【小児科医Blog:循環器, PICU】小児の心不全について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医Blog:循環器, PICU】小児の心不全について

PICU

定義・疫学

・小児心不全は、心臓が組織の代謝需要を満たすのに十分な血液を送り出せない、または異常に高い充満圧でのみ血液を送り出せる状態と定義されます。

  • 小児心不全の発生率:年間10万人あたり0.87-7.4例
  • 1歳未満の乳児が全体の約50%を占める
  • 先天性心疾患患者の約25%が生涯で心不全を発症する

病態生理

・小児心不全の病態生理は複雑で、以下の要因が相互に作用します:

  1. 神経体液性因子の活性化
    • RAAS:心筋リモデリング、水分貯留を促進
    • 交感神経系:心拍数増加、心筋収縮力増強
    • ナトリウム利尿ペプチド系:代償性に利尿・血管拡張作用
  2. 心筋リモデリング
    • 心筋細胞肥大:初期は代償性、後期は不適切な肥大
    • 細胞外マトリックスの変化:線維化による心筋スティフネス増加
    • 心筋細胞のアポトーシス:心筋細胞数の減少
  3. エネルギー代謝異常
    • ミトコンドリア機能障害:ATP産生低下
    • 脂肪酸代謝の変化:グルコース利用への代謝シフト
    • 酸化ストレスの増加:細胞障害の促進
  4. 炎症反応
    • サイトカイン産生増加:TNF-α、IL-6などが心筋障害を促進
    • マクロファージ浸潤:心筋リモデリングに関与
  5. 細胞内カルシウム調節異常
    • SERCA2a機能低下:拡張能障害の一因
    • リアノジン受容体機能異常:不整脈のリスク増加

原因・分類

小児心不全の原因は多岐にわたり、年齢によって異なる特徴があります。

  1. 構造的心疾患
    • 先天性心疾患(左右シャント、流出路狭窄など)
    • 後天性心疾患(リウマチ性心疾患、川崎病後冠動脈病変)
  2. 心筋疾患
    • 原発性心筋症(拡張型、肥大型、拘束型、左室心筋緻密化障害)
    • 二次性心筋症(代謝性疾患、筋ジストロフィーなど)
  3. 不整脈
    • 頻脈性不整脈(上室性頻拍、心室頻拍)
    • 徐脈性不整脈(完全房室ブロックなど)
  4. 全身疾患に伴う心不全
    • 敗血症
    • 甲状腺機能異常
    • 重症貧血
  5. 周産期心筋症
    • 新生児遷延性肺高血圧症
    • 双胎間輸血症候群
  6. 薬剤性心筋障害
    • 抗がん剤(アントラサイクリン系など)
    • 向精神薬(クロザピンなど)

診断

小児心不全の診断には、多面的なアプローチが必要です。

  1. 臨床症状と身体所見
    • 年齢別の特徴的症状を詳細に評価
    • 成長・発達の評価も重要
  2. 画像診断
    • 心エコー検査:
      • 左室駆出率(LVEF):正常55-80%
      • 左室拡張末期容積(LVEDV)
      • 三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE):新生児>8mm(8-11), 小児>12mm(12-17)
      • 三尖弁逆流:
  3. MRI
    • T1マッピングによる心筋線維化の定量評価
    • 遅延造影像(LGE)による心筋瘢痕の評価
    • 4D flow MRIによる血流動態解析
    • 核医学検査
      • MIBG心筋シンチグラフィによる心臓交感神経機能評価
  4. 血液・生化学検査
    • BNP/NT-proBNP:カットオフ値は年齢により異なる
    • ST2、Galectin-3:新規バイオマーカーとして注目
    • 高感度トロポニン:微小心筋障害の検出
    • 代謝スクリーニング:先天代謝異常の評価
  5. 心臓カテーテル検査
    • 肺動脈楔入圧(PAWP)、心係数(CI)の測定
    • 冠動脈造影:川崎病後冠動脈病変の評価
    • 心内膜心筋生検:心筋炎、代謝性疾患の診断
  6. 遺伝子検査
    • 次世代シーケンサーによる包括的遺伝子解析
    • 心筋症関連遺伝子(MYH7、MYBPC3、TTNなど)の評価
  7. 運動負荷試験
    • 心肺運動負荷試験(CPX):最大酸素摂取量(peak VO2)の評価
    • 6分間歩行試験:運動耐容能の簡易評価

