West症候群について | ゆるっと小児科医ブログ
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West症候群について

神経

疫学

・発症頻度は2,000-4,000人に1人、有病率は子供1万人あたり1.5-2人、男児がやや多い

・発症年齢は生後3-12ヶ月。2歳を超えて発症するのは稀。

原因

・結節性硬化症、先天的な大脳皮質異形成、脳室周囲白質軟化症などの周産期異常、Down症候群などの染色体異常、ARX遺伝子やCDKL5遺伝子異常などの遺伝子異常、先天性代謝異常症、TORCH症候群、後天的な脳出血や髄膜炎・脳炎などが原因となる。この場合、症候性という。

・基礎疾患がなく、画像検査が正常で、発症前の発達が正常である場合、潜因性と言う。

・症候性が80%、潜因性が20%

症状

・一瞬、四肢が屈曲または伸展し、座位保持では頭部が前屈するてんかん性スパズムと呼ばれる発作が特徴的である。発作直後にしばしば啼泣を伴う。

・「びくっとする」と表現されることが多いが、ミオクロニー発作ほど速い動きではなく、典型的には1秒ぐらい力むように力が入る。

・スパズムが約5-10秒ごとで繰り返すことをシリーズ形成とよび、1つのシリーズは数分間持続する。

・スパズムは覚醒中(特に覚醒直後)にみられることが多い。

・スパズムの発症とともに、精神運動発達の遅滞・退行がみられるが、発症早期には発達の停滞・退行は明らかでない場合もある。

・死亡率は10-20%、発達予後は約10%の症例のみ正常である。

脳波

・発作間欠期では、広汎性に不規則で同期の悪い徐波や多焦点性の棘波が持続する所見がみられ、非プスアリスミア(hypsarrhythmia)とよばれる。

・睡眠中はこの所見は数秒ごとの群発になることが多い。

・てんかん放電が連続的でなかったり分布が偏っていたり同期性が強いなど非典型的な要素をもった脳波所見をmodified hypsarrhytumiaと呼ぶこともある。

・発作時脳波では、陰性や陽性の鋭波、低振幅速波、広汎性徐波などが複合して認められる。

・スパズムがシリーズでみられる間はヒプスアリスミアは消失することが多い。

・よって、2-4時間の長時間脳波で、睡眠・覚醒の両方が記録できるとよい。

MRI画像

・乳幼児期は髄鞘化が未完成で微細な皮質異形成がわかりにくいことがあるため、発症時に頭部MRIで異常がみられなくても 1−2歳で再検査することが重要である。

・薄いスライスで微細な皮質異形成を確認する。

・結節性硬化症など石灰化病変は頭部CTで評価。

・FDG-PETではMRIで異常がみられないWest症候群の患者でも局在した大脳皮質の集積低下がみられることがある。集積低下は潜在する皮質異形成などの病変を示唆するが、経時的には集積低下は消失することもある。

治療

・ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)療法が有用である。スパズムを消失させるだけでなく、ヒプスアリスミアの脳波所見を劇的に改善される。

・なぜ効果があるかの仮説では、ACTH投与によりネガティブフィードバックでCRHを抑制するという説がある。

・本邦ではコートロシンZ®︎を1日1回筋注するが、投与量や投与期間には議論がある。

・ACTHには免疫能の低下、高血糖、低カリウム血症、高血圧、不機嫌、食欲亢進、体重増加などの副作用がある。

・バルプロ酸、ゾニサミド、トピラマート、クロナゼパムなどの一般的な抗てんかん薬も有効な場合があるが、ACTHに比べて有効性は低い。

・ビタミンB6大量療法は有効性は低いが、一部の患者ではビタミンB6依存性てんかんの場合があり、他治療の効果がない患者では考慮される。

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