完全房室ブロック(Complete Atrioventricular Block, CAVB)は、心臓の電気信号が心房から心室に伝わらなくなる重篤な不整脈です。
本記事では、小児科医としての視点から、最新の研究を基にその原因、症状、診断、治療法について詳しく解説します。
総論
・完全房室ブロックは、心臓の刺激伝導系における異常によって生じます。
・正常な心臓では、洞結節から発生した電気信号が房室結節を通り、心室へ伝わります。しかし、この伝導が完全に遮断されると、心房と心室が独立して拍動するようになり、心拍数が著しく低下します。
主な分類
先天性完全房室ブロック(Congenital CAVB)
<心原性>
・約半数が先天性心疾患(修正大血管転位、房室中隔欠損、多脾症など)に合併、胎児期や出生時に発症します。また、遺伝子異常(SCN5A、TRPM4、NKX2.5)なども関連があります。
<免疫性>
・正常構造心での注意点は、母体の自己免疫疾患、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群母体の自己抗体(例:抗SSA/Ro抗体陽性)との関連です。次児にもリスクがあるため、確定診断をつけることは重要です。
1. Pacing therapy of autoantibody-related congenital complete atrioventricular block in 3 neonates
Zhonghua Er Ke Za Zhi. 2022 Feb 2;60(2):144-146. doi: 10.3760/cma.j.cn112140-20210903-00738.

後天性完全房室ブロック(Acquired CAVB)
・心筋梗塞や感染症、薬剤などが原因で発症します。
<感染性>
・心筋炎、心内膜炎、リウマチ熱
<術後性>
・心室中隔欠損閉鎖を伴う手術、僧帽弁や大動脈弁の形成術/人工弁置換術
<その他>
・Kearns-Sayre症候群、カルニチン代謝異常、糖原病
2.Reversible complete atrioventricular block caused by acute rheumatic fever: a case report

3. Analysis of occurrence and treatment of perioperative complete atrioventricular block by transcatheter aortic valve implantation

原因
先天性の場合
・先天性CAVB(免疫性)は、母体由来の自己抗体(抗SSA/Ro抗体や抗SSB/La抗体)が胎児の心臓組織を攻撃することで発生します。
・通常妊娠20~24週頃に始まり、胎児の心拍数が35~55回/分程度に低下することがあります。
後天性の場合
後天性CAVBは以下の要因によって引き起こされます。
- 急性心筋梗塞(特に下壁梗塞)
心筋への血流障害が刺激伝導系を損傷します。 - 感染症
ライム病などが挙げられます - 薬剤性
β遮断薬やカルシウム拮抗薬など、一部の薬剤が伝導系を抑制する場合があります。 - 術後合併症
大動脈弁置換術や経皮的カテーテル治療後にも発生することがあります。
症状
CAVBの症状は心拍数低下による全身への血流不足に関連します。以下のような症状が見られることがあります。
- 徐脈(脈拍数が極端に遅い)
- めまい
- 意識消失(アダムス・ストークス発作)
- 運動時の息切れや疲労感
- 胸痛
特に小児では、成長遅延や活動量低下といった非特異的な症状も見られるため注意が必要です。
診断
1. 心電図(ECG)
・CAVBではP波とQRS波が独立して記録されます。これが診断の決定的な所見です。
2. ホルター心電図
・24時間モニタリングで一過性のブロックも確認できます。
3. 心エコー検査
・先天性の場合は胎児期から診断可能であり、母体抗体検査も併せて行います
治療
1. ペースメーカー植込み
・完全房室ブロックの標準的治療法はペースメーカーです。特に症状を伴う場合や持続的な徐脈では必須となります。
・成長期を含む生涯にわたるデバイス留置を要する小児では、血管閉塞とリード断線への配慮を忘れてはならない。
・心外膜リードでは留置位置が選択できるため、とくに先天性房室ブロックでは左室ペーシングが第一選択とされるようになっている。
・ペースメーカーのモードなどの詳細は下記ブログ記事参照です
2. 薬物療法
・一部のケースでは一時的な薬物療法(例:アトロピン)が有効ですが、根本的な治療にはなりません。
3. 原因疾患への対応
・例えば感染性の場合は抗生物質治療を行い、自己免疫疾患による先天性CAVBではステロイド投与も検討されます
予後・フォローアップ
・ペースメーカー植込み後、多くの患者で生活の質(QOL)が改善します。
・ただし、小児では成長に伴うデバイス交換や合併症管理が必要です。また、先天性CAVBの場合は母親への次回妊娠時リスク評価も重要です。
まとめ
・完全房室ブロックは適切な診断と治療によって予後を大きく改善できる疾患です。
・特に小児科領域では先天性CAVBへの早期対応が重要となります。本記事で紹介した内容を参考に、患者さんやご家族への説明やケアに役立ててください。



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