総論
・消化管の閉鎖は胎生期の原始腸管の発生過程の異常に伴い、いずれの部位でも起こりうるが、食道・十二指腸・小腸での閉鎖が多い。
食道閉鎖
・出生3,500-4,500 人に1人の頻度で、約半数に食道閉鎖以外の合併症が認められる。
・胎生5-7週ごろに原始腸管から気管食道稜の形成を経て、食道は気管と分離していく。しかしその過程に異常を生じると、食道が盲端となったり、気管と食道の一部が交通したままと生まれてしまう。
腸閉鎖
・10,000人に対し1.3-3.5人に程度と報告されている。そのうち、十二指腸閉鎖が約60%、空腸閉鎖・回腸閉鎖がそれぞれ約20%程度とされている。
・全体として約20%が染色体異常と関連する。
・十二指腸閉鎖は上皮の成長で一度閉塞した内腔が再開通する際の障害、あるいは血行障害により起こると言われている。
・十二指腸の半数異常に合併奇形を認め、約30%は21 trisomyである。
・小腸閉鎖は胎生期の腸重積や捻転、内ヘルニア、血栓症などによる腸間膜血流障害により起こるとされている。
臨床所見
・胎生期では、消化管閉鎖があると胎児が飲み込んだ羊水が消化管内を流れていくことができなくなるため羊水過多が見られる。
・遠位消化管で閉鎖が起きている場合、羊水過多はあまり目立たない場合があり、出生後の症状出現も遅れて見られる場合がある。
食道閉鎖
・気管食道瘻の有無と位置によって5型に分類される。
・以下、Grossの分類(日本小児外科学会HP参照)

・Grossの分類では、C型が85-90%、A型が5-10%と上部食道が閉鎖し、食道が盲端となっている型が多くを占めている。唾液が食道から胃に流れないため、唾液誤嚥により呼吸不全を生じる。
・E型(食道閉鎖のない気管食道瘻)は2-4%と少ない。実際に食道が閉鎖している訳ではないため、繰り返す肺炎などの呼吸器症状で乳児期以降に発見されることもある。
腸閉鎖
・腸閉鎖の病型は、膜様型、索状型、離断型、多発型の4つに分けられる。
十二指腸閉鎖
・膜様型が最も多い
・閉鎖部位はVater乳頭部付近が多く、乳頭部より口側のものをprepapillary type、肛門側のものをpostpapillary typeと分類する。比率は約1:4ほど。
・閉鎖は多発性のこともあり。
・生後数時間より胆汁性嘔吐、上腹部膨満がみられ、胎便排泄遅延も認められる。
・prepapillary typeでは非胆汁性嘔吐、かつ胎便排泄遅延も見られないような場合もあり注意。
・postpapillary typeの十二指腸閉鎖(および小腸閉鎖)では、ほとんどの場合炭白色便を呈する(閉鎖の時期が出生から近い場合、出生早期の胎便として濃緑色の便が見られることはあり)。
小腸閉鎖
・離断型が多い。
・離断型の特殊型としてapple-peel型がある。
・腸管穿孔が起こり、胎便性腹膜炎を来すこともあり要注意。穿孔は空調よりも回腸に多い。
合併異常
食道閉鎖の合併症:VACTERL, VATER連合
・食道閉鎖の合併奇形には、椎体の分節異常、鎖肛、心奇形、腎形成異常、四肢の形成異常(橈骨列形成不全)などが知られており、VACTERL連合あるいはVATER連合と呼ばれる。
V=Vertebral/Vascular anomaly
A=Anorectal anomaly
C=Cardiac anomaly
TE=Tracheoesophageal fistula, Esophageal atresia
R=Renal anomaly, Radiak ray anomaly
L=Limbs defect
・食道閉鎖が起こる胎生5-7週頃は体の種々の器官の器官形成期に相当するため、多臓器の発生異常を合併する頻度が高くなる。
・他、十二指腸閉鎖、輪状膵、染色体異常(18 trisomy, 13 trisomy, 21 trisomy)など
十二指腸閉鎖の合併症
・21 trisomy、心奇形、食道閉鎖、胆道閉鎖、鎖肛、十二指腸閉鎖(多発)、輪状膵、中腸回転異常、小腸閉鎖、腎尿路異常、椎体奇形、肋骨奇形などがある。
小腸閉鎖の合併症
・十二指腸閉鎖に比較すると少ない。
・中腸回転異常や中腸軸捻転、嚢胞性線維症などがある。
