【小児科医blog:神経, MRI】脳炎/脳症の画像所見 | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:神経, MRI】脳炎/脳症の画像所見

検査

急性脳症の総論的内容や具体的治療法については以前ブログ記事にまとめています。

今回は、より具体的な検査について、主にMRI検査所見をまとめます。

下記ブログ記事まとめ↓

急性壊死性脳症(ANE:acute necrotizing encephalopathy)

・病変は視床(必須所見)を含む特定の領域(基底核、大脳白質、小脳白質、橋・中脳被蓋)に左右対称性に生じる。

・初期のMRI検査ではT1強調像で低信号、T2強調像・拡散強調像で高信号を呈する。

・3病日以降、視床の出血性変化を反映しCTで高吸収、T1強調像で高信号、T2強調像で低信号を示す部分が生じてくる。

・白質病変は終始T1強調像で低信号、T2強調像で高信号である。

・発症2週以降、脳萎縮が進行し、視床病変は縮小・消失ないし嚢胞化する。

ANEとの鑑別疾患

・両側視床病変を呈する疾患が鑑別。深部静脈血栓症、Reye症候群、急性散在性脳脊髄炎、日本脳炎、Leigh脳症、腸管出血性大腸菌感染症に併発する脳症、AESDなど。

出血性ショック脳症症候群(HSES: hemorrhagic shock and encepalopathy syndrome)

・発症半日以降、CTにて皮髄境界の不明瞭化を認め、急速に脳浮腫から脳ヘルニアに進展することが多い。

・拡散強調像で急性期に前頭・頭頂・後頭葉皮質・皮質下に高信号を呈し、亜急性期(第4-10病日)に比較的軽症例では皮質下白質に高信号(bright tree appearance)を呈する。

けいれん重積型(二相性)急性脳症[AESD]

AESD: acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion

臨床像

・日本の乳児に多く、欧米よりも頻度が高い。

・病原体としてヒトヘルペスウイルス6, 7型、インフルエンザウイルスの頻度が高い。

・発症当日または翌日にけいれん(early seizure、多くはけいれん性てんかん重積状態)で発症し、4-6病日にけいれん(late seizure, 多くは焦点起始発作の群発)を呈する。

・発症から数ヶ月経過して難治性てんかん発作を起こすことがある。

画像所見

・第1、2病日に撮影されたMRI検査では、拡散強調像を含めて正常。

・第3-9病日に拡散強調像にて皮質下白質高信号(BTA: bright tree appearance)、T2強調像、FLAIR像にてU-fiberに沿った高信号を認める。

・病変は前頭部優位(前頭葉、前頭頭頂葉)であり、中心前・後回は傷害されにくい(central sparing)

・第9病日以降、T2強調像、FLAIR像で皮質下白質に高信号を認める。

・2週以内のMRI検査スペクトロスコピーでグルタミン酸ないしグルタミンの上昇を認める

・BTAを認めないAESD急性期にASL(arterial spin labeling)法で前頭部の脳血流低下、BTA出現時に脳血流増加、慢性期に再度脳血流低下することが報告されている

鑑別

・BTAを呈しうる病態としては、低酸素性脳症、熱傷後毒素性ショック症候群、乳児期頭部外傷が挙げられる。

可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎脳症(MERS)

MERS:clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion

臨床像

・日本の小児急性脳症で2番目に高頻度(19%)

・発症平均年齢は5,6歳。学童、思春期にも見られる

・感染(ウイルス・細菌)、抗てんかん薬の中断、高山病、川崎病、低Na血症、低血糖、X連鎖性Charcot-Marie-Tooth病などで見られる。

・病原体としてインフルエンザウイルス、ロタウイルス、ムンプスウイルスの頻度が高い。

・神経症状として異常言動・行動が54%、けいれんが33%、意識障害が30%ほど認められる。

・神経症状は多くは10日以内に消失する。

画像所見

・急性期に脳梁膨大部は拡散強調像で高信号を呈し、みかけの拡散係数(ADC: apparent diffusion coefficient)は低下する。

・T2強調像で高信号、T1強調像で等信号ないしわずかに低信号を呈し、造影剤による増強効果は認めない。病変は2ヶ月以内に消失する。

・脳梁のみに病変を有する典型例をMERS1型、脳梁に加え対称性白質病変を有する例をMERS2型とする。

・脳梁病変は髄鞘内浮腫を反映すると考えられていたが、拡散時間を短縮化した拡散強調像(OGSE法)を用いた近年の研究では軸索腫脹やミクログリア浸潤が示唆されている。

