総論
・漢方医学治療は、陽証という「攻撃的治療」と陰証という「保護的治療」に分けられます。
陽証
・瀉法(気血水の溜まりを出す)
・清熱作用(冷やす)
・燥火作用(乾燥させる)
陰証
・補法(気血水を補充)
・温補作用(温める)
・滋潤作用(潤す・栄養を与える)
投与量
・小児用量の明確な基準はありません。成人では3包/日の場合も多いですが、必ずしも3包/日というわけではないです。
・成人で1日投与量が3包/日の場合、小児では以下のような投与量となります。
乳児(体重10kg未満)
0.5包/日
幼児(体重10-20kg)
1-1.5包/日
学童(体重20-30kg)
2包/日
学童〜成人(体重30kg〜)
2-3包/日
体重計算
・より細かく体重で計算する場合、簡易的な計算法として以下の量で投与します。
投与量:0.1-0.2 g/kg/日
・甘麦大棗湯など心の問題に使用する場合は0.3-0.4g/kg日と少し多めに使用することもある。
副作用
・色々認められるが、偽アルドステロン症、間質性肺炎、肝機能障害、皮疹、上部消化管症状などがある。
・問診で副作用の有無を確認し、3ヶ月以上継続内服した場合は血液検査を行う。
服薬指導
・食前内服が基本だが、飲み忘れた場合食後でも良い。
・また生活リズムに合わせて内服のタイミングも変えて良い。たとえば夜なきや不眠症には就寝前、腹痛時や頭痛時には頓服を行うことも可能。
・正式な服用方法としては、微温湯に溶解して、経口(もしくは経管)から投与します。
・香りに含まれる揮発成分にも有効性があるとされています。
乳児の場合
・少量の微温湯に溶いて頬粘膜に塗って授乳させる方法もあります。
オブラートを用いる場合
・薬を包んで常温の水に2-3分浸して、ゼリー状に溶けたらすぐに服用
苦くて飲めない場合
・舌の味蕾細胞に対してバリア作用のあるココア、乳脂肪に混ぜると飲ませやすい。ココアの他にも、チョコアイス、ヨーグルト、ホットミルクなどが有効。
・ある程度子供も大きくなってくれば、錠剤や丸薬もあるので製剤変更も可能。
心身症に対して
・東洋医学では、「心身一如」という考え方があり、体を心は繋がっているという前提で問診や治療を行います。
・メリットとして、①漢方薬は使用に年齢制限がない、②一般小児科医にとって、睡眠薬や向精神薬より処方しやすい…..などがあります。
・西洋薬との併用も可能であり、必要に応じて使用することで効果が得られることもあります。
腹部診察を元にした処方
・心身症においては、特に腹直筋攣急、胸脇苦満、臍上季の3つが精神的な緊張や不眠を示すポイント。
腹直筋攣急
・腹直筋の過度の緊張を認める所見。
・お腹の緊張を示し、小建中湯や桂枝加芍薬湯を使用。
胸脇苦満
・肋骨弓下を押して違和感や圧痛を認める所見
・精神的なストレスを示し、小柴胡湯、四逆散、大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)を使用する
臍上季
・臍の左上に腹部大動脈の拍動を触れる所見
・精神的興奮や不眠を示し、柴胡加竜骨牡蛎湯や抑肝散を使用する。
心身症(体の問題)への処方
夜なき:甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
・小麦と棗(なつめ)からできている。
・就寝前の30分〜1時間前に内服する。就寝前のみでは起きてしまう場合、夕食前と就寝前の2回/日の内服とする。
・小麦アレルギーには注意が必要
夜驚症・遊行症:柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
・就寝前に内服すると1-2週間で効果が出てくる。
・改善がない場合、甘麦大棗湯と合わせて処方してもよい。
爪かみ:抑肝散加陳皮半夏(よくかんさかちんぴはんげ)
・特にストレスによる爪かみに有効
心因性頻尿・夜尿症:柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
・夜尿症の場合は、水分摂取量を抑えるために朝食前に内服する。
チック:抑肝散(よくかんさん)
・初期のチックに有効
・慢性化したものには効果は薄い
反復性臍痛症:小建中湯(しょうけんちゅうとう)
・飲みやすく、乳幼児期の腹痛に有効。
・食欲も増えて元気になる。
・便秘があればマルツエキスと一緒に内服してもよい。
アトピー性皮膚炎:黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)
・黄耆には肌を丈夫にする作用がある
・感冒を繰り返す場合にも有効