・多発型の小腸閉鎖のうち一部の症例では、TTC7A遺伝子の変異が関連している常染色体劣性遺伝のものが報告されている。
・早期発症の炎症性腸疾患や重症複合免疫不全症を伴うものもある。
画像所見
・消化管閉鎖では、消化管の内容が閉鎖している部位までは進むが、閉鎖部より肛門側には進まない状態となる。画像検査ではその状態を反映し、閉鎖部より口側は拡張し、肛門側は原則的に内容がほとんどない管腔像が見られる(しかし、食道閉鎖のように別経路から内容物が進むこともあり)。
・出生後は口側の拡張部が空気により満たされた像として描出される(胎児期では羊水により拡張)
食道閉鎖
・Gross分類のC型、A型でが上部食道が拡張して認められる。Ng-tubeを挿入すると盲端でチューブがcoil-upする像が認められ診断の一助となる。
・A型食道閉鎖では下部の消化管に空気は見られないが、C型では気管を開始て空気が食道閉鎖部より下の消化管にも流れるので、下部消化管にも空気が認められる。
十二指腸閉鎖
・胃と十二指腸で拡張したガス像が認められ、これより遠位には空気が認められない。この所見をdouble bubble signとよび、特徴的な画像所見である。
・副膵管開口部と主膵管開口部の間、あるいは胆管のY字開口の間に閉鎖がある場合は、これらを介して閉鎖部の口側の空気が、閉鎖部より肛門側の消化管へ到達することがあり、この場合は十二指腸閉鎖ではなく狭窄や、あるいは正常像と診断されてしまうことがある。
空腸閉鎖
・閉塞部まで空気が到達し拡張する。近位空腸での閉塞はtriple bubble signと呼ばれ特徴的。
回腸閉鎖
・閉塞部位までに多くの腸管に空気が入っているため、多くの拡張した腸管が認められる。しかし、結腸や直腸のガスは認められない。
・ガス像のみから結腸と小腸のガス像の見分けはつかないこともあり、実際は直腸のガスの有無に注目して画像を見る。
・注腸造影では径の細い大腸が認められる。これはmicrocolonと呼ばれ、これが認められた場合、結腸より口側での腸閉鎖が強く疑われる。
鑑別疾患
十二指腸閉鎖
・レントゲン画像・透視でdouble bubble signを認めた場合、まずは十二指腸閉鎖を疑うが、下記疾患も鑑別となる。
・輪状膵
・中腸回転異常のLadd靱帯による十二指腸圧迫
小腸閉鎖
・中腸軸捻転
・Hirschsprung病
・Hirschsprung病類縁疾患
・結腸閉鎖
・胎便関連性腸閉塞(meconium related ileus: MRI)
治療
・気管食道瘻を閉じて、上下の食道をつなぐ根治手術を行うのが基本的な治療。
・側胸部を切開して手術を行うことが多いが、最近では胸腔鏡手術が保険収載されている。
・上下の食道の間の距離はあかちゃんによって差があり、かなり離れている場合には一度の手術でつなげず、何度かに分けて手術を行うことがある。
・また、合併するほかの病気のために、根治手術がすぐに行えないこともある。その場合にも何度かに分けた手術が必要となる。このような場合、腹壁から胃に胃瘻というトンネルを作成し、そこにチューブを挿入してミルクを注入し、成長を待ちながら段階的に手術を行う。
経過
・2015年の国内の調査では、手術後90日以内の死亡率は8.4%
・複雑な心臓の病気や現在治療することが出来ない病気を合併していると、死亡率が高くなる。
・術後早期には、つないだところがうまくつながらないことがある(縫合不全)。無事につながった場合にも、しばらくしてつないだ部分が狭くなったり(吻合部狭窄)、気管食道瘻が再発することも。
・吻合部狭窄に対しては、風船で狭いところを広げる手術が行われる。
・術後しばらく経過してからでも、呼吸が苦しくなることがある。これは、気管が柔らかい(気管軟化症)ため。成長とともに気管軟化症は改善することが多いが、一時的に人工呼吸器などで呼吸を補助しなければならない場合がある。
・胃から食道に胃液が逆流しやすくなる(胃食道逆流症)ことが多く、薬を飲んだり、逆流防止の手術が必要になることもある。
・また、摂食障害が見られることもあり、うまく食べられるようになるまで、リハビリが必要になることもある。


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