・小児の気管支喘息の多くが、乳幼児期に発症しています。
・しかし、乳幼児では呼吸機能検査や起動過敏性検査などの実施は困難であり、検査による診断は難しい点があります。
定義
・小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(JPGL)2020において、「5歳以下の反復性喘鳴のうち、24時間以上続く明らかな呼気性喘鳴を3エピソード以上繰り返し、β2刺激薬吸入後に呼気性喘鳴や努力性呼吸・酸素飽和度(SpO2)の改善が認められる場合に乳幼児喘息と診断する」とされています。
・β2刺激薬への反応が乏しいものの呼気性喘鳴を認める症例は、「診断的治療」を用いて乳幼児喘息と診断できる。診断的治療とは、「重症度に応じた長期管理薬を1ヶ月間投与し、喘鳴がコントロールできた時点で経過観察し、増悪した場合には投与を再開して喘鳴コントロールの可否を判断すること」。
鑑別疾患
・基本的に1回のみのエピソードと考えられる急性喘鳴と、同一疾患による複数回のエピソードと考えられる反復性喘鳴に分けて考えます。
急性喘鳴
頻度:高
急性副鼻腔炎
副鼻腔は新生児期には1cm前後の上顎洞があるのみで、年齢とともに徐々に発達してくる。
したがって、乳児期には副鼻腔炎が問題になることはほぼなく、年齢があがると問題になる
覚醒時、昼間の咳嗽が多い。副鼻腔Xpが有用。
気管支炎・肺炎
発熱、湿性外装をきたす。胸部Xp、SpO2、血液抗体価検査、鼻咽頭病原体抗原迅速検査
急性細気管支炎
発熱、鼻閉、鼻汁、哺乳力低下をきたす。
RSウイルス迅速検査、ヒトメタニューモウイルス迅速検査
頻度:低
食物アレルギーなどによるアナフィラキシー
全身性に複数の臓器(皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、循環器など)にアレルギー症状が出現。
気道異物
突然の咳嗽、豆類などの摂取歴問診と聴診(3歳未満に多い)
男児に多く、1歳前後に好発する。
ピーナッツ、豆類、ナッツ類が多い。
呼気・吸気両方の胸部Xp
→Holzknecht sign :縦隔が吸気時に患側に、呼気時には健側に移動する
頻度:稀
・腫瘤による気道圧迫(縦隔腫瘍など)
胸痛、肩痛、時に嚥下障害、体位による症状の変化をきたす。
反復性喘鳴
頻度:多
慢性副鼻腔炎
慢性咳嗽、後鼻漏をきたす。副鼻腔Xpが有用
胃食道逆流症
下部食道括約筋の機能不全などにより食道内に胃酸が逆流する現象。
昼間の活動中の乾性咳嗽、夜間や仰臥位での咳き込み
上部消化管造影、24時間pHモニタリング、上部消化管内視鏡検査が有用。
乳児期では、増粘剤を含んだ人工乳が有効な場合もある。PPI使用も考慮される。
慢性肺疾患(新生児期の呼吸障害後)
問診による早産児・低出生体重児の既往、乳児期早期の喘鳴
頻度:低
気管・気管支軟化症
乳児期早期の喘鳴、繰り返す肺炎、チアノーゼ・窒息発作。
喉頭〜頸部気管の軟化症・狭窄症では吸気性喘鳴が主体。
下部気管や気管支の軟化症・狭窄症では呼気性喘鳴が主体。
気管支内視鏡:呼気時に気管・気管支の著明な扁平化および閉塞所見を示す
先天異常による気道狭窄(血管輪や腫瘤など)
乳児期早期の喘鳴。胸部CT・MRIが有用。
気管支原性嚢胞や、縦隔腫瘍など
頻度:稀
閉塞性細気管支炎
膠原病、臓器移植、造血幹細胞移植の既往があれば注意。
気管支拡張症
気道壁の障害により、中枢〜末梢の気道の不可逆的拡張を呈する疾患。
慢性咳嗽、喀痰、血痰、胸痛をきたす。
嚢胞性繊維症
先天性免疫不全症(反復性呼吸器感染)
免疫グロブリン(IgG, IgA, IgM)の測定が有用。
他には、リンパ球サブセット検査や、IgGサブクラス欠損症の評価
※一部地域では、新生児マススクリーニングの一環として、T細胞の新生能を反映するT cell receptor excision circles(TREC)やB細胞の新生能を反映するkappa-deleting recombination excision circles(KREC)の測定が行われており、重症複合免疫不全症(SCID)やX連鎖性無ガンマグロブリン血症(XLA)、毛細血管拡張性運動失調症(AT)などで低値を示す場合がある
心不全
動悸、浮腫、尿量減少をきたす。
胸部Xp、ECG、超音波検査が有用。


コメント