片頭痛:柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
・頭痛以外に機能性腹痛症にも効果的
・効果発現まで2-3週間で頭痛の頻度が減る
過敏性腸症候群:桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
・小建中湯から膠飴(こうい)を抜いたもの
・学童期の腹痛によく使用する。
・便秘がメインであれば桂枝加芍薬大黄湯
気管支喘息:柴朴湯(さいぼくとう)
・非発作時に内服する
・心因性咳嗽や慢性咳嗽にも効果がある。
起立性調節障害:半夏百朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
・立ちくらみやめまい、頭痛、胃腸虚弱がある場合に使用する
・夏場に不調をきたすことが多いので、梅雨時期から飲み始めておくとよい
不登校:甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
・登校への不安を和らげることができる。
・長期化した不登校は漢方薬のみでは難しい。生活リズムを整える必要あり
不眠症:柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
・精神的な緊張があり考え事でねむれない場合、夢を見て中途覚醒がある場合に有効
・眠れないときのみ、頓服での使用も可能
心身症(こころの問題)への処方
・心の問題には、イライラ、不安感、緊張感に分けて考える。
・複数の問題が重なっている時は、より多い感情をメインに考える。
イライラ感
①抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
・イライラの第一選択
・年齢を問わず幅広く使える
・小児は胃腸が弱い経口にあるので使いやすい
②加味逍遙散(かみしょうようさん)
・中学生以降の月経前症候群や、不定愁訴が多く訴えが変わりやすい時に有効
③大柴胡巨大黄湯(だいさいこきょだいおうとう)+甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
・自閉スペクトラム症などの発達障害に伴う癇癪・パニックなどに使用
④黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
・上気の大柴胡巨大黄湯(だいさいこきょだいおうとう)に比べてより強い癇癪・パニックに使用
不安感
①甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
・不安感の第一選択薬
・分離不安、登園しぶり、進級時の不安、不登校に使用
・あまくて飲みやすい
②加味帰脾湯(かみきひとう)
・中学生以降で心配性なこどもに使用
・不眠時にも使用できる
③桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)+四物湯(しもつとう)
・フラッシュバックやPTSD(心的外傷後ストレス障害)に有効
・改善しても急にやめず、徐々に減薬すると良い
緊張感
①柴胡加竜骨牡蛎湯
・緊張感がある場合の第一選択。
・年齢を問わず幅広く使える
・動悸や不眠にも有効
②四逆散
・手足の冷えがあり、季肋部の苦満感を訴える時に使用
上気道感染症:麻黄湯
・インフルエンザやRSウイルスに対して有効。
服薬方法
・初回内服時2倍量、2回目以降は解熱するまで2-3時間ごとに
解熱効果
・構成生薬の麻黄、桂枝に解熱効果あり
下気道感染症
・清肺湯:湿性咳嗽の原因となっている喀痰の排出を促進する
・麦門冬湯:乾性咳嗽によくみられる気道過敏性の亢進を抑制
肛門周囲膿瘍
急性期:排膿散及湯0.2g/kg/day 分2 7-14日間
慢性期(発赤・腫脹落ち着いた時):十全大補湯0.3g/kg/day 分2 1-2ヶ月
再発時:排膿散及湯に切り替え、落ちついたら十全大補湯に戻す。再発無く1ヶ月経過すれば終了
上部消化管の機能低下(GERDなど)
・六君子湯:グレリン受容体に作用し、食欲亢進作用を示す。
下部消化管の機能低下(イレウスなど)
・大建中湯を使用する:腸管運動促進作用、腸管血流増加作用がある
痛み(筋緊張亢進)に対して
・芍薬甘草湯を使用する
・中枢作用として、下行性疼痛抑制系の活性化(ノルアドレナリン神経系)
・末梢作用として、骨格筋・平滑筋の弛緩作用(心筋には作用しない)、細胞外液が高カリウム状態で有効
・頓服で即効性あり(約5分)


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