【小児科医blog:神経】小児の片頭痛について | ゆるっと小児科医ブログ
PR

【小児科医blog:神経】小児の片頭痛について

神経

「お母さん、頭が痛い……」

子どもからそう言われたとき、「仮病かな?」「ただの風邪?」と迷った経験はありませんか?

実は、大人だけでなく子どもも「片頭痛」を発症します。

大人の片頭痛とは少し違う特徴があるため、周囲が気づきにくいことも少なくありません。

今回は、小児科医の視点から「子どもの片頭痛」について、原因から治療法まで詳しく解説します。

Intro

・脳血管の拡張により三叉神経が刺激され、痛みが生じると言われている。

・頭痛が「月に15日以上」、「3ヶ月」を超えて起こり、「少なくとも月に8日以上」の頭痛は片頭痛の特徴を持つものは慢性片頭痛という。

・小児の頭痛で最も有病率が高いのは緊張型頭痛ですが,緊張型頭痛は比較的軽症のことが多いため医療機関を受診することは少ないです。ついで頻度の多いのが片頭痛です。日常生活に支障を起こすことも多く,医療機関を受診する頭痛としては最多です。

診断基準

・片頭痛を一言で表すならば,「数時間〜数日続くズキンズキンとする頭痛」です。合併症状として,嘔気嘔吐,光・音・匂いへの過敏性がある

・前兆がある(14-30%)、前兆がない(70-86%)頭痛かどうかで診断基準が異なる。

 ※国際頭痛分類第3版参照

前兆のない片頭痛

A.  B~Dを満たす発作が5回以上ある

B. 頭痛発作の持続時間は4~72時間

C. 頭痛は以下の4つの特徴を少なくとも2項目満たす

 1. 片側性

 2. 拍動性

 3. 中等度〜重度の頭痛

 4. 日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する、あるいは日常的な動作を避ける

D. 頭痛発作中に少なくとも以下を1項目満たす

 1. 悪心または嘔吐

 2. 光過敏かつ音過敏

E. ほかに最適なICHD-3の診断がない

前兆のある片頭痛

A.  B~Cを満たす発作が2回以上ある

B. 以下の完全可逆性前兆症状が1つ以上ある

 1. 視覚症状(90%以上あり、閃輝暗点)

 2. 感覚症状(唇、顔、舌、指にしびれや疼痛、チクチク感、感覚鈍麻)

 3. 言語症状(言葉が出にくくなる失語)

 4. 運動症状(脱力)

 5. 脳幹症状(呂律が回らない構音障害、回転性めまい、耳鳴り、難聴、複視、運動失調、意識障害)

 6. 網膜症状(視野障害)

C. 以下の4つの特徴を少なくとも2項目満たす

 1. 少なくとも1つの前兆症状は5分以上かけて徐々に進展するか、または2つ以上の前兆が引き続き生じる

 2. それぞれの前兆症状は片惻性である

 3. 少なくとも一つの前兆は片側性である

 4. 前兆に伴って、あるいは前兆発現後60分以内に頭痛が発現する

D. ほかに最適なICHD-3の診断がない。また、一過性脳虚血発作が除外されている

小児の特徴(成人との違い)

持続時間が短い

・成人では4〜72時間ですが,小児では成人よりも持続時間が短く,2〜72時間でも

・以前の分類では1時間でも良いとされており,厳密に2時間ないから片頭痛ではない,というわけではない。

・ただし,2時間未満の場合は,他疾患の鑑別を厳密に行う。

嘔吐が多い

・頭痛ではなく嘔吐を主体とする周期性嘔吐症や,腹痛を主体とする腹部片頭痛は,片頭痛に関連する疾患とされていますが、これらは小児特有の疾患でもあります。

両側性であることが多い

・小学校低学年までの児では、痛みの部位を正確に表現できていない可能性もあります。

・ちなみに、小児における後頭部痛は稀であり、二次性頭痛の可能性を慎重に検討します。

頻度

・有病率は、中学生で4.8%、高校生で15%いるという報告もある

・青年期の0.8%は慢性片頭痛の訴えがあるとの報告例もあり

「子どもが片頭痛なんて」と驚かれるかもしれませんが、決して珍しい病気ではありません。

 有病率:小学生の約3.5%、中学生になると約5%,高校生の約15.6%が片頭痛を持っていると言われています。(Brain Dev 2017 ; 39 : 791 ,臨床神経2005 ; 45 : 717)

 発症年齢:早い子では幼児期から症状が出始めます。

 男女比:小学生までは男女差はほとんどありませんが、思春期以降は女性ホルモンの影響もあり、女の子の割合が男の子の2〜3倍に増えます。

経過

・片頭痛では予定と前兆を認めることがある。予定と前兆は言葉が似ているが,正直時期と症状が明確に異なる。

・片頭痛の前兆症状として閃輝暗点;ふとしたときに突然視野の中にギザギザ・キラキラとした光の波ができ、次第に広がって暗くなり見えなくなるという現象。

・閃輝暗点が消えたと思えば頭痛が発症してくる

●片頭痛の経過

①予兆期;頭痛の数時間〜数日前。あくび,気分変動,興奮,光過敏,集中困難など。

②前兆期;頭痛の5〜60分前に出現。

<視覚症状>閃輝暗点やさまざまな暗点。

<感覚症状>身体や顔面,舌などの異常感覚(チクチクした感じなど)

<言語症状>失語など

<運動症状>運動麻痺(脱力)

