総論
定義:2歳までに発症し、経静脈栄養による管理を要することのある、2週間以上持続する遷延性下痢症
・乳児の消化管は構造上あるいは免疫学的に未熟であり、食物以外にも細菌やウイルスなどの様々な物質に暴露されるため障害を受けやすいです。
・さらに先天的に消化酵素の欠損や免疫異常を認めることもあり、乳児期に遷延する下痢を呈する疾患は多岐にわたります。
原因
・主な原因を下記に示します。
感染性胃腸炎に続発する
・腸炎後症候群
・二次性乳糖不耐症
・食物蛋白誘発胃腸症
頻度は少ないが要注意
・炎症性腸疾患
・好酸球性消化管疾患
・自己免疫性腸症
・IPEX症候群
・膵外分泌機能不全
・神経芽細胞腫
・VIP産生腫瘍
出生直後など新生児期早期からの分泌性下痢
・トランスポーター異常症(先天性クロール下痢症、先天性ナトリウム下痢症、グルコース・ガラクトース吸収不全症、果糖吸収不全性)
・微絨毛封入体病
その他
・感染症(ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、HIV、コレラ菌など)
・代理ミュンヒハウゼン症候群(主訴と身体所見が一致しない場合)
検査
・「難治性下痢症診断の手引き」が診断アルゴリズムを提唱しているので、そちらをまずは参考にする。
問診
・年齢
・季節
・海外渡航歴
・家族内の同様の症状
・食事内容
・抗菌薬の使用
便検査
・便中好酸球
・便潜血検査
・便中カルプロテクチン
血液検査
・CRP、総蛋白、アルブミン、電解質など
・赤血球沈降速度
・非特異的IgE、IgE-RAST
・アレルゲン特異的リンパ球刺激試験
・免疫グロブリン、補体など
画像検査
・腹部レントゲン検査
・腹部超音波検査
・上部消化管内視鏡、小腸カプセル内視鏡、小腸バルーン内視鏡
→粘膜生検での病理検査
便特殊検査
・便中電解質
・便浸透圧検査
・便pH測定
・便中脂肪の顕微鏡検査(SudanⅢ染色)
負荷試験
・各種経口糖負荷試験
・食物経口負荷試験、除去試験
蓄便検査
・3日間の蓄便による脂肪定量検査
・α₁-アンチトリプシンクリアランス
その他
・膵外分泌機能検査(直接的検査法:セクレチン・コレシストキニン刺激テスト、間接的検査法:PFDテスト)
・遺伝学的検査
治療
・症状に対する対症療法を行うと同時に、下痢の原因を検索し、それに対した治療を行う
対症療法
・脱水に対する治療は経口補水が第一選択。しかし、経口摂取不良の場合、重度の脱水の場合は経静脈栄養を行う。特に分泌性下痢では電解質異常や代謝性アシドーシスを認めることがあるので、その補正も行う。
・絶食により改善する場合は、消化吸収障害に起因する浸透圧性下痢が考えられる。一方、絶食後も改善しない場合は、分泌性下痢が原因であることが多い。
薬物療法
・基本的には整腸剤以外は、強くは推奨されていない。しかし、本ブログでは、参考として扱ってほしいため、収斂薬や腸管運動抑制薬なども紹介する。
整腸剤
酪酸菌製剤 商品名:ミヤBM(ミヤリサン)
0.1 g/kg/日 分3
新生児:100mg/日、1/2年:300 mg/日、1年:350mg/日、3年:500mg/日、7 1/2年750mg/日、12年:1,000mg/日
乳酸菌整腸剤(ラクトミン製剤) 商品名:ビオフェルミン(ビオスミン)
新生児:200mg/日、1/2年:600 mg/日、1年:750mg/日、3年:1,000mg/日、7 1/2年1,500mg/日、12年:2,000mg/日
ビフィズス菌配合剤 商品名:ビオスリー
散剤「鳥居」では、1g中に、酪酸菌50mg、ラクトミン10mg、糖化菌50mg配合
