総論
・常染色体劣性遺伝形式をとる先天性銅代謝異常症。
・肝臓での銅とセルロプラスミンとの結合が障害されて、銅の胆汁への排泄が障害される。
・13番染色体長腕(13q14. 3)に存在する疾患遺伝子ATP7Bが原因。
・ATP7B遺伝子は脳、腎臓、心臓あるいは筋肉でも発現しているが、肝臓で最も強く発現している。
・ATP7B蛋白は肝細胞における銅の胆汁中への排泄とセルロプラスミン合成過程におけるアポ会えるろプラスミンへの銅の供給を司っていると考えられている。
・3歳以上に発症し、組織への過剰な銅蓄積が様々な症状を引き起こす。
定義
・肝臓からの銅の排泄障害を主たる病態とし、肝臓をはじめ、中枢神経、角膜あるいは腎臓などの諸臓器に銅が蓄積する疾患。
病態
・Wilson病では肝臓から胆汁中への銅排泄が障害される。そのため肝細胞内の銅はそのまま蓄積され、貯蔵閾値を超えた際に肝細胞障害を生じる。
・さらに肝臓中より血中に放出された非セルロプラスミン結合銅は、全身諸臓器、特に大脳基底部、角膜および腎臓などに蓄積し障害を起こす。
・ATP7B蛋白の障害セルロプラスミン合成過程における銅の供給も阻害するため、セルロプラスミンは安定せずに、すぐ分解されてしまう。その結果血中セルろプラスミンは低値となる。
症状
・不随意運動:錐体外路症状(基底ganglion細胞障害)
・角膜Kayser-Fleischer輪
・(3歳以降の)肝障害
・腎障害(アミノ酸尿)・・学童期以降の血尿・蛋白尿
・溶血性貧血
・骨粗鬆症
・内分泌障害
病型分類
・4つの病型に分類される
肝型
・肝障害に基づく症状にて発症した症例
神経型
・既往および経過中にまったく肝症状の出現や肝機能障害がなく、神経症状のみにて発症した症例
肝神経型
・神経症状および肝症状、肝機能障害がともに(同時にあるいは時間差をもって出現)認められた症例
発症前型
・家族内検索にて症状の出現前に診断された症例ならびに他疾患の検索中に偶然発見・診断された症例
検査
・Wilson病を疑った場合、血清セルロプラスミン値、血清銅値ならびに1日尿中銅排泄量測定を行う。
・Kayser−Fleische輪検索のために眼科的検索も行う。
・血清セルロプラスミン低下(20mg/dL>)と尿中銅排泄量増加(100μg/日<)があれば、Wilson病と診断し治療を開始する
・どちらか一方しか認められなかった場合は、ATP7B遺伝子解析あるいは肝銅含量の測定を行う。肝銅含量が250μg/g dry tissue(or 200 μg/g wet tissue)以上であればWilson病と診断できる。
治療
・Wilson病の治療には、2種類の銅キレート薬と1種類の亜鉛薬が認可・販売されている。
・薬物療法は障害に渡って継続する必要がある
・肝不全に陥った症例は、肝臓移植の適応である。
肝機能障害のみ〜代償性肝硬変、神経症状(-)の症例の治療
・亜鉛薬はWilson病の肝障害に対する治療効果が高いため、肝障害に伴う臨床症状がなく血液検査での検査値異常の症例から、代償性肝硬変の状態にある症例では、酢酸亜鉛単独で治療を行う。
代償性肝硬変〜軽度肝不全、神経症状(-)の症例の治療
・銅キレート薬と酢酸亜鉛の併用を行う。
・この場合の銅キレート薬は副作用の少ない塩酸トリエンチンが推奨されている。
神経症状(+)の症例の治療
・銅キレート薬により神経症状が一時的に増悪することがある。
・よって、初期治療としては塩酸トリエンチンを中心に行う(軽症〜中等症の場合)
・重度の症状の場合は塩酸トリエンチン+酢酸亜鉛の併用
薬の特徴・使用方法
銅キレート薬
・D-ペニシラミンと塩酸トリエンチンがある。我が国における第一選択はD-ペニシラミン。銅排泄を促進する。
・塩酸トリエンチンはD-ペニシラミンが副作用で使用できない場合や、効果が乏しい不耐症例に対して適応がある。
・投与のポイントとして、必ず食間空腹時(食前1時間もしくは食後2時間以上あけて)に内服させることが重要。銅キレート薬は食事中の金属と結合してしまい、血液中に吸収されないため治療効果を発揮できない。
D-ペニシラミン
用量:15-25 mg/kg/日(最大量1400mg/日) 分2-3
副作用:出現頻度は20-25%と高い。特に自己免疫疾患や骨髄抑制などの重篤な副作用が出現する場合は内服を中止する。
塩酸トリエンチン
用量:40-50 mg/kg/日(最大量2500mg/日) 分2-3
亜鉛薬
・酢酸亜鉛は単剤では発症前あるいは治療維持期の症例に適応があり、銅キレート薬との併用の場合は発症後症例の初期治療から使用可能である。
酢酸亜鉛
用量:成人(16歳以上) 75-150 mg/日 分3
6-15歳:75 mg/日 分3
5歳以下:50mg/日 分2
副作用:胃痛などの消化管症状など。
・食事中の繊維質やカゼインなどは亜鉛の吸収を阻害するため、食前1時間あるいは食後2時間に内服させる。
・銅キレート薬と併用する場合は、消化管内で結合してしまうのを防ぐために、服薬時間を最低でも1時間以上ずらす必要がある。
銅制限食
・エビ、キノコ、レバー、チョコレートには銅が多く含まれているので摂取を避けた方が良い。


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