【小児科医blog】過敏性腸症候群 (Irritable bowel syndrome : IBS) について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog】過敏性腸症候群 (Irritable bowel syndrome : IBS) について

心身症
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今回は、小児の心身症(心理・社会因子の大きく関与した身体の病気)の一種であり、腹痛や腹部不快感が数ヶ月の単位で継続する疾患、過敏性腸症候群(IBS)についてをまとめていきます。

IBSの特徴

・機能的疾患であり、排便の状況で症状が変化することが特徴です。検査では消化器症状の原因となる器質的疾患を認めない、機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders : FGIDs)の代表的疾患の一つです。

・ストレスとの関係も深いです。テスト前や部活の大会前などにお腹の調子が悪くなる方、もしかしたらIBSだったのかもしれません。

IBSの原因

・基本的には原因不明です。しかし、自律神経を介した腸と脳の神経経路の異常、腸脳相関があると言われています。

・これは、ストレスがかかると、下垂体でストレス関連ホルモンを産生し、それが腸管神経系に作用することが原因です。

・IBSは心理的要因, 腸脳相関による粘膜透過性の亢進や微小炎症、腸内細菌叢、遺伝要因など多因子が関連して引き起こされる、内臓知覚過敏と消化管運動障害と考えられています。

IBSの診断基準

・診断基準は、2016年に提唱されたRome Ⅳによる国際的診断基準があります。

・腹痛の1ヶ月での頻度、排便での変化、便秘治療で改善があるか、また「そのほかの疾患が否定されているか」などの基準があります …(詳細は下記画像参照)。少なくとも2ヶ月以上基準を満たしている必要があります。

・結構大雑把な基準でありますが、必ず「他の疾患の否定が必要」であり、安易な診断は行わないことが推奨されています。

警告症状・徴候

・下記のような症状を認める場合、炎症性腸疾患や難治性下痢症などの器質的疾患が隠れていることがあり、必ず問診での確認が必要です。

<警告症状・徴候>

 ・家族歴(炎症性腸疾患、胃・十二指腸潰瘍)

 ・持続する右上・下腹部痛

 ・繰り返す嘔吐

 ・嚥下障害、嚥下時痛

 ・吐血、下痢

 ・夜間の下痢

 ・関節痛

 ・肛門病変(痔瘻、肛門周囲膿瘍)

 ・体重減少、成長障害

 ・思春期遅発

 ・不明熱

 ・就寝中に覚醒するほどの痛み

スクリーニング項目

・IBSを疑う場合、下記のような検査をスクリーニングとして行います。

血液検査

・血算、血液像、赤沈、生化学(Na, K, Cl, Ca, P, UN, Cr, TP, Alb, AST, ALT, ALP, LDH, Fe, CRPなど), 便潜血検査, 便細菌培養検査, 便中カルプロテクチン(IBSと炎症性腸疾患:IBDを鑑別するのに有用。非侵襲的であり、内視鏡検査と併用で効果的)。

・腹部Xp検査:便塊貯留の程度を評価

・腹部US検査:腸管壁の肥厚や血流増加の有無を評価。併せて、膀胱に尿が貯留した状態で直腸径を測定し、便秘の程度評価の参考とする。

・消化管内視鏡検査:侵襲的な検査なので、警告症状がある場合や、上記のスクリーニング検査で異常がある場合に行う。肉眼的に正常粘膜であっても、病理検査で診断がつく場合(好酸球性消化管疾患)があるので、正常粘膜であっても粘膜生検を必ず依頼する。

IBSの分類

・次は、IBSのサブタイプ分類についてです。

・便通は一定せず、臍部を中心とする腹痛が生じるタイプはRAP型。便秘症状の強い便秘型。起床後すぐに下痢の生じ、排便でも症状が軽快しない下痢型、おならや腹鳴、腹部膨満感などガス症状に対する恐怖や不安を訴えるガス型などの分類があります。

・便秘型や下痢型に関しては、一般の便秘・下痢治療と同一で問題ありません。

分類毎の薬物治療

・RAP型に関しては、セレキノン(トリメプチンマレイン酸塩), ポリカルボフィルカルシウム(ポリフル®️、コロネル®︎)、抗コリン薬(ブスコパン®️)などが有効です。

・セレキノンやポリフルに整腸剤を組み合わせて使用します。

・腹痛に対しては、抗コリン薬であるブチルコスポラミン臭化物を必要に応じて使用します。

 

便秘・下痢混合型

トリメプチンマレイン酸塩 (セレキノン):腸管運動調整薬

 セレキノン錠 100mg/T

 用量:成人300mg/日、7~11歳 200~300mg/日 分2-3、12歳〜 300~600mg/日 分2-3

 

腸管運動調整薬:モサプリドクエン酸(ガスモチン), 5-HT₄受容体作動薬

 用量:7.5-15 mg/日, 分3 (0.3mg/kg/日)