治療

小児心不全の治療は、原因疾患の管理と心不全そのものの治療を組み合わせて行います。

薬物療法

  1. 利尿薬
    • ループ利尿薬
      • フロセミド(ラシックス):
        • 経口1-3 mg/kg/日, 静注1-2mg/kg/回, 持続静注0.05-0.3 mg/kg/hr
    • バソプレシンv2受容体拮抗薬:低ナトリウム血症合併例に考える。
      • トルバプタン(サムスカ):1回0.3-0.5 mg/kg(1日回半量程度から開始する)
      • 成人量;1日1回15mg
  2. RAAS阻害薬
    • ACE阻害薬:エナラプリル:レニベース,エナラート(小児適応あり)
      • 0.1‐0.3mg/kg/日
      • 成人量;1日1回2.5-10mg
    • ARB:カンデサルタン:ブロプレス(小児適応あり)
      • 1-6歳:0.05‐0.4mg/kg/日 (24時間毎)
      • 6歳〜:2‐8mg/日 (24時間毎)
      • 成人量;1日1回2-8mg/日,最大12mg
    • ARNI(サクビトリル/バルサルタン):PANORAMA-HF試験進行中
  3. β遮断薬
    • カルベジロール:アーチスト:小児での有効性エビデンスあり
      • 0.1‐0.3mg/kg/日(0.02‐0.05mg/kg/日から開始)
      • 成人量:慢性心不全 1回1.25mg, 1日2回(もしくはさらに低量から開始)。維持量は1回2.5-10mg, 1日2回
      • メトプロロール:左室機能改善効果
        • 1‐4mg/kg/日(分2‐3)
  4. 強心薬
    • ジゴキシン:低用量での使用が推奨
      • 経口 
        • 飽和量 2歳以下:0.06‐0.08mg/kg、2歳以上:0.04‐0.06mg/kg
        • 維持量 飽和量の5分の1〜3分の1
      • 注射
        • 飽和量 新生児/低出生体重児:0.03‐0.05mg/kg、2歳以下:0.04‐0.06、2歳以上:0.02‐0.04
        • 維持量 飽和量の10分の1〜5分の1
  5. PDEⅢ阻害薬
    • ミルリノン:急性心不全、周術期管理に使用
      • 0.25〜0.75μg/kg/分
  6. その他
    • イバブラジン:洞調律患者の心拍数コントロール
    • ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬:スピロノラクトン、エプレレノン

非薬物療法

  1. 栄養管理
    • 高カロリー栄養:異化亢進状態への対応
    • 水分制限:個々の病態に応じて調整
    • 経腸栄養:必要に応じてNGチューブ、胃瘻を使用
  2. リハビリテーション
    • 心臓リハビリテーション:年齢に応じたプログラム
    • 呼吸理学療法:呼吸筋トレーニング、排痰援助
  3. デバイス治療
    • ペースメーカー:年齢・体格に応じたデバイス選択
    • 植込み型除細動器(ICD):小児用デバイスの開発
    • 心臓再同期療法(CRT):適応基準は成人とは異なる
  4. 機械的循環補助
    • ECMO:VA-ECMOによる循環・呼吸補助
    • VAD:
      • 体外式VAD:EXCOR Pediatric
      • 植込み型VAD:HeartMate 3(体格の大きな小児)
    • 人工心臓:TAH-t(Total Artificial Heart)の小児への応用研究
  5. 心臓移植
    • 適応:末期心不全で他の治療法が無効な場合
    • 課題:ドナー不足、免疫抑制療法の長期管理
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