総論
・Hyperleukocytosisは、末梢血の白血球数が10万/μLを超えたデータの異常を示し、それによる症状を呈した場合をLeukostasisとよび緊急対応を要する。
・主な症状として呼吸不全、中枢神経症状をきたす。
・急性骨髄性白血病(AML)や慢性骨髄性白血病(CML)のblast crisisでしばしば発症する。
病態
・変形能の低下した白血病細胞増加による血液粘度上昇、種々のサイトカインによる血管内皮障害、血管内皮への白血病細胞の接着によって組織の虚血性障害をきたし、呼吸障害や中枢神経障害を起こすと推定されている。
症状
・以下の症状が認められる。
肺症状
・呼吸不全
・SpO2低下
中枢神経症状
・視力障害(眼底検査で網膜出血認めることあり)
・頭痛
・めまい
・耳鳴り
・歩行障害
・傾眠
・錯乱
・昏睡
※白血球数減少後1週間は、脳血流の再灌流により頭蓋内出血のリスクが高まる。
その他
・心電図変化(心筋梗塞、右室負荷)
・腎不全の悪化
・持続勃起症
・四肢の虚血
・腸管梗塞
検査所見
・偽性血小板増加:芽球の破砕成分が血小板と誤ってカウントされることあり
・偽性高カリウム血症:採血管内での凝結の過程で、芽球からKが放出されることによる。ヘパリン化した血漿で測定して対応する
・播種性血管内凝固症候群(DIC)
・腫瘍崩壊症候群(TLS)
治療
緊急対応
・TLSとDICの対応と並行して、急いで寛解導入療法を開始する。ALLや非ホジキンリンパ腫(NHL)ではステロイドの先行投与、AMLではエトポシドの開始または少量シタラビン(1-3mg/kg/回、IV or 30 min DIV, 1日1回)を考慮する
・すぐに寛解導入療法を実施できない状況、かつLeukostasisの症状がない場合、ヒドロキシウレアによる治療(50-100 mg/kg/日、12時間ごとに分けて経口投与)も考慮するが、効果の発言は24-48時間以内となる。
・すぐに寛解導入療法を開始できない、かつLeukostasisの症状がある緊急時は、ヒドロキシウレアの投与と同時に交換輸血や白血球除去療法を考慮する。白血球数は、乳児白血病:50万/μL以上、ALL:30万/μL、AML:10万/μL以上を治療開始の目安とする。ただし、急性前骨髄性白血病では、少量化学療法や白血球除去療法は致命的な出血リスクがあるとの報告があり、推奨されていない。
輸血
・赤血球輸血は、血液粘度を上昇させるため、ヘモグロビン値が7-8g/dL以上で状態が安定していれば避ける。輸血が必要な場合、WBCが低下するまで待つか、少量をゆっくり投与する。
・血小板輸血は、血小板数が2-3万/μL以上となるように積極的に行う。
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