【小児科医blog:消化器】先天性食道閉鎖症(congenitial esophageal atresia)について | ゆるっと小児科医ブログ
PR

【小児科医blog:消化器】先天性食道閉鎖症(congenitial esophageal atresia)について

消化器
Screenshot

総論

・食道閉鎖症は、出生時に食道が途中で途切れている状態を指す先天性疾患です。

・この疾患は、胎生4〜7週頃に気管と食道が分離する過程で異常が生じることによって発生します。

・発生頻度は約3,000〜5,000人に1人とされ、日本では年間約200例が報告されています。

・低出生体重児に好発します。

・染色体異常(18トリソミーなど)との関連も指摘されています。

・男女比=1.4:1

・この疾患は、気管と食道の間に瘻孔(ろうこう)が存在することが多く、これを「気管食道瘻」と呼びます。

・先天性心疾患や脊柱形成異常などを合併したものをVACTERL連合といいます。胎生5-7週の器官形成期の異常により、脊柱形成異常(V)、鎖肛(A)、先天性心疾患(C)、気管食道瘻(TE)、腎臓または橈骨形成異常(R)、四肢の異常(L)といった奇形のいくつかを合併したものです。

分類

・食道閉鎖症には5つの型(A〜E型)があり、その中でもC型が最も一般的で全体の約85%を占めます。

・次に多いのはA型で10%を占め、残りの3つはまれです。E型は、食道の閉鎖はありませんが、この病気に含めて考えます。単に気管食道瘻という病名で呼ぶこともあります

  • A型:上下の食道が完全に分断されているタイプ(10%)。
  • B型:上部食道が気管と繋がり、下部は盲端になっているタイプ(非常に稀)。
  • C型:上部が盲端、下部が気管と繋がっているタイプ(最も多く85%)。
  • D型:上下ともに気管と繋がっているタイプ(稀)。
  • E型:気管と食道が瘻孔で繋がっているのみで、閉鎖はない(H型とも呼ばれる)。
Screenshot

(↑日本小児外科学会HP参照: http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/sentensei-shokudouheisashou)

これらの分類は診断や治療方針を決定する上で重要です。特にC型では、生後早期に手術を行うことで比較的良好な予後が期待できます。

症状


・妊娠中に羊水過多となることがあります。これはあかちゃんが羊水を飲み込むことができず羊水が吸収されないためです。

・出生前の検査により診断されることもありますが胎児診断率は50%以下です。

・出生後は、口から唾液が溢れてくることが多くみられます(泡沫状の唾液流出)。このようなときにカテーテル(チューブ)が胃に入らず途中で反転してしまうことで気づかれます。

・また、唾液を誤嚥して肺炎になることがあります。C型、D型では、胃液が肺に流れ込みひどい肺炎になったり、胃に空気が入り込みおなかが膨れ上がって息がしにくくなることがあります。E型では、出生直後は見つからず、肺炎を繰り返すことで発見されることがあります。

・泡沫状唾液が認められなくても、乳汁が胃に流れていかないので、初回哺乳後の嘔吐も特徴的です。

診断方法

・胎児期には超音波検査で「羊水過多」や「胃泡の欠如」などから疑われることがあります。しかしながら、正確な診断率は約50%以下です。

・出生後には以下の方法で診断されます

  • 経鼻胃管挿入時にカテーテルが胃まで到達せず反転する「コイルアップ像(=coil up sign)」がX線で確認される。食道が盲端となっているGross分類A,C型で認められます。
  • 胃内への空気流入の有無で病型を推測。胃泡や消化管ガス像を認めた場合、下部食道と気管の交通を疑います
  • Coil up signあり(上部食道閉鎖)+消化管ガス像あり(下部消化管と気管の交通あり)=Gross分類- C型ということになります。

治療

・治療は外科手術が基本となります。病型や合併奇形の有無によってアプローチが異なります。先天性食道閉鎖症の大半を占めるA型とC型は、呼吸器合併症のリスクや治療方針が異なるため、この2者の鑑別は重要です。

・気管食道瘻を閉じて、上下の食道をつなぐ根治手術を行うのが基本的な治療です。

・C型では、胃酸逆流による重篤な肺炎、肺障害が致命的となるため、緊急手術が必要となります。A型型は胃酸逆流がなく手術を急ぐ必要はありませんが、食道端同士の距離が離れている(long-gap型)ことが多く、手術の難易度が高くなります。

・側胸部を切開して手術を行うことが多いですが(直視下手術)、最近では胸腔鏡手術が保険収載され、いろいろな施設で行われるようになってきました。

外科的加療

・上下の食道の間の距離はあかちゃんによって差があり、かなり離れている場合には一度の手術でつなげず、何度かに分けて手術を行うことがあります。
・また、合併するほかの病気のために、根治手術がすぐに行えないこともあります。その場合にも何度かに分けた手術が必要となります。
・このような場合、腹壁から胃に胃瘻というトンネルを作成し、そこにチューブを挿入してミルクを注入し、成長を待ちながら段階的に手術を行っていきます。

  1. 一期的手術
    • 気管食道瘻を切除し、上下の食道を直接吻合(=気管食道瘻閉鎖+食道吻合術)。
    • 主にC型など距離が短い場合に実施。
  2. 段階的手術
    • A型など上下の距離が長い場合、一度胃瘻造設術を行い栄養管理を行った後、成長を待って吻合手術。
    • 必要に応じて代用食道(胃や小腸)を使用することもあります。

合併奇形と予後

約50〜65%の患者には心疾患や脊椎異常など他の先天性異常が認められます。また18トリソミーや21トリソミーなど染色体異常も関連しています。

・昔は命を助けるだけでも大変な病気でしたが、2015年の国内の調査では、手術後90日以内の死亡率は8.4%となっています。

・複雑な心臓の病気や現在治療することが出来ない病気を合併していると、死亡率が高くなります。しかし、現在でも合併症が多く、長期の治療が必要な病気であることは変わっていません。

術後合併症

  • 縫合不全
  • 吻合部狭窄
  • 気管軟化症や逆流性食道炎

・術後早期には、つないだところがうまくつながらないことがあります(縫合不全)。無事につながった場合にも、しばらくしてつないだ部分が狭くなったり(吻合部狭窄)、気管食道瘻が再発することもあります。

・吻合部狭窄に対しては、風船で狭いところを広げる手術が行われます。気管食道瘻の再発は、再手術が必要となります。


・術後しばらく経過してからでも、呼吸が苦しくなることがあります。これは、気管が柔らかいためです(気管軟化症)。気管と食道は、あかちゃんの体ができてくるときに密接に関係しているため、食道の異常が気管にも影響するためです。

・成長とともに気管軟化症は改善することが多いのですが、一時的に人工呼吸器などで呼吸を補助しなければならない場合があります。

・胃から食道に胃液が逆流しやすくなる(胃食道逆流症)ことが多く、薬を飲んだり、逆流防止の手術が必要になることもあります。また、摂食障害が見られることもあり、うまく食べられるようになるまで、リハビリが必要になることもあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました
google.com, pub-9029171507170633, DIRECT, f08c47fec0942fa0