病因
・10歳以下における発症頻度は10万人あたり3人程度と多くない。
・主な原因として、70%程度はBell麻痺、7%がRamsay-Hunt症候群、5%が外傷性、3%が中耳炎性、2%が腫瘍性との報告がある。そして10%ほどが先天性の麻痺である。
・成人との違いとしては、先天性があること、またBell麻痺の割合が多いことだろう。
発症機序
・原因として最多を占めるBell麻痺のうち、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV: vericella-zoster virus)が病因と捉えられる無疹性帯状疱疹(zoster sine herpete)が一定の割合を占め、加えて成人よりは頻度が少ないもののRamsay-Hunt症候群(RHS)が先天性麻痺に次ぐことから、膝神経節におけるVZVの再活性化が腫瘍な原因と推察される。
・小児特有の先天性顔面麻痺では、分娩時外傷性麻痺や子宮内体位性麻痺など機械的圧迫が原因で生じる顔面麻痺は、一般に自然回復が多いとされる。
・また、側頭骨内顔面神経管の部分的欠損、とりわけ鼓室部における顔面神経の自然露出も多いことから、重症の中耳炎や中耳真珠腫では顔面神経麻痺を生じることがある。
・腫瘍性麻痺の原因腫瘍としては、脳幹神経膠腫や側頭骨内神経鞘腫、横紋筋肉腫、白血病などが挙げられる。
分類
末梢性
・顔面表情筋の運動麻痺
・顔面神経には鼓索神経や涙腺の分泌腺が含まれるため、味覚障害、涙の分泌障害合併も注意
・三叉神経支配もあるので顔面の知覚麻痺=顔面神経麻痺ではない
・中耳炎、頭部外傷でも中耳・乳突洞内を走行する顔面神経が影響を受け生じるうる
中枢性
・腫瘍や占拠性病変などもあり得る
症状
・中枢性麻痺以外では顔面表情運動全体が低下する。
・上顔面筋は両側支配である。一側の核上性麻痺では額にしわを寄せたり、眉を上げたり、眼を閉じたりすることには障害は起こらない。
・末梢性麻痺では前頭筋、眼輪筋を含むすべての表情筋が同じように麻痺する。
・麻痺が高度になれば、眼瞼を完全に閉じることができなくなり(兎眼)、眼瞼を強く閉じようとすると、上転した眼球の強膜が白くみえる(ベル徴候)。
・下顔面筋は一側支配。核上麻痺に比べ、末梢性麻痺は左右差などの顕著な症状を示す。麻痺側では鼻唇溝が浅くなる。口角は健側に引かれる。
・末梢性の麻痺を認める場合は、舌前2/3の味覚障害、唾液分泌の低下、聴覚過敏、涙分泌の減少をともなっているかを確認する。
スコアリング
・小児顔面神経麻痺の予後は一般に成人よりも良好とされ、無治療での経過観察を推奨する考え方もある。しかし、後遺症なしを治療目標とするのであれば、何らかの治療介入は必要である。
・治療効果判定基準としては、以下の2つが主に用いられる。
柳原法(満点40点)
・36点以上で後遺症がない、あっても軽微
House-Brackman評価法
・Grade Ⅰ〜Ⅵに分ける。
検査
・電気生理学的検査、画像検査が中心となる。
誘発筋電図:ENoG (Electroneurography:エレクトロニューロノグラフィー)
・記録電極を両鼻側外側に置き、外耳孔前下方下顎骨後縁上で顔面神経を電気刺激する。得られた筋活動電位(M波)の振幅を健側と比較して評価する。
・左右のM波の振幅比を健側を100%として表し、この値をENoGとする。
・ENoG 値は健側、患側とも同様に測定し、複合筋活動電位(CMAP)の振幅を(患側CMAP の振幅)/(健側CMAP の振幅)×100(%)で調べる。
・予後予測に有用。小児Bell 麻痺症例(15歳以下)においてはENoG 値20%以上あれば2カ月以内に全例治癒,10~19%で3カ月以内に全例治癒,1~9%でも8カ月以内に全例治癒,0%の症例は治癒率50%であった.
ウイルス検査
・VZV,HSV(IgM,IgG)
RHSをBell麻痺と鑑別することができる。
正確な診断には、初診時の採血と2週間隔を空けたペア血清採取が推奨されている。
(+CMV-IgG/M, Mumps-IgG/M, Mycoplasma-IgM, EBVCAIgM,EBNA-IgG)
MRI検査
・同側の難聴の存在は中枢性麻痺や腫瘍性麻痺を疑う根拠になる。
・側頭骨腫瘍や中枢病変を疑う場合、MRI検査が必要となる。
・また、Bell麻痺やRHSや外傷による顔面神経麻痺の急性期にはGd-DTPAにより顔面神経が造影されることが知られている。これは炎症性変化が顔面神経管内に及んでいるためである。造影効果は末梢神経・血液関門の破綻、または神経周囲の血管透過性の亢進による細胞外液の増加を示唆している。
治療
外傷性の治療
・外傷性の場合は早急に骨性顔面神経管を外科的に開放して浮腫に陥っている顔面神経を減圧する必要がある。
Bell麻痺の治療
・Bell麻痺については、以下のような治療を行う。ステロイド単独orステロイド+アシクロビルの併用が一般的である。予後は良好で自然治癒率は70%ほどであるが、麻痺を残さないためにはWaller変性が来る前の早期に治療を開始する必要性がある。
・小児のBell麻痺は再発あるいは反復することがあり、再発症例では治癒率が低下する。
PSL:ステロイド
・Bell麻痺において、狭い顔面神経管の中での炎症による浮腫は神経を圧迫するとともに血管も圧迫して虚血を生じる。障害が強いと神経繊維のWaller変性が起こり、変性が及んだ繊維が多いと麻痺の回復が悪くなる。治療にはステロイドを使用し、顔面神経管の浮腫を改善させる。
・用量:1〜1.5mg/kg/day (軽症では0.5〜1mg/kg、重症では3〜4mg/kg)でスタートして漸減
ACV :アシクロビル
・div 15mg/kg/d q8hr (希釈は1vial 250mgあたり100ml以上) 投与時間1hr、7days (状態次第で経口への変更可)
バラシクロビル(バルトレックス)
・用量:75mg/kg/day(max1000mg/day)でも可
ATP:アデホス
・血流改善目的に使用する。内服薬でOK
・用量:3mg/kg/day 内服
ビタミンB12
・点滴にビタメジン1V混注
・内服ならVit-B12(メチコバール) 成人:500μg錠×3回 小児の設定なし


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