【小児科医Blog:消化器・免疫】Crohn病(クローン病)について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医Blog:消化器・免疫】Crohn病(クローン病)について

免疫
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総論

・小児クローン病は、成人と比較して診断時に病変範囲が広く、重症であることが多いことが特徴です。

・また、肛門病変を伴うことも少なくありません。

・小児期には、消化器症状に加えて成長や心理的問題も考慮する必要があり、その特性に配慮した治療指針が求められています。

・今回は日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児IBD研究会の作成した、「小児クローン病治療指針(2019年)」についてまとめていきます。

1.小児クローン病治療指針(2019年)

https://www.jspghan.org/guide/doc/shouni_clone_chiryou_gyude_2019.pdf

病態

小児クローン病は、成人と比較して診断時に広範囲かつ重症の病変を持つことが多く、特に肛門病変を伴うことが少なくありません。また、消化器症状だけでなく、成長障害や心理的問題も重要な特徴です。以下に、小児クローン病の病態について詳しくまとめます。

病態の特徴

  • 広範な病変: 小児クローン病は診断時に広範囲にわたる病変を持つことが多く、上部消化管や肛門部にも病変が見られることがあります。
  • 成長障害: 診断時点で10〜40%の患者に成長障害が認められ、特に思春期に発症する例が多いです。成長スパート期における適切な治療と成長評価が重要です。原因として、「消化吸収障害」「炎症性サイトカイン」「ステロイド薬の使用」などが挙げられます。特に、小腸病変を合併するため、潰瘍性大腸炎よりも成長障害を認めやすいです。
  • 消化管外症状: 小児では消化器症状以外にも体重増加不良、不明熱、鉄欠乏性貧血などの消化管外症状が先行することがあります。
  • 心理社会的影響: 学校生活や心理的問題も重要な考慮事項であり、これらの側面への配慮が必要です。

病態進行と合併症

  • 腸管病変の進展: 小児クローン病では、腸管病変が進展しやすい傾向があります。特に小腸病変が高頻度で見られます。
  • 肛門病変: 高率で肛門病変を伴い、瘻孔や膿瘍形成などの合併症を引き起こすことがあります。これらは難治性で再発しやすく、管理が重要です

診断基準

・小児クローン病の診断基準については、主にEuropean Society for Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition(ESPGHAN)が報告しているRevised Porto Criteriaが用いられています。

・以下にその診断基準を表形式でまとめます。

項目診断基準
臨床症状– 消化器症状(腹痛、下痢、体重減少など)
– 消化管外症状(成長障害、不明熱、貧血など)
内視鏡所見– 潰瘍や炎症の存在
– 病変の範囲と重症度の評価
組織学的所見– 顆粒球浸潤やリンパ球浸潤の確認
– 非乾酪性肉芽腫の存在
画像診断– 小腸造影やMRIによる腸管病変の評価
血液検査– 炎症マーカー(CRP、赤沈など)の上昇
– 貧血や低アルブミン血症の確認

重症度分類

・小児クローン病の重症度分類は、Pediatric Crohn’s Disease Activity Index(PCDAI)を用いて行われます。

・この指標は、病歴、検査結果、診察所見に基づいて評価され、それぞれの項目に点数が付けられます。

・以下にその詳細を表形式でまとめます。

項目評価基準点数
腹痛なし0
軽度(短時間の腹痛で活動制限なし)5
中等度/重度(連日続く、活動制限あり)10
患者機能/全身状態調子良く行動制限なし0
年齢相応の行動が通常より制限されることがある5
状態不良で行動制限あり10
便(1日当たり)1回の水様便、血が混じらない0
少量の血が混じる、2回までの軟便または2〜5回の水様便5
明らかな出血または6回以上の水様便または就眠後の下痢10
ヘマトクリット (%)
(年齢/性別による基準)
基準値以上0
基準値未満(軽度低下)5
基準値未満(重度低下)10
赤沈 (mm/時)<20 mm/h0
20〜50 mm/h2.5
>50 mm/h5
アルブミン (g/dL)≥3.5 g/dL0
3.1〜3.4 g/dL5
≤3.0 g/dL10
体重変化増加または意図的な不変/減少なし0
意図しない不変または1〜9%減少5
≥10%減少10
身長変化
(診断時/フォロー時)
-1SD未満の減少または成長速度正常範囲内-1SD以上-2SD未満の減少または成長速度-2SD以下

