【小児科blog:神経, 新生児】神経管閉鎖不全(二分脊椎, 脊髄髄膜瘤)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科blog:神経, 新生児】神経管閉鎖不全(二分脊椎, 脊髄髄膜瘤)について

新生児

神経管閉鎖不全とは?

・胎生3-8週の神経管形成時期に脊椎や脊髄の形成が障害されることにより生じる病態。

・脊椎の構成要素である椎弓や椎体の形成不全により、脊椎管が開放した状態を二分脊椎という。

・二分脊椎の状態で症状が出現している、または症状が出現する危険のある状態を二分脊椎症という。

・二分脊椎を介して脊髄や髄膜などの脊柱管内の構造物が脊柱管外に脱出したり、脂肪組織や皮膚などの脊柱管外の構造物が脊椎管内に迷入し脊髄を牽引することにより、様々な症状を生じる。

顕性二分脊椎

・代表的な疾患は、腰背部に皮膚欠損を有し脊髄や髄膜が露出している脊髄髄膜瘤である。このように外観から二分脊椎が明らかな病態を顕性二分脊椎という。

潜性性二分脊椎

・これに対して外観だけでは診断な困難な症例を潜在二分脊椎という。潜在二分脊椎の中には脊髄脂肪腫や先天性皮膚洞があり、腰背部正中に皮下腫瘤や血管腫などの皮膚異常を伴うことが多い。

・出生時におしりから腰にかけての異常なふくらみやくぼみ、色素異常(母斑)、毛髪により発見される場合が多い。

・神経症状は、生後すぐには認めないが、次第に下肢運動障害、感覚障害、下肢変形、下肢の長さ・太さの左右差、下肢の痛み、膀胱直腸障害(尿が出づらい、ひどい便秘など)が認められる

発症リスクを減らすために

・神経管形成には母体の葉酸不足が関与していると言われている。

・葉酸を適切に補うことで、開放性の神経管閉鎖障害の発生が7割減少することが報告されている。

・平成12年、厚生労働省から神経管閉鎖障害の発症リスク低減のために、「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」という通知が出ている。妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間、食品からの葉酸摂取に加えて、栄養補助食品から1日0.4mgの葉酸を摂取した場合、効果が期待される。

・しかし、葉酸摂取量は1日あたり1mgを超えるべきではないことを必ず情報提供し、過度の不安を与えないことを周知する必要がある。

・また葉酸不足だけが原因ではないこと、潜在性二分脊椎の発症率を低下させる効果はないことも伝えておく必要性がある。

症状

・二分脊椎症の症状には、神経管の形成不全や脊髄の圧迫による二次的な神経症状がある。

・また神経管閉鎖不全では脊髄周囲の皮膚、皮下組織の形成不全も生じるために高率に腰背部の皮膚異常を伴う。

・障害された脊髄の髄節高位より下部の一次的な神経脱落症状と脊髄係留に伴う二次的な神経症状が生じる。

・下肢は、障害された脊髄の髄節高位に応じて、変形、運動感覚機能障害が生じる。

・どの髄節高位の病変でも仙髄の機能は障害される。そのため排尿排便機能障害はほぼ必発。

・また、随伴する水頭症がある場合、進行性の頭位拡大、大泉門の膨隆、落陽現象、嘔吐、キアリ奇形の症状として嚥下障害(哺乳不良)や呼吸障害(吸気時喘鳴)、後弓反張などが見られる。

・また二分脊椎の周囲では、皮下腫瘤や皮膚陥凹、皮膚突起、血管腫や多毛などの皮膚異常を効率に伴う。

・係留された脊髄高位では、脊髄や神経根の症状として疼痛や下肢の変形、運動障害、知覚異常、排尿排便障害が生じる。

診断のための検査

・二分脊椎の診断には、脊髄MRIが必須。

・新生児期は脊椎の椎弓の骨化が未熟なため、超音波検査の方がMRIよりも情報量が多いこともある。特に『月齢3ヶ月以下』であれば、超音波検査により脊椎管内病変と脊椎管外の病変が十分に評価可能である。

・しかし、椎弓の骨化に伴い脊椎菅内の評価が困難になるため、『4ヶ月以降ではMRIが第一選択』となる。

・超音波検査では、合併する脳室拡大や腎泌尿器系の評価、先天性心疾患の評価も可能である。

おしりの割れ目の中に凹みがある赤ちゃんは放置しても良い?

・実臨床では、お尻の割れ目の近くに腰仙部皮膚陥凹(dimple)を認められて二分脊椎を疑うケースが多いです。ときに潜在性二分脊椎が認められるため検査をするかどうか悩ましい所見です。

・これに対する保護者への説明として、小児神経学会がHPでQ &Aを載せています。

Q40:おしりの割れ目の中に凹みがある赤ちゃんは放置しても良いですか? - 一般社団法人 日本小児神経学会
前の質問 Q&Aトップ 次の質問 Q40:おしりの割れ目の中に凹みがある赤ちゃんは放置しても良いですか? 臀裂(おしりの割れ目)の中で尾骨の上にある皮膚の陥凹は、仙尾骨部皮膚陥凹(sacrococcygeal

臀裂(おしりの割れ目)の中で尾骨の上にある皮膚の陥凹は、仙尾骨部皮膚陥凹(sacrococcygeal dimple)または仙骨部皮膚陥凹(sacral dimple)と呼ばれるものです。この皮膚異常は、健常新生児の約3%に見られるという報告があるため、臨床的な意義は乏しく、画像検査を必要としないと言われています。しかし、仙骨部皮膚陥凹に脊髄終糸の脂肪腫を伴う場合があり、脊髄終糸脂肪腫が脊髄繋留症候群の原因となる場合が報告されています。このため、画像検査は不必要であると断言することはできず、臨床の現場では意見の分かれるところです。子どもを診療する脳神経外科医や小児神経科医に経過を診てもらうのが良いと思います。

2022年12月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

・dimpleのあるお子さん全てにMRI検査をすべきではないのは確かですが、どこに検査のラインを設定するのか、難しいところですね……。

MRI検査を行うかどうかの基準

腰仙部の皮膚陥凹(dimple)に占める潜在性二分脊椎の割合みると、simple dimpleの場合潜在性二分脊椎は認められません。しかしdimpleに加えて随伴症状を伴う場合は二分脊椎の可能性があるため、精査を要します。

simple dimple

・midline 正中にある

・大きさと深さが5mm以下

・肛門上2.5cm以下

上記の条件を満たす場合は、二分脊椎のリスクは限りなくゼロに近いsimple dimpleといえます。

二分脊椎を疑う随伴症状

・脂肪腫(subcutaneous mass):皮下に腫瘤あり

・体毛の密生(hairy patch)

・血管腫(hemangioma)

・皮膚の突起(skin tag)

・皮膚の欠損(cutis aplasia)

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