総論
・腎血管性高血圧は、腎臓に血液を供給する腎動脈が解剖学的に狭窄することで発生する二次性高血圧の一種です。
・この状態では、腎臓への血流が減少し、レニンというホルモンが過剰に分泌されることでレニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン(RAA)系が亢進する結果、腎臓の低灌流によって血圧が上昇します。
・腎動脈の狭窄は主に動脈硬化や線維筋性異形成によって引き起こされます。
・著明な高血圧の他、代謝性アルカローシスや電解質異常、腎機能障害も含まれます。
疫学
・日本における小児高血圧症は、小学校高学年以上の1-5%にみられます。
・12歳以上では原因が特定されない本態性高血圧が多いのに対して、12歳未満では何らかの器質的疾患に起因する二次性高血圧の割合が多くなり、そのうち3-25%を腎血管性高血圧が占めます。
病態
・片側もしくは両側主腎動脈の狭窄によって、腎実質への血流量が低下することで、腎の傍糸球体細胞からレニンが大量に分泌され、RAA系の亢進をきたします。
・増加したアンジオテンシンⅡは、腎血流量の低下に対して糸球体内圧を維持するために輸出細動脈を収縮させるとともに、末梢血管抵抗を増大させます。
・さらに副腎皮質からアルドステロンが過剰分泌され、腎集合管でのナトリウムおよび水の再吸収を促進します。
・このように、末梢血管抵抗の増加や再吸収増加に伴う体液量の上昇により、高血圧をきたします。
原因
・腎動脈の狭窄は、主に以下の要因によって引き起こされます。
動脈硬化
・中高年に多く見られ、全体の約80%を占めます。動脈内壁の脂肪沈着が原因で、腎動脈が狭くなります。
線維筋性異形成(Fibromuscular dysplasis: FMD)
・若年女性に多く見られる病気で、動脈壁が異常に厚くなることで狭窄を引き起こします。
・欧米ではFMDが最も腎動脈性高血圧で多く、全体の70%を占めます。
大動脈炎症候群(高安動脈炎)
・若い女性に多く発生し、全身の大動脈に炎症を起こすことがあります。
・アジアやアフリカでは欧米よりも多く診られます。
その他
・結節性多発動脈炎
・川崎病などの血管炎
・Marfan症候群
・Williams症候群
・Alagille症候群
・もやもや病
・神経芽腫やWilms腫瘍などによる腎動脈の圧迫
・新生児期の臍動脈カテーテル留置による腎動脈血栓塞栓症
・放射線治療
・外傷
・腎移植後の腎動脈狭窄 などなど
症状
・腎血管性高血圧は通常、自覚症状がほとんどありません。
・背景疾患の診察や、健診での血圧測定で偶然に指摘されることが多いです。過去の報告では、26-70%は症状の訴えなく偶然発見され、とくに年長児ではその傾向が強いとされます。
・しかし、未治療の高血圧例では、正常血圧例と比べて、頭痛や不眠、倦怠感などの症状を呈することが多いです。
・臨床症状の頻度で最も高いのは頭痛です。
・次いで、けいれん、めまい、視野障害、鼻出血、顔面神経麻痺、胸痛、片麻痺、成長障害、動悸、無月経など多彩な非特異的症状を伴うとされており、高血圧脳症や心不全などの合併症で発見されることもあります。
高血圧の基準
・小児高血圧の判定基準は、日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019を参照します。
| 収縮期血圧(mmHg) | 拡張期血圧(mmHg) | |
| 幼児 | ≧120 | ≧70 |
| 小学校 | 低学年 ≧130 高学年 ≧135 | ≧80 ≧80 |
| 中学校 | 男児 ≧140 女児 ≧135 | ≧85 ≧80 |
| 高等学校 | ≧140 | ≧85 |
診断
・診断には、血液検査と、超音波検査やMRIアンギオグラフィーなどの画像診断が用いられます。これらの検査によって、腎動脈の狭窄や閉塞を確認します
血液検査
・BUN、クレアチニン、電解質、血液ガスの評価は必須。
・安静時の血液検査で血漿レニン活性(Plasma renin activity: PRA)の上昇を認める場合が多いが、体動や塩分摂取状況により変化する。そのため、画像検査で腎血管狭窄が証明された患児においても、約15%ではPRAが正常値であったため、PRAだけでの評価は不可。