この表に基づき、合計点数によって重症度が判定されます。具体的な点数範囲により軽症、中等症、重症と分類され、それに応じた治療方針が決定されます

超早期発症型IBDとは

・小児期(15歳未満)発症のIBDのうち、6歳未満で発症・診断されたIBDを超早期発症型IBD(very early-onset IBD : VEO-IBD)といい、小児IBD患者の5〜15%がVEO-IBDといわれています

・IBDと区別されている理由としては、クローン病や潰瘍性大腸炎の診断基準を満たさない非典型的であることがあり、一般的なIBDの治療に抵抗性を示すことが知られているからです。

・IBDの発症原因の1つに遺伝的要因が挙げられますが、VEO-IBDは特に遺伝的要因の関与が大きいとされており、単一遺伝子の異常(1つの遺伝子の異常)によって発症するIBDである“monogenic IBD”が含まれます。

Monogenic IBDとは

・近年の遺伝子学の発展により、VEO-IBDの中に単一遺伝子の異常によって発症する“monogenic IBD”の存在が知られるようになりました。

・遺伝子解析の技術の進歩により“monogenic IBD”の原因遺伝子が次々に報告され、現在では80以上の原因遺伝子が特定されています。これらの中には慢性肉芽腫症、IL-10/IL-10R欠損症、XIAP欠損症という疾患などが含まれます。

・中でも、慢性肉芽腫症はIBDの治療で用いる生物学的製剤であるTNFα阻害薬の使用により重症感染症を引き起こすことが知られているため使用することができません。

・反対に、造血幹細胞移植という治療を行うことによって腸炎の治癒が見込める疾患も含まれます。このように診断が確定することで治療方針が大きく変わる可能性があるため、VEO-IBDのお子さんでは、遺伝子検査を検討していく必要があります。

治療の基本方針

  1. 治療目標: 腸管炎症による消化器症状の改善、合併症や手術の回避、正常な身体的発育と精神面での発達を目指します。特に粘膜治癒を目指した治療が推奨されます。
  2. 寛解導入療法: 完全経腸栄養療法(EEN)が第一選択であり、ステロイド薬は寛解維持には適さず、免疫調節薬や生物学的製剤の使用が必要です。
  3. 安全性の考慮: 特に生物学的製剤の適応は慎重に判断し、経験豊富な医師へのコンサルトが推奨されます。
  4. 薬用量: 原則として体重換算で決定し、個々の重症度に応じて調整します。
  5. 予防接種: 免疫抑制療法開始前に必要な全ての予防接種を実施することが望ましいです。

栄養療法

・小児クローン病の栄養療法は、寛解導入および寛解維持において重要な役割を果たします。

・以下に栄養療法の要点を表形式でまとめます。

項目詳細
完全経腸栄養療法(EEN)– 寛解導入の第一選択として推奨される
– 1日の全必要エネルギーを経腸栄養剤で摂取(学童では50〜60 kcal/kg/日)
– 臨床的寛解率は60〜80%と高く、ステロイド療法と同等以上の効果があるとされる
– 副作用としての成長障害を避けることができる
部分経腸栄養療法(PEN)– 寛解維持期において、1日必要カロリーの30〜70%を成分栄養剤で摂取
– チオプリン製剤と同等の効果があることが報告されている
– PENの併用により、生物学的製剤の効果減弱を抑制する可能性がある
中心静脈栄養(TPN)– 絶対的腸管安静が必要な場合に施行
– 著しい栄養低下や高度な狭窄・通過障害、瘻孔や膿瘍形成、高度な肛門病変がある場合に適用

