総論
・ファブリー病(Fabry disease)はグロボトリアオシルセラミド(GL-3)という成分を体の中で分解する酵素(α-ガラクトシダーゼA:α-GALA)が欠損、または活性が低下することにより GL-3が分解できず、体にたまる先天代謝異常症です。
・X連鎖遺伝なので基本的に男性に発症しますが、女子ヘテロ患者も発症します。
・全身にさまざまな症状がみられます。血管内皮細胞や心臓、神経(自律神経節)、汗腺、腎、心筋、角膜など全身のさまざまな細胞にGL-3がたまるため、四肢末端痛や、発汗障害、発疹といった症状が現れることや、大人になってから心肥大(左室肥大)、腎不全・蛋白尿などの症状が現れることがあります。
・死因は心合併症が最多です。
・ファブリー病のように、体の中の細胞(ライソゾーム)に分解できないものがたまってしまう病気は50種類以上あり、「ライソゾーム病」と呼ばれています。ファブリー病を含む「ライソゾーム病」 は、国の社会保障制度で、「指定難病」および「小児慢性特定疾病(18歳未満)」に指定され、医療費助成制度等の対象となっています。
症状
・ファブリー病はグロボトリアオシルセラミド(GL-3)(分解できないもの)が全身のさまざまな臓器・器官にたまり、さまざまな症状が現れます。症状が現れる時期や程度は個人差があります。
疑う症状
・四肢末端痛(灼熱感を伴う激しい痛み、発熱や運動で悪化)
・腎不全、蛋白尿、マルベリー小体
・心肥大(左室肥大)
主な臨床症状
・角膜混濁:車軸状・渦巻状の特徴的な角膜混濁が認められる。(角膜verticillata)
・左室肥大:末期の心病変として、後壁の繊維化・菲薄化を認める
・脳血管障害:急性期脳梗塞を認める。他に、一過性脳虚血、非特異的白質病変、椎骨脳底動脈の拡張・蛇行など
・被角血管腫:腰臀部、大腿上部、外陰部に好発する。組織的には小血管の拡張で、大きくなると表皮の角層が部分的に厚くなり被角様になる。
・マルベリー小体:尿沈渣中に、渦巻き状の糖脂質成分であるマルベリー小体や、尿細管上皮細胞にマルベリー小体が蓄積したマルベリー細胞が確認されることがある。
・発汗障害(無汗症、低汗症):温度調節障害
・神経の異常(四肢末端痛、肢端感覚異常):温度変化で増悪する手掌測定の激痛
・耳鼻の症状(難聴、めまい)
・消化管症状(下痢、腹痛)

参考:LYSO Life HP

分類
・男性と女性で症状の出方が異なります。
・男性は小児または成人期に症状が現れ、小児期から症状が現れる古典型と、心臓や腎臓などの臓器症状から現れる亜型に分類されます。
・女性は男性と同じような症状が出る人から、一部の症状のみの人までさまざまです。
古典型(男性)
発症時期:4-8歳
α-GalA残存酵素活性:<1%
小児期から全身のさまざまな臓器・器官に現れ、徐々に進行していきます。
幼児〜学童期:肢端感覚異常(温度変化で増悪する手掌測定の激痛)や発汗障害で発症
20歳頃〜:尿蛋白→進行性腎障害
30歳移行〜:腎不全、心合併症、脳血管障害⋯などの経過が特徴的。
| 小児期から | 手足の痛み、汗をかきにくい など |
|---|---|
| 成人以降 | ・心機能障害:心肥大、不整脈 ・腎機能障害:蛋白尿、腎不全 ・脳血管障害:脳卒中、脳梗塞など |
亜型(心ファブリー病、腎ファブリー病)(男性)
発症年齢が比較的遅く、症状が心臓や腎臓などの一部に限られます。心ファブリー病は心機能障害、腎ファブリー病は腎機能障害が主に現れます。
腎亜型
発症時期:>25歳
α-GalA残存酵素活性:<5%
心亜型
発症時期:>40歳
α-GalA残存酵素活性:<10%
女性ヘテロ型
発症時期:6−60歳
α-GalA残存酵素活性:軽微減少〜正常(結構正常例も多い)
女性は症状が現れない人から、古典型のように症状が全身のさまざまな臓器・器官に現れる人まで、症状の程度は人によって大きく異なります。
検査
α-ガラクトシダーゼA活性低下を確認する。補助的診断として、α-ガラクトシダーゼA遺伝子変異を確認します。
・女性は、酵素活性の低下がみられなくても、ファブリー病ではないと断定できないため、遺伝子検査で確定診断が行われます。
酵素活性測定
血液検査で、GL-3を分解する酵素(α-ガラクトシダーゼ)の働きの程度を調べます。男性は、酵素が不足している、あるいは働きが弱い場合、ほとんどの人が診断できます。女性は、酵素の働きだけでははっきりわからない場合があるため、遺伝子検査やそのほかの検査を行います。
遺伝子検査
必要に応じて、GL-3を分解する酵素(α-ガラクトシダーゼ)をつくる遺伝子の変化があるかどうかを調べます。女性の場合は疑われる症状、たまっているGL-3の量、遺伝子の変化があるかどうかの結果を総合的に検討し、確定診断が行われます。
治療
遺伝子組み換えα-ガラクトシダーゼA製剤を補充する「酵素補充療法(ERT)」があります。ファブリー病は症状がない間にGL-3が少しずつたまって、病気が進行してしまう病気ですが、酵素補充療法により、ファブリー病の進行を抑えることができます。
また、低分子化合物によって変異酵素蛋白質を構造的に安定化させる薬理学的シャペロン療法(PCT)という治療法もあります。
酵素補充療法(ERT)
- アガルシダーゼアルファ(リプレガル®):0.2 mg/kg を2週間に1回点滴静注
- アガルシダーゼベータ(ファブラザイム®):1.0 mg/kg を2週間に1回点滴静注

+α:他の酵素補充療法の対象疾患
現在、酵素補充療法の対象となっているのは、Gaucher病、Fabry病、Pompe病、Hurler症候群(ムコ多糖症Ⅰ型)、Hunter症候群(ムコ多糖症Ⅱ型)、Morquio症候群(ムコ多糖症Ⅳ型)、Maroteaux-Lamy症候群(ムコ多糖症Ⅵ型)、ライソゾーム産生リパーゼ欠損症(LAL-D)である。
薬理学的シャペロン療法(PCT)
ミガーラスタット(ガラフォルド®):16歳以上の特定のGLA遺伝子変異を有する患者に適用、経口薬
・シャペロン療法は働きが悪い酵素α-ガラクトシダーゼ(α-GAL)の構造を安定化させ、酵素としての働きをサポートし、GL-3をためずに分解できるようにする治療法です。2日に1回、飲み薬を服用します。
・全く酵素ができない場合やもともと酵素活性がない場合には効果がないため、投与前に患者さんの遺伝子の変化を調べる必要があります。
対症療法
- 疼痛管理:カルバマゼピン、ガバペンチン、フェニトインなど
- 腎保護:ACE阻害薬、ARB
- 心機能管理:β遮断薬、抗不整脈薬、ペースメーカー
- 脳梗塞予防:抗血小板薬
- 消化器症状:制吐剤、整腸剤
- 皮膚症状:レーザー治療(被角血管腫)
フォローアップ
- 3-6ヶ月ごとの腎機能、心機能評価
- 年1回の脳MRI検査
- 定期的な眼科、耳鼻科検診
- QOL評価(SF-36、EQ-5Dなど)
- 家族のスクリーニングと遺伝カウンセリング


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