新生児:100mg/日、1/2年:300 mg/日、1年:350mg/日、3年:500mg/日、7 1/2年750mg/日、12年:1,000mg/日
吸着薬
天然ケイ酸アルミニウム 商品名:アドソルビン(アルフレッサ)
新生児:200mg/日、1/2年:600 mg/日、1年:750mg/日、3年:1,000mg/日、7 1/2年1,500mg/日、12年:2,000mg/日
収斂薬
タンニン酸アルブミン 商品名:タンナルビン
新生児:200mg/日、1/2年:600 mg/日、1年:750mg/日、3年:1,000mg/日、7 1/2年1,500mg/日、12年:2,000mg/日
禁忌:牛乳アレルギー、原則として細菌性下痢
乳酸カルシウム水和物 商品名:乳酸カルシウム
新生児:200mg/日、1/2年:600 mg/日、1年:750mg/日、3年:1,000mg/日、7 1/2年1,500mg/日、12年:2,000mg/日
禁忌:高カルシウム血症、腎結石、腎不全
消化管ガス駆除薬
ジメチコン(ジメチルポリシロキサン) 商品名:ガスコン、ガスサール
新生児:6mg/日、1/2年:24 mg/日、1年:30mg/日、3年:40mg/日、7 1/2年60mg/日、12年:80mg/日
腸管運動抑制薬
アトロピン硫酸塩水和物 商品名:硫酸アトロピン
新生児:0.1mg/日、1/2年:0.3mg/日、1年:0.4mg/日、3年:0.5mg/日、7 1/2年0.8mg/日、12年:1mg/日
禁忌:緑内障、前立腺肥大、麻痺性イレウス
ロートエキス
新生児:3mg/日、1/2年:6 mg/日、1年:7mg/日、3年:10mg/日、7 1/2年15mg/日、12年:20mg/日
禁忌:緑内障、前立腺肥大、重篤な心疾患、麻痺性イレウス
ロペラミド 商品名:ロペミン
0.02−0.04 mg/kg/日
禁忌:低出生体重児、新生児および6か月未満の乳児、出血性大腸炎、偽膜性大腸炎
原則禁忌:6か月以上2歳未満の乳幼児、感染性下痢患者
原因毎の治療
腸炎後症候群
・本邦での乳児の遷延性下痢のうち、最も頻度の高疾患。病態としては、二次性乳頭不耐症や食物蛋白誘発性胃腸症が関与していると考えられる。
・消化管感染による小腸粘膜の損傷で消化管粘膜防御機構が破綻し、牛乳蛋白などの特定の食物抗原に対するアレルギー反応で、絨毛萎縮など小腸粘膜に形態学的変化を生じる。その結果ラクトースなどの二糖類の吸収不全が生じ、腸管内で高浸透圧性溶質となって浸透圧性下痢を惹起する。
・さらに消化管の蠕動運動亢進、栄養障害、腸管内糖質による細菌増殖、免疫低下といった因子が絡み合い、悪循環に陥って治療抵抗性となり下痢がさらに遷延する。
・原因の可能性のある乳糖を含む乳製品の除去や、脂質制限、乳糖分解酵素や膵酵素の補充、整腸薬の投与などが有効な場合がある。
食物蛋白誘発胃腸症(消化管アレルギー)
・抗原となる食物の摂取を中止することが治療の基本。
・障害された粘膜上皮細胞が再生する3-5日間は腸管安静を保ち、粘膜全体が再構築する2-3週間は光原性の強いタンパク質の摂取を避ける。
・長期的には、適切な時期に食物経口負荷試験を行い、必要最小限の食物除去に努める。
炎症や免疫異常による下痢
・ステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤が有効な場合があるが、個々の症例による。また診断も確実に行っていかなければならない。


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