このように、栄養療法は小児クローン病の治療において、成長障害や薬物副作用を考慮しながら重要な役割を果たしています。特にEENは、小児患者において優先的に選択されるべき治療法です

薬物治療

  • 5-ASA製剤: 軽症例に使用されます。メサラジン徐放剤は50~100 mg/kg/日、最大3 g/日まで投与可能です。

  • ステロイド薬: プレドニゾロンは1~2 mg/kg/日(最大40~60 mg/日)で使用されます。ブデソニドは1日朝1回9 mgを基本とし、年齢と体重に応じて調整されます

  • 免疫調節薬: アザチオプリンは0.5 mg/kg/日から開始し、通常1~2.5 mg/kg/日(最大100 mg/日)まで増量します。6-MPはアザチオプリンの約半量で使用されます。

  • 生物学的製剤:
    • インフリキシマブ: 初回5 mg/kgを0, 2, 6週で点滴静注し、その後8週毎に維持療法として投与します。
    • アダリムマブ: 初回160 mg、2週後に80 mgの皮下注射を行い、その後は40 mgを2週毎に投与します。

外科治療

・小児クローン病における外科治療は、内科的治療が効果を示さない場合や合併症がある場合に考慮されます。

・以下に、外科治療の適応と手術内容について詳しくまとめます。

外科治療の適応

絶対的適応(緊急手術が必要)

  • 腸穿孔
  • 大量出血
  • 中毒性巨大結腸症
  • 内科的治療で改善しない腸閉塞や膿瘍
  • 小腸癌、大腸癌(痔瘻癌を含む)

相対的適応(手術の時期と方法を慎重に検討)

  • 難治性の腸管狭窄、内瘻、外瘻
  • 腸管外合併症(成長障害など)
  • 内科的治療無効例
  • 難治性の肛門部病変(痔瘻、直腸膣瘻など)
  • 直腸肛門病変による排便障害(頻便、失禁などQOL低下例)

手術の選択と周術期管理

手術方法

  • 小腸病変: 主病変部のみを対象とした小範囲切除術や狭窄形成術。
  • 大腸病変: 小範囲切除術が原則。広範囲の場合は大腸亜全摘も考慮。
  • 直腸の著しい狭窄や瘻孔: 人工肛門造設術を検討。

周術期管理

  • 手術前に経腸・静脈栄養を導入し、低アルブミン血症や貧血などの栄養障害を是正。
  • 必要に応じて、イレウス管による減圧や経皮的膿瘍ドレナージを行う。
  • 術前ステロイド薬投与例では感染リスク増加や縫合不全の危険性があるため、可能であれば減量。

肛門病変に対する外科治療

軽症例(日常生活に支障のない程度)

  • 抗菌薬投与(メトロニダゾールやシプロフロキサシン)や切開排膿を検討。

中等症以上の有症状例

  • Seton法ドレナージを考慮し、痔瘻根治術は慎重に判断。
  • 薬物治療(免疫調節薬、生物学的製剤)導入前に局所感染巣を制御。

重症例

  • Seton法ドレナージや薬物療法でも制御できない場合は人工肛門造設を検討。

術後管理

・クローン病は術後再発リスクが高いため、適切な術後管理が必要です。

・残存病変がある場合には、それに対する治療を行い、内視鏡検査による評価が重要です。

・再発予防には通常の寛解維持療法を行い、生物学的製剤を含めた積極的な治療も考慮されます。

・内科と外科の連携が不可欠です。このように、小児クローン病における外科治療は、患者の状態や合併症に応じて慎重に判断されます。内科的治療と組み合わせることで、患者の生活の質向上を目指します。

結論

小児クローン病の治療は、小児特有の成長や心理社会的側面を考慮しながら進められるべきです。最新のエビデンスに基づき、安全かつ効果的な治療指針を遵守することで、患者の生活の質を向上させることが期待されます。

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