総論
・先天性股関節脱臼(developmental dysplasia of the hip : DDH)は、新生児および乳児期の股関節検診をはじめとして、小児科医および整形外科医の診察・診断機会の多い疾患である。
・身体所見のみでは脱臼を見逃すこともあり、診断に悩む症例も多い。
・単純X線検査も簡便ではあるが、被爆の問題、また新生児および乳児期の股関節構成成分である軟骨と軟部組織の描出能には超音波検査が優れている。
超音波検査
・3ヶ月未満の新生児、乳児には7.5MHz、それ以上では5MHzのエコーを使用する。
・プローべはリニアもしくはアニュラアレイプローブを使用。
・軟骨組織がかろうじて無エコーになるように、ゲインを調節する。
エコー画像上の所見
・乳児の股関節を構成する組織は、エコーの反射に関する性質上、以下の3つに分類される。
①強エコー:骨組織
②中等度エコー:筋膜や関節包などの軟部組織
③無エコー:硝子軟骨や関節液
強エコー
・腸骨外壁、下端
・坐骨
・恥骨
・大腿骨骨端核、大腿骨頸部
中等度エコー
・骨膜、軟骨膜、筋膜
・関節包
・円靱帯
・関節唇
・筋組織
無エコー
・大転子軟骨部
・軟骨性臼蓋
・関節液など
検査方法
・エコー検査による股関節脱臼の診断には、股関節側方からの走査(Grafの診断法)、もしくは前方からの走査(前方法)が用いられる。
・今回はGrafの診断法についてポイントを確認する。
モニター画面
・単純X線像と同様に、画面上方が頭側にプローべの向きを合わせる。
・Graf法では画像を反時計まわりに90度回転させる。
検査方法
・左側臥位のして右股関節から観察。反対も同様に、右側臥位にして左股関節を観察。
・母指と中指で大転子を挟むようにし、そこにプローブを乳児の体軸に平行かつ床に垂直になるようにあてる。
・プローブは両手で扱う。
・股関節は無理に伸展させずに、自然な屈曲位とする。
基準となる断層像
・腸骨外壁がプローブと平行で(画面に垂直)で、腸骨下端・関節唇が描出されている像で評価する。この3つのポイントが描出されていない場合、Grafの基準では診断は不可能。
・腸骨下端(白く描出される)を探す。腸骨外壁が左側に傾いていれば、寛骨臼の腹側を走査しているので、プローブを垂直に保ったまま背側に回転させる。さらにプローべを腹背側方向に何度もゆっくり水平移動させて腸骨外壁が垂直となる像を探す。腸骨外壁が右側に傾いている時は逆の走査を行う。
Grafの分類
Ⅰ(正常)
Ⅰa:正常股関節
Ⅰb:正常股関節(移行型)
Ⅱ
Ⅱa:骨性臼蓋の骨化の遷延(生後3ヶ月未満)
骨化の遷延が生理的範囲内の場合はⅡa+, そうでない場合Ⅱa-
Ⅱb:骨性臼蓋の骨化の遷延(生後3ヶ月以降)
Ⅱc:脱臼危険状態
D
・骨頭が求心性を失った状態(臼蓋の形成不全はⅢ・Ⅳ型に比べて軽度)
Ⅲ(脱臼)
・臼蓋軟骨は骨頭の内上方に存在する。
Ⅲa:臼蓋軟骨に組織変化を生じていない(臼蓋軟骨部にエコーが出現しない)
Ⅲb;臼蓋軟骨に組織変化を生じている(臼蓋軟骨部にエコーが出現する)
Ⅳ(高位脱臼)
・臼蓋軟骨は骨頭の下内包に存在する


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