Intro
新生児で心雑音を聴取される場合、必ずしも、『心雑音=心臓病』というわけではありません。
しかし、心雑音が心疾患を発見するきっかけになることも当然あり、見逃すことのできない所見であります。
ところがある問題が….。
新生児の心雑音の聴取は成人・学童期の小児に比べて難しいのです。
新生児の心雑音聴取はなぜ難しいのか?
・新生児の心雑音を聴取するのが難しい理由は以下の点があります。
心拍数が早いため
・新生児では心拍数が非常に早く、収縮期と拡張期の判別が困難です。そのため収縮期雑音・拡張期雑音の聴取も難しくなります。
・特に拡張期雑音は明瞭に聞こえることは少なく、聴こえれば病的な心雑音の可能性が高いです。
聴診器の問題
・保育器に収容されている新生児では、心臓聴診用の聴診器が用意されていることは少ないでしょう。
・また、NICUではアラームの音、赤ちゃんの鳴き声がこだましているため、周囲の雑音も多いです。
心雑音が聴取される新生児心疾患
それでは、実際に心雑音が聴取される心疾患についてまとめます。
動脈管開存
未熟児動脈管開存
・出生直後は肺血管抵抗が高く、肺に血液は流れにくいです。そのため雑音も聞こえにくいです。
・しかし1-2日経過してくると、肺血管抵抗が小さくなり肺にも血液が流れてくるようになり、雑音が聴取されてきます。
・基本的には大動脈から肺動脈に血液が流れます。動脈管が大きく肺高血圧がある場合には、拡張期の血流速度は遅くなるため収縮期雑音として聴取されます。
・動脈管が狭くなり肺高血圧が軽くなると、連続性雑音となります。
・生後1-2週で突然心雑音が聴取される場合は、動脈管の再開存が疑われます。
動脈管依存性心疾患
・肺動脈閉鎖を伴う心疾患でプロスタグランジン(PG)製剤を投与している場合、生後数日で連続性雑音が聴取されます。
・SpO2低下とともに心雑音が小さくなる場合には、動脈管の狭小化が疑われます。
・逆に、左心低形成症候群、大動脈縮搾、大動脈弓離断など、体循環が動脈管に依存する疾患では、動脈管の血流速度は遅いため、動脈管由来の連続性雑音は聴取されません。
心室中隔欠損
・新生児早期に心不全症状は中々でてきませんが、頻度も比較的高く重要な疾患です。
・前胸部下部に最強点をもつことが多いですが、肺動脈弁下のVSDでは前胸部上部に最強点を持ちます。
・動脈管と同様に、肺血管抵抗が低下する生後数日で収縮期雑音が出現します。
・高調音の場合は小さい短絡のことが多く、低調音のほうが大きな短絡の場合が多いです。
肺動脈弁狭窄
・単独で起こる場合と、他の心疾患(単心室、大血管転位、両大血管右室起始など)に合併して起こることもあります。
・単独の場合は重症なほど収縮機雑音が大きいです。
・しかし他疾患合併では、肺動脈弁を通過する血液が減少して、逆に雑音は小さくなります。
心雑音を聴取する場所・最強点
・心雑音がどこで聞こえるかで、心疾患の推定もできます。
・成人に比べると心臓が小さいため、心雑音の場所で疾患を推定することは難しいです。
前胸部上部
・動脈管開存
→胸骨左縁第二肋間を最強点として聞こえる。
・肺動脈狭窄(ファロー四徴症、VSD肺動脈弁下型)
→背部に響く心雑音として聞こえることもある。生後1週以後、左肺動脈が相対的に細くなるため、生理的なPSによる小さな心雑音として聴取されることがある(機能性心雑音)。この心雑音は生後6ヶ月ごろには消失する。
・大動脈弁狭窄(胸骨の右の方が強い)
・肺動脈分岐部狭窄
前胸部下部
・VSD
→欠損孔の位置によって、胸骨左縁第2-4肋間で聞こえる
心雑音の出現する時期
・心雑音は原因により心雑音の出現する時期(タイミング)が異なります。
・出生直後から聴取されれば半月弁(大動脈弁・肺動脈弁)の狭窄か房室弁(僧帽弁・三尖弁)の逆流で、このうちTRは小さな音だが汎収縮期雑音として、時々、一過性に聴取される。
・出生後時間が経ってから聞こえ始めるのは短絡血流(VSD/PDA)を考える。
・出生直後は胎児期の名残で肺血管はまだ生理的にも収縮して肺高血圧状態が残っている。左心系と右心系が等圧になっているため、短絡があっても血液が流れず心雑音も聞こえないが、時間が経って肺血管が拡張するとともに右心系の圧が低下して、短絡血流が増えて心雑音が聞こえるようになる。
出生〜1日
・肺動脈弁狭窄(PS)
・ファロー四徴症
・大動脈弁狭窄(AS)
・僧帽弁逆流(MR)
生後1日ごろ
・心室中隔欠損VSD(小〜中短絡)
生後2-3日ごろ
・心室中隔欠損VSD(大短絡)
・未熟児動脈管開存症PDA
音調
・VSDは心室腔が広いので粗い低調性(ゴーゴー)、PDAは細い管なので高調性(ザーザー・シャンシャン)の心雑音として聞こえる。
・心奇形がなくても機能的な心雑音を聴取することがあるが、その時には柔らかい音として聞こえる。
・PSのような狭窄があれば、心筋の収縮に応じて漸増・漸減する駆出性の心雑音として聴取される。
・TRのような弁の逆流やVSDではⅠ音と同時に始まりⅡ音までほぼ一定の音量の汎収縮期雑音として聴取される。弁の逆流ではVSDのように荒く大きな音にはならない。
最後に
聴診は何回も繰り返してできるようになると信じて毎日聞き続けています。
難しいなあ…。


コメント