総論
・胸腹部臓器の左右軸に異常を生じる疾患の総称である。
・6000-20000出生に1人の発生頻度と言われている。
・従来は無脾/多脾症候群と呼ばれていた概念ではあるが、それぞれ右側心房相同(right atrial isomerism: RAI)と左側心房相同(left atrial isomerism: LAI)と呼称されることが多くなっている。
特徴
・RAIとLAIそれぞれの特徴を比較する(もちろん患者によって差・例外はあり)。
RAI
●心臓の位置:右胸心
●静脈
SVC:両側
IVC:両側
PV:TAPVC
●心内構造
洞結節:両側洞結節
心房中隔:単心房
房室弁:共通房室弁
心室:単心室または一側心室低形成
●動脈
RAIは一般的には単心室治療に進むことになり、PA/PSを有するために、肺血流を適切に設定する必要がある。PAであれば、プロスタグランディン(prostaglandin:PG)製剤を使用してPDA/肺血流を維持してい、初回の姑息手術まで管理を継続する。しかし、PDAを開けすぎてしまうと、高肺血流に傾きすぎてしまい、AVVR悪化やLOS悪化を生じうる点は一般のPG依存疾患と同様。
心室流出路:肺動脈閉鎖(pulmonary atresia: PA)/肺動脈狭窄(pulmonary stenosis: PS)
心室-大血管関係:DORV、TGA
●脾臓:無脾
RAIは従来、「無脾症候群」と呼ばれていたように、脾臓という免疫臓器を欠いていることが多い。そのため細菌感染症に罹患しやすい。
●気管・肺:両側右気管支・両側三葉
●消化管
一般的に、LAIよりもRAIにおいて消化管奇形が多いと言われている。
対称肝:76-91%
肝外門脈閉塞/低形成:頻度報告なし
腸回転異常:9-13%
LAI
●心臓の位置:右胸心
左右心房がLA型になり、洞結節を欠いたり低形成となるが、複数箇所に洞結節様組織が存在しているとも報告されている。実際には心房下部からの調律が多く、徐脈になることが多い。
●静脈
SVC:両側
IVC:奇静脈結合を伴う欠損
PV:IAS偏位による還流異常
●心内構造
洞結節:欠損
心房中隔:単心房
房室弁:共通房室弁
心室:単心室または一側心室低形成
●動脈
心室流出路:PA/PS
心室-大血管関係:DORV
●脾臓:多脾
LAIでは脾臓はあるものの、Howell-Jolly小体を認め、脾機能低下が疑われる症例もあるため、感染症への留意はRAI同様に必要。
●気管・肺:両側左気管支・両側二葉
●消化管
対称肝:50-67%
肝外門脈閉塞/低形成:11%
腸回転異常:13%
 
  
  
  
  

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