こんにちは!小児科医りんごです🍎
日差しが強くなってくると、毎日の紫外線対策が欠かせませんね。我が家の2歳の娘も外遊びが大好きなので、お出かけ前はバタバタと日焼け止めを塗るのが日課です。
そんな忙しいパパ・ママの強い味方が「日焼け止めスプレー(UVスプレー)」。シュッと一吹きで広範囲をカバーできるので、とても便利ですよね。
しかし、この便利なスプレーが、使い方を一歩間違えると「化学性肺炎」という重篤な呼吸器症状を引き起こす可能性があることをご存知でしょうか?
今回は、日本小児科学会から報告された実際の事例をもとに、日焼け止めスプレーに潜むリスクと、子どもたちを守るための安全な使い方について分かりやすく解説します!
実際に起きたスプレーによる「化学性肺炎」の事例
日本小児科学会のこどもの生活環境改善委員会から、非常に重要な「傷害速報(No.149)」が報告されています。
半閉鎖空間で日焼け止めスプレーを使用したことで、お子さんが化学性肺炎を引き起こしてしまった事例です 。
年齢: 11歳9か月の女の子
発生場所: 自室の子ども部屋(換気不十分)
状況: ロフトベッドの下の工作スペースで、液体のりに日焼け止めスプレーを噴霧して遊んでいた 。液体のりにスプレーをかけると表面が固まって透明なフィルムができることに気づき、10分ほど様々な物にスプレーを吹きつけていた 。
その後、女の子はどうなったのでしょうか。
リビングに移動した直後に呼吸困難が出現し、顔面蒼白になっているところをお父さんが発見して救急搬送されました 。 病院到着時は一旦落ち着いていたものの、胸のレントゲン写真では肺に「すりガラス状」の陰影が認められました 。その後、再び呼吸困難が悪化し、一時は血液中の酸素飽和度(SpO2)が87%まで低下してしまい、酸素投与と入院治療が必要な状態に陥ってしまったのです 。

幸いなことに、吸入や呼吸器リハビリテーションなどの適切な治療により症状は徐々に改善し、60時間後に無事退院することができました 。暴露から6か月時点では無症状で、後遺症も認めていません 。
なぜスプレーで「肺炎」になるの?
「ただの日焼け止めで、どうしてそこまでひどい肺炎になるの?」と驚かれるかもしれません。 その原因は、スプレーの噴射剤として含まれている「炭化水素(LPGや水添ポリイソブテンなど)」にあります 。

これらの成分は「揮発性が高く、粘度が低い(サラサラして気発しやすい)」という特徴を持っています 。そのため、換気の悪い場所で大量に吸い込んでしまうと、以下のようなダメージを肺に与えてしまいます 。
- 気管支の表面(上皮)を傷つける
- 肺をスムーズに膨らませるための物質(サーファクタント)を破壊する
- 細かい油の粒子となって、肺の奥深くまで入り込んでしまう
化学性肺炎の初期症状としては、曝露直後から数時間で、咳、喘鳴(ゼーゼーする呼吸)、呼吸困難などが現れます 。重症化すると肺水腫や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)といった命に関わる状態に進展するリスクもあるため、決して軽視できません 。
子どもを守る!日焼け止めスプレーの「安全な使い方」4カ条
こうした事故を知ると「もうスプレーを使うのはやめようかな…」と不安になってしまうかもしれません。しかし、製品自体が悪いわけではなく、「正しく使えば安全かつ効果的な製品」です 。
日本小児科学会の委員会は、安全な使用のために以下の提言を行っています 。大切な子どもたちを守るため、以下のポイントをぜひ今日から実践してください!
① 必ず「屋外」か「換気の良い場所」で使う!
閉鎖空間(車の中や狭い洗面所、テントの中など)での使用は絶対に避けましょう 。
② 顔には「直接スプレーしない」!
顔に塗る時は、一度大人の手にスプレーを出してから、手で優しく塗布してください 。
③ スプレーは「短時間」で「必要最小限」に!
シューーーーッと長く吹きかけ続けるのはNGです 。
④ 子どもの「おもちゃ」にさせない!
子どもは好奇心旺盛です。今回の事例のように、予想外の遊び方をしてしまうことがあります。スプレーで遊ばないよう、大人がしっかり監督し、手の届かない場所で保管しましょう 。
【もしもの時は…】
もし使用後に呼吸が苦しそうだったり、激しい咳や胸の痛みを訴えたりした場合は、様子を見ずに直ちに医療機関を受診してください 。
おわりに
子育て中は、次から次へと予想外の出来事が起きてハッとさせられることばかりですよね。「もっと気を付けていれば…」と自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、一番大切なのは「知る」ことです。危険性をあらかじめ知っていれば、事故は未然に防ぐことができます。便利なアイテムは上手に、そして安全に活用しながら、これからの季節を子どもたちと一緒に元気に乗り切っていきましょう!
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