がある。
③検査結果説明、SLITの意思の確認
治療開始にあたっては、患者から文書などで治療同意を得るべきである。
スギ花粉症に対しては、花粉飛散期からは開始しないことが極めて重要。さらに、有効性の観点から花粉飛散2か月以前からの治療開始が推奨される。
一方、ダニなどによる通年性アレルギー性鼻炎ではアレルゲンによるIgE抗体酸性の急激な増強は生じないため、いつから開始しても良い。
以下に治療開始にあたって患者の同意を得るべき事項をまとめる。
<患者同意事項>
1.花粉症の場合には花粉飛散時期も含め、長期間の治療を受ける意思がある(最低2年間程度)
2.舌下アレルゲンエキスの服用(舌下に2分間保持)を毎日継続できる
3.少なくとも1か月に1度受診可能である(治療開始1年以内は2週間に1回が良い)
4.すべての患者に効果が期待できるわけではないことが理解できる
5.効果があって終了した場合も、その後効果が減弱する可能性があることが理解できる
6.副作用などの対処法が理解できる
④初回投与
→1ヶ月ほどは副反応(局所反応)が出やすい。しかしほとんどは1ヶ月以内に消失する。
じっくり6ヶ月程度で結果が出る3年継続すると3-5年効果が持続する。
→初回投与後、30分は経過観察。
●必ず守ること:服用後5分間は飲食禁止。
●開始前後しばらく遵守:服用前および服用後2時間は運動・入浴を控える。1ヶ月前後は遵守する。
投与してはならない場合
1. 気管支喘息発作時、気管支喘息の症状が激しいとき
2. 口腔内のそう痒などの症状がひどいとき
3. 抜歯後などの口腔内の術後または口腔内に傷や炎症などがあるとき
4. かぜや体調が悪いとき
5. 舌下投与を長期に中断した後、再開するとき
※旅行や修学旅行のときも控える。トータルで週で7割以上内服を目指す。
局所反応への対応
・初回投与で有症状では、消失まで増量しない
・抗ヒスタミン薬の併用
・吐き出し法:舌下に1-2分おいたあと、飲み込まずに吐き出す方法
中断の目安
2週間。2週間未満の中断ならそのまま再開。2週間以上なら病院で投与
実際の使用例:ミティキュア(ダニ)
●導入
・ミティキュア ダニ舌下錠 3,300 JAUを1週間投与。
・8日目以降は、10,000JAUを投与。3年以上が推奨。
●維持期
・最初は1週間~1ヶ月ごと、慣れれば2ヶ月ごとに外来でフォロー。
・アドヒアランス、副反応の確認、症状・所見の確認後処方調節。
実際の使用例:シダキュア(スギ)
●導入
・シダキュア スギ花粉舌下錠 2,000 JAUを1週間投与。
・8日目以降は、5,000JAUを投与。3年以上が推奨。
●維持期
・最初は1週間~1ヶ月ごと、慣れれば2ヶ月ごとに外来でフォロー。
・アドヒアランス、副反応の確認、症状・所見の確認後処方調節。
参考
環境再生保全機構HP
・ちなみに、環境再生保全機構のHPには、患者さんへの説明に役立つ資料が盛りだくさんです。
・とてもわかり易いので、下記リンク参照です!
小児アレルギーのトリセツ
・また、小児科診療のお助けにはこの1冊。
・非常に読みやすく、外来の合間にも読むことができます。
・去年のおすすめ書籍の紹介もご覧ください。
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