【小児科医blog:アレルギー】牛乳アレルギー(milk allergy)についての基礎知識と正しい対処法 | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:アレルギー】牛乳アレルギー(milk allergy)についての基礎知識と正しい対処法

アレルギー
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こんにちは。小児科医りんごです🍎

今回は、乳幼児の食物アレルギーの中でも頻度が高い、「牛乳(ミルク)アレルギー」について解説します。

「牛乳を飲むと少しお腹がゆるくなる」といった軽い症状から、命に関わるアナフィラキシーまで、その症状や経過は様々です。また、よく混同されがちな「乳糖不耐症」との違いについても正確に理解しておく必要があります。

本記事では、牛乳アレルギーの特徴、診断方法についてをまとめていきます。ぜひ参考にしてください。

総論

・牛乳アレルギーは、牛乳に含まれるタンパク質(カゼインやホエイなど)に対して、体の免疫システムが過剰に反応してしまう病気です。 乳児期に発症することが最も多いです。

・現在 (令和6年度 2024年9月 時点)、即時型食物アレルギーの原因食物では、牛乳(ミルク)アレルギーは全体第3位(13.4%)を占めています。

症状、注意点

・症状には、発疹や蕁麻疹、吐き気、下痢、呼吸困難などがあります。鶏卵と異なり、熱でも抗原性は減りにくいです (どちらかというと鶏卵が特殊)。

・牛乳は、加工食品や菓子、チーズ、ヨーグルトなど多くの食品に含まれているため、注意が必要です。 牛乳アレルギーを持っている方は、食品の表示をしっかりと確認し、十分な注意を払う必要があります。

・乳児アトピー性皮膚炎に合併して発症する例も多いです。

耐性獲得率

・わが国では、乳児期発症の牛乳アレルギー患者の3歳時での耐性化率は60.4%です。乳児期発症のコホートでは3歳で32.6%、5歳で64.1%、6歳で84.8%という報告もあります。ただし、アナフィラキシー既往がある方や、ミルク特異的IgE低下がない症例では耐性獲得しにくいことが報告されています。

原因タンパク質

コンポーネント:カゼイン、ラクトグロブリン

・主なアレルギーコンポーネントは、カゼイン(Bos d 8)と乳糖タンパク質(ホエイ)中のβ-ラクトグロブリンです。

・カゼインは加熱による変性を受けにくく、多くのIgEエピトープを持つなどの性質があり、強い抗原性を持ちます。

・β-ラクトグロブリン(Bos d 5)は加熱によってゲル状に凝集して、反応性が低下します。

・α-ラクトグロブリン(Bos d 4)というものもあります。βはヒトの乳汁には存在しないタンパク質ですが、αはヒトの乳汁と70%以上の相同性を持っています。

交差抗原性

・牛乳とヤギやラクダなどの哺乳類の乳汁と交差抗原性があります。

・ちなみに、同じ牛つながりといっても、牛肉と牛乳に関しては関連性は低いと言われています。

よくある誤解:「乳糖不耐症」との違い

非常によく混同されますが、「乳糖不耐症」と「牛乳アレルギー」は全く別の病気です。

牛乳アレルギー乳糖不耐症
原因免疫の過剰反応(タンパク質が原因)酵素不足(糖質の分解酵素が不足)
症状蕁麻疹、呼吸困難、嘔吐、血便など下痢、腹部膨満感、おなら(皮膚症状は出ない)
危険性アナフィラキシーなど重篤になる可能性あり不快だが、命に関わることはほぼない
検査血液検査(IgE)、皮膚テスト、負荷試験便の検査、呼気テストなど

症状のタイプ(即時型と消化管アレルギー)

牛乳アレルギーには、大きく分けて2つのタイプがあります。

① 即時型(IgE依存性)

摂取後、数分~2時間以内に症状が出るタイプです。血液検査で「特異的IgE抗体」が陽性になることが多いです。

  • 皮膚: 蕁麻疹、赤み、かゆみ
  • 呼吸器: 咳、ゼーゼーする(喘鳴)、呼吸困難
  • 消化器: 嘔吐、腹痛
  • 全身: アナフィラキシーショック(血圧低下、意識障害)※緊急の対応が必要です

② 新生児・乳児消化管アレルギー(非IgE依存性)

摂取後、数時間~数日経ってから症状が出るタイプです。血液検査(IgE)では陰性になることが多く、診断が難しい場合があります。

  • 主な症状: 血便、繰り返す嘔吐、長引く下痢、体重が増えない
  • 特徴: 粉ミルクを開始して数週間以内に「元気だけれど便に血が混じる」といった形で気づかれることが多いです。

診断

ここが非常に重要です。「血液検査で陽性=アレルギー」ではありません。

  1. 問診: 「いつ、何を、どれくらい食べて、どんな症状が出たか」が最も重要な情報です。
  2. 血液検査(特異的IgE抗体): あくまで「感作(アレルギーの準備状態)」があるかを見るもので、陽性でも症状が出ず、飲める子はたくさんいます。逆に、数値が低くても症状が出る子もいます。
  3. 食物経口負荷試験(これが最も大事!): 実際に医師の管理下で少しずつ食べてみて、症状が出るかを確認する検査です。これが最も確実な診断法です。

【注意】 自己判断での「完全除去」は避けてください。必要以上に栄養源を制限することは、お子さんの成長にとってマイナスになることがあります。必ず医師の指示のもとで行いましょう。