・腹痛や腹部膨満感に対して使用。交感神経活性状態では消化管運動を亢進され、副交感神経活性化状態では消化管運動を抑制させるため、便秘型・下痢型IBSの両方に有用である。

・ガスモチンは5-HT₄受容体を刺激することで、消化管運動を改善させるため、便秘型IBSに使用できる。しかし、保険適用上は慢性胃炎のみである。

 

ポリカルボフィルカルシウム(ポリフル, コロネル):高分子重合体

 用量:1.5-3g/日, 分3

・下痢型、便秘型ともに有効な高分子重合体。

・ポリフルは非溶解性、高吸水性ポリマーであり、腸管内で水分を吸収し、膨潤・ゲル化することで便の水分バランスを調整して、便性状を正常化する。よって、下痢、便秘型ともに有用である。

・2026年1月現在、供給停止中…。

 

臭化ブチルコスポラミン (ブスコパン):鎮痙薬

 7.5歳:5mg頓用、12歳:10mg頓用

 

下痢型

ラモセトロン塩酸塩(イリボー):セロトニン5-HT3受容体拮抗薬

  用量:男性5~10μg/日, 女性2.5~5μg/日 

・下痢型IBSに有用。

・セロトニン5-HT₃受容体を選択的に阻害し、腹痛、腹部の不快感、便意切迫、便通回数、下痢を改善する。便性改善と腹痛の両方に効果がある。

ロペラミド塩酸塩(ロペミン):下痢薬

 用量:0.02~0.04 mg/kg/日 分2~3

 成人用量:1~2 mg/日、または1mgを下痢時頓用

腹痛治療薬

トリメブチンマレイン酸塩(セレキノン):オピアト作動薬

 用量: 7.5歳 150mg/日 分3、12歳 200mg/日 分3

 成人用量:300~600 mg/日

ブチルスコポラミン臭化物(ブスコパン):抗コリン薬

 用量:7.5歳 5mg/回、12歳 10mg/回 腹痛時頓用

 成人用量:10mg/回 腹痛時頓用

メペンゾラート臭化物(トランコロン):抗コリン薬

 用量:7.5歳 22.5 mg/日 分3、12歳 30mg/日 分3

 成人用量:45 mg/日

便秘型

リラクロチド(リンゼス):グアニル酸シクラーゼ受容体拮抗薬

 用量:0.25~0.5 mg/日 分1、食前内服

・便秘型IBSに有用。

・粘膜上皮機能変容薬であるリナクロチドは、グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体に作用し、腸管内の水分分泌が増加し、便の柔軟化や腸管内輸送が促され、便秘を改善させる。

・さらにリナクロチドには、cGMPが粘膜下の求心性知覚神経を抑制することにより内臓知覚過敏を抑制、改善させる作用もある。よって便秘型IBSの腹痛と便性改善の両方に効果がある。

酸化マグネシウム(マグミット)

 用量:0.05g/kg/日, 分1-3  (2g/日, 分3)

・一般的な便秘型に使用する。

 

腸管運動調整薬:モサプリドクエン酸(ガスモチン), 5-HT₄受容体作動薬

 用量:7.5-15 mg/日, 分3 (0.3mg/kg/日)

・腹痛や腹部膨満感に対して使用。交感神経活性状態では消化管運動を亢進され、副交感神経活性化状態では消化管運動を抑制させるため、便秘型・下痢型IBSの両方に有用である。

・ガスモチンは5-HT₄受容体を刺激することで、消化管運動を改善させるため、便秘型IBSに使用できる。しかし、保険適用上は慢性胃炎のみである。

 

その他の薬物療法

上記の分類毎の治療の他、下記のような薬物療法も有効です。

整腸剤

ビオフェルミン、ラックビー、ミヤBM、ビオスリー

 用量:添付文章参照

・プロバイオティクスの作用機序が提唱されており、本邦のガイドラインでもIBSに対する使用推奨がある。しかし、小児IBSにおいては特定の菌腫や量、投与期間に関して確率されたものはない。

IBSの非薬物治療

・IBSの原因の項で述べた通り、IBSの病因は多岐にわたりますが、自律神経を介した脳と消化管の双方向性のシグナル伝達経路(脳腸相関)の異常が根幹となる病態であり、心理的社会的ストレスにより症状が悪化し、そのことでさらにストレスを感じ症状が増悪する…といった負の連鎖に陥っている場合が多いです。

・そのため、症状に対する不安をまず取り除くための声がけ・明確でわかりやすい説明を患者に行うことこそが、IBSの治療で最も重要なことです。

・そのほか、サブタイプに応じた生活習慣の改善による治療があります。

RAP型・下痢型

・乳製品や冷たいもの、カフェイン、高脂肪食など腸管運動を更新させる食品を控える。

便秘型

・便が固くならないように、水分摂取をすすめる。

ガス型

・ガスの貯留しやすい野菜(玉ねぎ、芋類など)、炭酸飲料、ガム、果物などを控える。

以上です。お疲れ様でした。

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