総論
・抗がん薬として使用される、L-アスパラギナーゼ(L-ASP)であるが、急性膵炎、凝固異常、高中性脂肪血症など様々な有害事象を引き起こす。
・今回は、有害事象の総論、対応についてをまとめる。
急性膵炎
・膵炎については、以前のまとめも↓
発症好発時期
・寛解導入時に多い傾向があるが、いつでも発症する可能性がある。
・使用開始1ヶ月間は、特に注意が必要。
症状
・L-ASP投与中は、膵炎の可能性があるため、腹痛、悪心嘔吐、背部痛などに注意する。
・不機嫌、不活発、食欲不振、腹部膨満感、下痢、発熱、意識障害、意識消失、全身倦怠感など非特異的な症状もあるので注意。
・重症例では、循環・呼吸不全、肝不全、腎不全、敗血症、多臓器不全へと進行し、致死的経過をとることがある。
・膵炎が発症した場合、以降はコース中L-ASPの投与を中止する。
発症リスク因子(薬剤)
・L-ASPによる急性膵炎は、以下の薬剤により発症リスクが増大する。
シクロホスファミド
シタラビン
ピラルビシン
メルカプトプリン
検査
・血中リパーゼ(検査できなければ血中アミラーゼ、膵型アミラーゼ)測定を行う
・超音波検査で、膵腫大、膵周囲の炎症性変化の確認を行う。不明瞭な場合は造影CT検査を行う
治療
・乳酸リンゲルなど細胞外液で十分な補液を行う。十分にモニタリングを行い、血圧と尿量を維持できるように管理をする。血圧と尿量が確保できたら、急速輸液を終了し輸液速度を調節する。
・重症度判定は繰り返し行う。診断から24‐48時間以内は特に注意。
・疼痛コントロール
・重症の場合、発症後72時間以内に広域スペクトラムの抗菌薬予防投与
・腸蠕動がなくても、診断後48時間以内に経空腸栄養を少量からでも開始する。
凝固障害
総論
・L-ASPはアンチトロンビン(AT: antithrombin)やフィブリノゲンといった凝固関連蛋白を低下させる
・結果、中枢神経系や中心静脈カテーテル関連の静脈血栓症が発生することがある。
・AT活性を定期的に測定し、70%以下の場合、AT製剤の補充を考慮する
・血栓症を発症した症例では、以後L-ASPを投与する際には低分子ヘパリンの予防投与も考慮。
・AT欠損症、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症などの先天性血栓性素因がある場合、血栓症発症リスクが高い。そのため、40歳未満での若年性血栓症の家族歴がある場合、治療前にAT活性、プロテインC活性、遊離型プロテインSを測定しておく。
血栓症
・中枢神経の血栓症は主に脳静脈洞に生じ、静脈性脳梗塞を伴うことがある。10歳以上で発症率が高い。症状は頭痛、けいれん、嘔吐、麻痺など。
・脳静脈洞血栓症の診断には頭部MRI/MRAが有効。症候性の場合、L-ASPを中断し、低分子ヘパリンによる抗凝固療法を行う。
治療(AT製剤含め)
・1単位/kg投与すると、ATは1%上昇する。
・現在、低フィブリノゲン血症に対してFFP補充の意義はないと考えられている。
過敏反応
・L-ASPは大腸菌由来の異種タンパク質であり、アナフィラキシーを含めたアレルギー反応を起こすことがある。
・本剤の投与時は、静脈路を確保し、投与後に経過観察を行う。
・アナフィラキシーを起こした患者では、L-ASPなしのプロトコールに変更する。
・点滴静注よりも、筋注の法が即時型症状が出現しにくいと言われている。
・軽度の即時型症状の場合、抗ヒスタミン薬を選考投与した上でL-ASPを継続しても良い。
高中性脂肪血症
・定期的に中性脂肪(TG)を測定し、重度の場合はプロトコールの規定に従いL-ASP投与法を変更する。
・必要に応じて、絶食やフィブラート系薬剤で対応する。
高アンモニア血症
・症候性でなければ経過観察。症候性の場合はL-グルタミン酸L-アルギニン(アルギメーㇳ)を投与する。
肝機能障害
・高ビリルビン血症を伴う脂肪性肝炎をきたすことがある。
・プロトコールの規定に従いL-ASPを中断sるう。
その他
・耐糖能異常をきたす場合もあり。




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