治療と管理

必要最小限の除去

・診断がされても、できる限り摂取を少しでも続けていくことが耐性化には必要になります。

・問診によって摂取できる範囲が把握できていれば、それを中止する必要はありません。負荷試験の結果などを参考に、摂取可能な範囲で継続することが、今後の耐性獲得につながります。

・また、乳児においては医師の指示のもと、アレルギー用ミルク(加水分解乳やアミノ酸乳)を使用する場合もあります。

 ※豆ミルクは交差反応(似た構造のアレルゲンに反応すること)のリスクがあるため、第一選択にならないことがあります。

・摂取できるものの、口周囲など付着して皮膚が赤くなる症状は遷延する場合があります。この際にアレルギーが持続していると判断して除去してしまわないことも重要です。

治療中の注意点

カルシウムの不足

・牛乳には多くのカルシウムが含まれており、除去によりカルシウム不足になる場合があります。

・そのため、カルシウムを含む他の食物の摂取を行うように指導する必要があります。

→カルシウム摂取推奨量:幼児期400-600mg、学童期600-800mg

カルシウム100mg含有食品

乳製品:牛乳100mL、ヨーグルト100mg、スライスチーズ1枚(14mg)

乳製品以外:しらす(半乾燥)19g (大さじ3杯)、豆乳320mL、豆腐100g、納豆100g(2パックくらい)、アレルギー用ミルク180-200mL、ひじき7g(大さじ1杯)、小松菜(生) 40-50g

乳酸菌飲料、プロテイン飲料

・また、乳酸菌飲料には乳を乳酸菌や酵母で発酵された飲料も多く、主原料が乳であることにも注意です。

・また、最近は健康志向の高まりからプロテイン飲料が多く売られていますが、こちらにも注意。プロテインにはホエイやカゼインを成分として製造されているものもあり、普通の食事から摂取するより大量のタンパク質が含まれています。プロテイン飲料はパッケージもジュースのように見えるものもあり、味も美味しい商品が増えています。そのため牛乳アレルギー患児のいる家庭で、両親が筋トレ好き….な場合は誤って子供が飲まないように注意が必要ですね。

カゼイン除去ミルク

・カゼイン除去ミルクが販売されており、ミルクアレルギーのお子さんには使用する場合もあります。ミルフィーやMA-1などがありますが、より細かい成分まで分解されているMA-1の方がアレルギー症状は起きにくいです。しかし、値段はミルフィーなどよりMA-1の方が高価ですので、そこが家庭の経済状況などに左右されます。

・また、上記ミルクを使用している場合、ビオチンが不足して殿部発赤などをきたす可能性があります。なのでおしりかぶれには注意をしておきましょう。

食物経口負荷試験(OFC)

・あくまで、OFCこそが食物アレルギー診断の標準診断です。血液検査結果から症状出現の可能性がある場合は、アレルギー症状出現時に対応可能な病院で検査を行いましょう。

牛乳のOFC摂取量

・今までの摂取量、特異的IgE抗体価の数値によって、少量〜日常摂取量のOFC量を決定する。

・現在の摂取量よりひとつ上の段階の負荷を目標とする。

少量:1-3mL(5mL未満)

中等量:5-30mL

高用量:30mL以上

日常摂取量:100 or 200 mL

※牛乳のタンパク質量は、含有率3.3%

 →牛乳30mLには、30mL(g)×3.3/100=1g

※牛乳そのものでも良いし、乳含有加工品を使用すると続けやすい。ヨーグルトは1mL=1mg相当におおよそ当てはまるので、ヨーグルトを日常摂取に用いても問題ない。

負荷試験後の増量目安

 試験陰性→総量の半分量から摂取、問題なければ増量し、負荷試験最終負荷量まで摂取可

   ※増量の目安:3回食べて問題なければ2割増量

 判定保留(軽症程度)→同上

 判定陽性(中等度以上)→負荷試験前の摂取レベルを継続。

牛乳のタンパク質量・摂取可能な加工食品

牛乳重量(タンパク質量)加工食品
200mL(6.6g≦)ピザ(ナチュラルチーズ26g)、グラタン1皿
100mL(3.3g)ヨーグルト100g、スライスチーズ1枚(14g)、粉チーズパルメザン((7.5g)、アイスクリーム1カップ(100g)、プリン1個、シチュー1皿
50mL(1.65g)コーヒー牛乳100mL、インスタントカップスープ1袋
30mL(1g)板チョコ1/4枚、乳酸菌飲料(ミニサイズ)、キャンディチーズ1個(5g)、ミルクロール・バターロール1個
10mL(0.33g)食パン1枚
5mL(0.17g)バター1かけ(10g)、ヨーグルト味ラムネ、スライスハム1枚

予後(治る見込みについて)

希望を持っていただきたいのは、牛乳アレルギーは「治りやすいアレルギー」であるということです。 個人差はありますが、自然に耐性を獲得し、飲めるようになるケースも多いです。

定期的な受診と負荷試験で「現在の許容量」を確認し続けることが大切です。


まとめ

牛乳アレルギーは正しい診断と管理を行えば、決して怖い病気ではありません。

もし「ミルクを飲むと口の周りが赤くなる」「便に血が混じった」などの症状があれば、自己判断でミルクを変えたりやめたりせず、かかりつけの小児科医またはアレルギー専門医にご相談ください。

正確な診断が、お子さんの安全と健やかな成長を守ります。

今回はこちらで終了です、ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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