鑑別

・脳梁膨大部の可逆性病変は、高山病、抗てんかん薬中断、低ナトリウム血症、川崎病など非感染性の病態でも認められ、RESLES(reversible splenial lesion syndrome)と称される。

・脳梁病変は急性散在性脳脊髄炎、可逆性後頭葉白質脳症(PRES: posterior reversible encephalopathy syndrome)、びまん性軸索損傷など鑑別。

・ロタウイルス胃腸炎に伴うMERSの場合、小脳炎が続発することがある。

CLOCCs(cytotoxic lesions of the corpus callosum)

・拡散強調像で脳梁に高信号を認める病態には、MERS、RESLESなど様々な呼称があり、軽症でないもの、過gy買う性でないもの、脳梁膨大部に限局しないものも含まれる。

・薬物両方、悪性腫瘍、感染症、くも膜下出血、代謝異常、外傷など様々な病態の二次性変化として脳梁に信号変化を認めるものを、近年より包括的にCLOCCsと呼ぶことが提唱されている

・炎症性サイトカイン放出、細胞外グルタミン酸の上昇により、ミクログリアの活性化・ニューロン機能障害が起こり、受容体密度の高い脳梁の細胞毒性浮腫が生じるという病態が考えられている。

・脳梁の信号変化はあくまで二次的なものであり、原因となる病態に対する治療を行うことが必要となる。

自己免疫性GFAPアストロサイトパチ−

・2016年にFangらにより新たに提唱された自己免疫性髄膜脳脊髄炎

・髄液抗GFAPα抗体陽性で、ステロイドを含めた免疫療法が有効

症状

・意識障害

・髄膜刺激徴候

・振戦、ミオクローヌス

・腱反射亢進

・排尿障害

・小脳性運動失調

・精神症状

検査所見

・持続する低Na血症を効率に合併(57%)、SIADHに伴うものと考えられている。

画像所見

・傍脳室部の線状・放射状所見、視床後部の対称性病変。

・病初期にMERSに合致する脳梁膨大部病変が認められることもある。

・3椎体以上におよぶ長大な骨髄病変を呈することもある。

PRES:可逆性後頭葉白質脳症

・血管内皮細胞障害、血管透過性亢進、血管攣縮などにより自己調節能の破綻で生じた血管性浮腫による可逆性脳症

・PRESとRCVSは共通・類似の病態が推測されている。

・血圧自己調節能の低い椎骨脳底動脈系に多い→頭頂葉・後頭葉に病変

・必ずしも可逆性ではなく、死亡する症例も報告されている(Malignant PRES)

  予後不良因子:重篤な基礎疾患、出血や拡散制限の合併、重度の脳浮腫による脳幹圧迫

症状

・頭痛、けいれん、視力障害、意識障害などで発症

原因

・高血圧

・子癇

・片頭痛

・感染/菌血症

・腎疾患(HUS, ITP/TTP, 糸球体腎炎, ネフローゼ症候群, IgA血管炎)

・自己免疫疾患/膠原病/血管炎

・視神経脊髄炎関連疾患(NMOSD)

・Crohn病/潰瘍性大腸炎

・内分泌疾患(褐色細胞腫、Cushing症候群)

・薬剤(ステロイド、免疫抑制剤、抗がん剤、造影剤)

・移植

・高Ca血症…….など

HUS脳症

・HUS(溶血性尿毒症症候群)発症から24-28時間以内に発症

・HUSの10%前後に起こる合併症

・全身の志賀毒素・炎症性サイト感による脳血管機能障害、血管透過性亢進、血液脳関門破綻+脳内に入った志賀毒素の直生作用、急性腎障害による体液異常、電解質異常、循環動態異常をきたす。

・HUS脳症から数日遅れて主幹脳動脈狭窄と脳梗塞をきたす場合もある。

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