<脳幹症状>構音障害,回転性めまい,耳鳴り,難聴,運動失調,意識レベル低下

<網膜症状>片目の視覚症状

※片麻痺性片頭痛,脳幹性片全長を伴う片頭痛,網膜片頭痛では,脳血管障害との鑑別が特に重要であり,積極的に画像検査を行う。

③頭痛期;2〜72時間持続

④回復期

治療

・片頭痛の治療は、急性期治療(発作時治療)と予防治療に分けられます。

急性期(発作時)治療

鎮痛薬

・頭痛時の頓服として鎮痛薬の使用から開始していくのが本邦では標準的。しかし、重症度に応じて次に述べる他治療を優先させるという治療法もある。

・今回は代表的な鎮静薬を記載する。

アセトアミノフェン(カロナールなど)

 用量:10-15mg/kg/回、4-6時間ごと

 ※最大60mg/kg/日(1500mg)

イブプロフェン(ブルフェンなど)

 用量:5-10mg/kg/回、4−8時間ごと

 ※最大600mg/日

・添付文章上の適応年齢は5歳以上

・システマティックレビューでも有効性が示されており(Headache 2016 ; 56: 49)、ガイドラインでも安全性や有効性の観点から小児片頭痛の第一選択と位置付けられている。

保険適用外

点鼻:スマトリプタン(イミグラン)

・上記の鎮静薬は頭痛に限らず疼痛全般に効果を持つが、トリプタン製剤は片頭痛に特化した薬剤である。

・基本的に、トリプタン製剤は成人のみの適応。

 点鼻:スマトリプタン点鼻(イミグラン)

  用量:20mg (効果不十分なら2時間以上あけて追加投与可能)

※最大40mg/日

内服:リザトリプタン(マクサルト)

  用量:40kg未満 5mg、40kg以上 10mg

・副作用として多いのは、頭痛や倦怠感。胸や喉のつかえ感・圧迫感という独特な症状(トリプタン感覚)が引き起こされることもある。

⚠️脳血管疾患(もやもや病など)には禁忌であり、投与前の画像検査が必要である。

薬物乱用頭痛

・鎮痛薬を使う際は、薬物乱用頭痛に要注意。

・鎮痛薬を月に10日以上使い続けるとなりやすい。一定の痛みを超える頭痛には早めに鎮痛薬を使っても良いが、軽い頭痛には鎮痛薬を可能な範囲で避ける指導が必要。

予防薬

・急性期治療の使用頻度が多い(薬剤乱用頭痛の目安となる、月10日以上の使用は頻度が多いとされるでしょう)場合は、予防薬の使用も検討する。

・十分な小児へのエビデンスはないものの、以下の薬剤の有用性がある。

・重症な経過でなければ、ビタミンB2(リボフラビン)やロメリジン(ミグシス)といった副作用の少ない薬剤から開始し、効果が乏しい場合にアミトリプチンやプラプラノロール、バルプロ酸などを選択する。

アミトリプチン(トリプタノール)

 初期量:0.25 mg/kg/日、分1眠前 ※最大10mg

増量:〜1mg/kg/日 の範囲内で増量し維持量とする(外来で最初は1-2週おきに調整)

 ※最大60mg、1.5mg/kgだが、少ない量で維持できるなら、その方が良い。

副作用:口渇、便秘、尿閉、めまい

・適応疾患はうつ病などであるが、片頭痛に対する有効性エビデンスの集積もあり。

シプロヘプタジン(ペリアクチン)

 初期量:0.1mg/kg/日、分1眠前 ※最大4mg

 増量:〜0.2mg/kg/日、分2 ※最大8mg

・長年使用されている薬剤だが、眠気やふらつきの副作用頻度が多いことに注意。特に学童では勉強やスポーツなどの支障をきたすこともあるので使いにくい薬剤。

塩酸ロメリジン(ミグシス)

 初期量:10mg/日(思春期以降)、分2

 増量:20mg/日、分2

・他の片頭痛予防薬と比べると、副作用が少ないのは使いやすいポイント。しかし、起立性調節障害を合併している場合は、症状を増悪させることがあるので注意。

プロプラノロール(インデラル)

 初期量:0.5〜1mg/kg(20-30mg)、分3

 維持量:1〜2mg/kg(30〜60mg)、分3

・βブロッカー。頻脈性不整脈にも使用する

・気管支喘息には禁忌。

・副作用は低血圧、めまい、徐脈。

ビタミンB2(リボフラビン)

初期量:10-40mg、分2〜3

・適応はビタミンB2欠乏症であり、片頭痛には適応なし。

・重篤な副作用がない点は使用しやすい。

バルプロ酸(デパケン)

初期量:10mg/kg/日、分2-3 から開始。

維持量:血中濃度20‐50μg/mL (最大500mg/日)

・抗てんかん薬であるが、片頭痛にも有用。

・副作用として、肝機能障害や血球減少、重症薬疹など多様であり要注意。また、食欲亢進も結構ある。

・血中濃度のチェックが必須なので、他の薬剤よりも使用しにくい。てんかん合併患者には有用である。

・思春期以降の女性にも、催奇形性があるのでNG

非薬物療法

・早寝早起き・朝ごはんの規則正しい生活が基本

・症状がない時は適度に運動をする。

・電子メディア(スマホやゲームをやりすぎない)

・片頭痛の誘因があればなるべく避ける。一般的に、ストレス、疲労、チョコレートやチーズ、空腹、眩しい光などが誘因となる。ただし、過度な生活制限はストレスとなって負の効果をもたらすので、適度な回避が重要。

・十分な睡眠をとる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました
google.com, pub-9029171507170633, DIRECT, f08c47fec0942fa0