低ナトリウム血症の対応
①血液検査で血清Naを測定
・低Na血症の定義は、血清Na値 135 mEq/L以下の状態です。
・また以下のように重症度分類がされます。
軽度:130-135mEq/L
中等度:125-129mEq/L
重度:125 mEq/L未満
②症候性か無症候性かを判断
・通常ナトリウム濃度の治療は緩徐に行いますが、症候性であれば迅速に行う必要があります。
・症候性とは、ナトリウムの濃度異常により患者に何らかの症状が出現している状態です。低ナトリウム血症では、脳浮腫による重篤な中枢神経症状(けいれんや昏睡)を認めている時は、症候性として迅速に対応します。
・子供の脳は成人と比較して頭蓋骨に比して脳の占める体積が大きいので、低ナトリウムになりやすいとも言われています。
③急性or慢性経過か確認する
・発症から48時間以内の場合は急性低ナトリウム血症、48時間以降では慢性低ナトリウム血症と定義される。
急性の場合
・1日あたり10 mEq/L以内でナトリウム補正をする
慢性の場合
・1日6-8mEq/L以内で補正する。
※通常、急性の低ナトリウム血症では血清Na濃度が125mEq/L以下になると症状が出現することが多い。そのため、125以下で無症状の場合は慢性の経過の可能性が高い。そのため、急性か慢性か判断が難しい(いつからの経過か不明)ケースでは、ナトリウム値と症状を合わせて評価する。
浸透圧性脱髄症候群
・慢性経過の低ナトリウムを急速に補正すると浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination)
を発症する可能性があるので注意。
・急激にナトリウム濃度を変化させると、浸透圧/張度の変化により、水が細胞内から細胞外に移行して、脳の細胞内脱水が起こることで発症する。
・以前は脳の橋を中心に変化を認めたため、橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinosys)と呼ばれていたが、橋以外の部位にも生じるため名称が変わった。
・中枢神経症状が遅れて出現し、典型的には急速に補正を行った2-6日後に症状出現する。
・中枢神経症状は弛緩性麻痺、構音障害、見当識障害、嚥下障害、行動障害、けいれん、無気力、不穏などさまざまである。症状の多くは不可逆性。
治療
症候性の場合
・3% NaClを迅速に投与する。1mL/kg投与すると、血清Na値は1mEq/L上昇する。
・治療目標として、血清Na値が4-6 mEq/L上昇すると症状消失することが多い・
・投与方法:3% NaCl 4-6mL/kgを1-2時間かけて投与する。
・あくまで、脳浮腫を改善させて中枢神経症状を止めることが目的であり、症状消失した時点で3% NaClは速やかに終了する。
無症候性の場合
・症状がない場合は急がない。緩徐に治療を行う。
・また、低ナトリウムの原因の一つである自由水の再吸収を防ぐためには、ADHの過剰分泌を抑える必要がある。感染症などのストレス下ではADHの分泌が亢進しているので、原疾患の治療を行うことでADHの過剰分泌が改善する可能性がある。
・そのため、無症状で軽度の低ナトリウム血症では、まず原疾患の治療はうまくいっているのかにも注意する。
水制限
・患者に投与する水(自由水)を制限する治療。
・水の制限で困るのが栄養不足になることであり、水制限中は低血糖に注意する。
・そのため、水制限中の意識障害では低血糖を念頭において診察する。
検査
・中等度、重度の低ナトリウム血症では、まずは尿検査を提出する。
・血液検査によって、その時の血清ナトリウム値はわかるが、今後どのように変化するのか、つまりナトリウムは上昇してくるのか、低下してくるのかはわからない。
・尿検査では、その今後の動きを予測することができる。
尿中(Na+K)>血清Na
・自由水排泄障害があり、低ナトリウム血症は悪化している。
尿中(Na+K)<血清Na
・自由水は排泄されており、低ナトリウム血症は改善している。
低Na血症を合併した重症脱水で注意すべき点
・重症のナトリウム量の異常を等張掖で是正すると、ADHの分泌量が急激に低下するため、結果とし低ナトリウム血症が改善する。
・ADHの作用は腎尿細管で自由水の再吸収を促す。重症脱水ではADHの分泌が亢進しており、自由水の再吸収が増加して尿量が低下するため、低ナトリウム血症が進行しやすい。
・ナトリウム量の異常を大量に是正したときは、ADHの分泌が急激に抑制され、低ナトリウム血症が急激に補正される可能性がある。そのため、是正輸液後に一度血液検査で低ナトリウム血症が改善したか確認する必要がある。
3% NaCl の作り方
・3%NaClという輸液製剤は存在していない。そのため、自分で作成する必要がある。
・具体的な作り方は下記
10kg未満の小児
生理食塩水(0.9% NaCl) 40mL + 10% NaCl 12mL
10kg以上の小児
生理食塩水(0,9% NaCl) 400mL + 10% NaCl 120mL
3% NaClを用いる理由
・3%NaClのナトリウム濃度は513 mEq/Lであり、高張食塩水と呼ばれている(生理食塩水の濃度は154 mEq/Lくらい)
・低Na血症で症候性の場合、Naの補正が必要ですが、それなら3%でなくても4%tとか、5%ではダメなのか?とも考えてしまします。しかし、3%NaClはメリットがあります。それは投与後のナトリウム値の変化が、ある程度予測がつくということです。
・3% NaCl 1mL/kgを投与すると、血清Na値は1 mEq/L上昇します。これは以下の根拠からです。
①人間の水分量を50%とすると、体重1kgあたり水分は0.5L
②3% NaClは513 mEq/L≒0.5 mEq/mL
③3% NaCLを1mL/kg投与すると、体重1kgあたりナトリウムを0.5 mEq/L投与される。
④体重1kgあたりの水分量は0.5Lのため、0.5 mEq/L/0.5L=1 mEq/L ナトリウムが上昇する。
・しかし、この予測は尿や下痢などの他の体液によるナトリウム濃度の影響を考慮されていないことを覚えておく必要があります。
生食で補正する場合
生理食塩水(154mEq/L)で補正する場合、以下のようにNa欠乏量を計算し、補正します。
①Na欠乏量(mEq)≒(目標血漿Na濃度-現在の血漿Na濃度)×体重×0.6
↓
②上記を生食(154mEq/L)で24時間で補正する場合、Na欠乏量÷154×1000÷24=◯ mL/hr
これで、1時間あたりに必要な流量を計算することができる。
脱塩現象
・Naが多いはずの等張液を投与していても、低ナトリウム血症を発生する場合があります。
・その原因は脱塩現象(desalination phenomenon)かもしれません。
・等張液投与後に濃縮尿が排泄されると、まるで投与した等張液からナトリウムだけが抜けて(脱塩)、自由水のみ体内に蓄積されるような状態となります。これが脱塩現象です。
・その結果、体内に自由水が蓄積されて低ナトリウム血症が進行します。濃縮尿が産生される機序はADHの過剰分泌であり、脱塩現象はADHの分泌が亢進した状態とも言える。


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