総論
・脳室周囲白質軟化症(PVL: periventricular leukomalacia)は、未熟児の低酸素性虚血性脳症(HIE)でみられる白質障害の代表的一型です。
HIEについては以前のブログ記事参照です↓
概念
①早産児の脳室周囲白質部に生じる虚血性病変のことで、側脳室三角部から後角の上部および外側部の脳室周囲白質に好発する
②脳血管とグリア形成の未熟成を素因として、脳低灌流が加わるとPVLが生じると考えられる
③障害発生後3時間より虚血性凝固壊死が生じる。その組織反応として3時間〜1日でミクログリアが活性化され、2日より壊死巣の周囲に軸索変性が生じ、3-5日より脂肪顆粒細胞が出現、ついで反応性アストログリアや血管新生が明瞭に出現する。空洞形成は13-14日にみられるとの報告がある。
④在胎27-28週ごろに発症頻度のピークがあり、脳性麻痺の約1/3がPVLによるとされている
リスク因子
早産児
・PVLの発症のピークは在胎24-32週であり、出生体重1500g未満の極低出生体重児に多いです。
多胎
・単胎児に比べて約2−3倍の頻度でみられます。
・双胎間輸血症候群もリスクです
出生前因子
・子宮内発育遅延(IUGR)
・胎児仮死
・前置胎盤およびvaginal bleeding
・前期破水
・子宮内感染症
出生時因子
・新生児仮死
・胎児母体間輸血症候群
・胎児胎盤間輸血症候群
出生後因子
・徐脈を伴う重症無呼吸発作
・動脈管開存(PDA)による脳血流の減少(stealing)
・敗血症性ショック
・過換気による低CO2血症(特に生後24時間以内のpCO2<25mmHg)
・気胸、過度のPEEPによる静脈還流低下
所見・症状
・錐体路の通る部位に壊死や嚢胞形成・脳の容量低下が生じると、脳性麻痺となります。
・画像検査上、脳の一部に信号異常があったとしても、脳実質の壊死を生じていなければ症状を来さない場合もあります。
診断
・画像検査によって主に診断されます。
頭部超音波検査
①発症後3日以内
・脳室周囲高エコー域(PVE):脳室周囲白質、特に三角部周囲に脈絡叢と同等あるいはそれ以上の輝度を示す所見あり
②1〜3週経過
・cystic PVL:PVEの中心部あたりが嚢胞を形成する。その多くは多発性である。
PVLの診断基準(超音波学的診断)
脳室周囲高エコー域(PVE: periventricular echo densities)
PVE1度
・脳室周囲の高エコー域が脈絡叢よりも輝度の低いもの
PVE2度
・側脳室三角部白質に限局して脈絡叢と同等のエコー輝度を認めるもの。
※PVEの2度が2週間以上、持続して認められるものを持続性(prolonged)PVE2度と呼ぶ
PVE3度
・同部位に脈絡叢よりも強いエコー輝度を認めるか、脈絡叢と同等のエコー輝度であるが三角部白質を超えて広がりをもつもの
PVE4度
・脳室周囲の白質を主体に、径3mm以上の嚢胞を示すもの
MRI検査
・最も信頼性がある検査。通常、退院前と、必要に応じて修正1〜1歳半に評価する。
①初期変化(修正6ヶ月以内)
・脳室周囲白質に嚢胞
・脳室の拡大と脳室壁の不整
・髄鞘形成の遅延
②後期変化(修正1歳以降)
・脳室周囲(特に三角部周囲の)白質量の明らかな減少
・三角部優位の脳室拡大と側脳室外側壁の不整な輪郭
・T2強調像で脳室周囲(三角部側方から体部側方にかけて)高信号域
MRI画像検査での病変パターン
・病変のパターンは、大きく2つに分けられ、①嚢胞性PVL、②非嚢胞性PVL に分類されます。
嚢胞性PVL(cystic PVL)
・大きな限局性壊死の集族による嚢胞形成と周囲のびまん性グリオーシスを認める。
・慢性期(髄鞘化が完成した時期)のPVL[end-stage PVL]では、MRI検査で側脳室に接するT2強調像での高信号域を示します。
・予定日前後(修正満期頃)では、出血性変化のある場合、T1強調像で高信号、T2強調像で低信号
非嚢胞性PVL(noncystic PVL)
・小さな(1-2mm)の限局性壊死を生じますが、嚢胞形成には至らず病変部には主にグリア性瘢痕を認めます。
・MRI検査では、点状白質病変(PWML: punctate white matter lesion)と呼ばれる、脳の容量低下を伴わない所見を呈する場合があります。この所見は臨床的には軽症で、予後に影響は少ないとされます。
鑑別疾患
・PVLには以下のような鑑別疾患が挙げられる。
嚢胞性PVLの鑑別
・connatal cystや上衣下嚢胞があります。
connatal cyst(CC)
・通常病的意義はない。
上衣下嚢胞(SC: subependymal cyst)
・先天性、あるいは上衣下出血や感染の結果生じる。
側脳室三角部に異常信号を示す場合
・髄鞘化の最後まで残る、terminal zoneが画像検査上の鑑別となる。
・PVLでは脳室壁に接する信号値の異常だが、terminal zoneは脳室壁とT2強調像で高信号域の間に髄鞘化した白質が確認できる。
・またPVLは白質容量減少を示唆する所見(脳室の変形・拡大や脳梁の菲薄化)を伴うことが多い。
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