尿検査
・診断には直接結びつかないことが多いが、非侵襲的で簡便な検査であり、慢性糸球体腎炎などの他の二次性高血圧の鑑別に有用である。
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬であるカプトプリル負荷試験や、腎静脈レニンサンプリングは成人では広く使用されるものの、小児における有用性はまだ確立されていない。
画像検査
・確定診断には、以下の画像検査が重要となる。
超音波検査
・カラードプラは侵襲性がなく簡便におこなえて、腎サイズの左右差から腎血管の流速、波形の測定が可能であり腎動脈の狭窄による収縮期最高血流速度増加の評価が可能である。
・ただし下記に記載するCTAやMRAと比較して、感度特異度は若干劣り、また何より術者の熟練度や腸管ガスに影響を受ける部分も多い。そのため、スクリーニングとしての使用が推奨される。
CT血管造影(CT angiography: CTA)
・CTAは短時間の撮影で腎動脈狭窄部位の詳細な評価が可能なため感度特異度ともに高い一方で、被曝量が多く、また造影剤を使用するため侵襲性の点では劣り、腎機能障害がある場合には実施しにくいという欠点もある。
MR血管造影(MR angiography: MRA)
・MRAは感度特異度ともにCTAに対して大きくは劣らず被爆もないという利点があるものの、造影剤使用による侵襲はあり、また撮影時間が長く鎮静が必要な症例もある。
選択的腎動脈造影
・FMDや神経線維腫Ⅰ型などで腎動脈末梢部に狭窄を生じている場合、CTAやMRAだけでは狭窄部位が特定できない場合がある。
・そのような症例では、選択的腎動脈造影は感度特異度ともに高く、同時に治療介入を行うこともできる。そのため、現時点では最も有用かつ確実な検査とされる。
治療
・治療は患者の状態に応じて異なります。一般的には以下の方法があります。
薬物療法
・レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAA阻害薬:ACE阻害薬やARB)が第一選択として用いられます。これらは降圧作用を持ち、動脈硬化の進行を防ぎます。
・血圧コントロールの際には、入院の上で24時間血圧モニタリングしつつ内服薬の調整を行う必要があります。
・ただし、RAA阻害薬は腎障害を誘発するリスクがあるので注意。両側性または片側性高度腎動脈狭窄が除外されていない場合には禁忌であることに注意。DMSA腎シンチグラフィや、レノグラフィwをを用いて分腎機能を評価しつつ身長に用いる。
カテーテル治療:経皮的血管形成術(PTRA)
・高度な狭窄の場合には、カテーテルを用いて狭窄部位をバルーンやステントで広げる治療法があります。
・経皮的血管形成術(Percutaneous transluminal renal angioplasty: PTRA)は高い治癒率を誇り、高血圧の改善率は68.2%とされる。とくにFMDに足してはPTRAによる根治を目指せる。
・PTRAで治療した患児は、内服のみで治療された児よりも将来的な腎萎縮率が有意に低いとの報告もある。
・しかし、急性炎症のある患児においては再発が起こる可能性や血管解離のリスクもあるため、避けた方が良い。また、脳血管疾患を併発している患児の場合は、PTRA後の再狭窄が高いとも言われる。
・合併症には、造影剤誘発性腎症、動脈けいれん、穿孔なども含まれ、最終的には出血性ショックにつながる。
外科的血行再建術:バイパス手術
・ 狭窄部位を迂回するバイパス手術も選択肢となります。
・侵襲性の点ではPTRAに劣るが、高血圧の改善率はたかkう、PTRAとともに根治可能な治療である。
・FMDの場合、腎血管遠位部や腎内血管に多発狭窄を生じつ場合もあり、PTRAが困難な場合もあり、PTRA不応例や頻回施行例においては外科的血行再建術が有効である。
予防法
・生活習慣の改善も重要です。特に減塩食や適度な運動は、高血圧全般の予防に効果的です。また、定期的な健康診断で早期発見を心掛けることも重要です。


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