今回は、総動脈幹遺残症(Persistent truncus arteriosus)という稀ですが重要な先天性心疾患についてまとめます。
定義と発生頻度
・総動脈幹遺残症は、胎生期の動脈幹中隔形成不全により、大動脈と肺動脈が分離せず、1本の大血管(総動脈幹)として心臓から出る先天性心疾患です。
・22q11.2欠失症候群を合併することが多いことも知られている。
・心室から単一の大血管が起始し、そこから体循環、肺循環、冠循環すべてに血液を供給することを特徴とする。
・発生頻度は出生10万人に約4-6人と稀な疾患です。先天性心疾患の約1‐2%ほどです。
病態生理
- 総動脈幹から体循環と肺循環の両方に血液を供給
- 心室中隔欠損を伴うことが多い
- 左右短絡により肺血流増加、肺高血圧症を来たす
- チアノーゼと心不全症状が混在
分類
Van Praagh分類が一般的で、肺動脈の分岐様式と大動脈弓低低形成の有無によって以下の4型に分類される。
- A1型: 短い主肺動脈幹から左右肺動脈が分岐
- A2型: 左右肺動脈が別々の総動脈幹開口部から起始
- A3型: 片方の肺動脈が総動脈幹基部から起始せず、血流は動脈管または側副血管から供給される
- A4型: 大動脈縮窄/離断を伴う
・A1-2型が80‐90%以上を占め、A4型は22q11.2欠失症候群の頻度が高い。
臨床症状
- 新生児期・乳児早期: 多呼吸、哺乳不良、発育不良、チアノーゼ
- 未治療例: 重度の肺高血圧症へ進行
診断
- 心エコー検査: 第一選択の検査法
- 形態診断、血行動態評価において有用。
- 両心室から心室中隔を騎乗しながら1本の太い大血管が起始した後すぐに左右に分岐する肺動脈が認められる。
- 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖(PAVSD)、大動脈肺動脈窓などの疾患との鑑別が必要。
- 「半月弁が一つのみ」「大血管から大動脈、肺動脈、冠動脈すべてが起始する」「半月弁の異常を伴う」などの所見から本疾患を疑う。
- 心臓CT/MRI: 詳細な解剖評価に有用
- 肺動脈起始の形態、総動脈幹との位置関係、大動脈弓形態や他の血管異常合併などを評価する。
- 心臓カテーテル検査: 血行動態評価、冠動脈評価に重要
治療
内科的管理
・利尿剤、強心薬、肺血管拡張薬など
外科的治療
心内修復術
・総動脈幹遺残症そのものは、すべて手術適応。
・高肺血流による肺血管閉塞病変(PVOD)や心筋肥大・冠循環不全による慢性心筋虚血の観点から乳児期早期の手術治療が推奨されている。
・術式はVSDを閉鎖し、心外導管を用いて右室と肺動脈をつなげる、いわゆるRastelli手術が主流。
姑息手術
・一期的心内修復術の成績は良好とされているが、低出生体重児や総動脈幹弁逆流が高度で形成困難など術前の条件が不良な場合は、両側肺動脈絞扼術を先行し、月齢や体重増加を待ち、乳児期中〜後期以降に心内修復術を行う。
総動脈幹弁逆流に対する手術
・中〜高度の弁逆流に対して交連縫縮、小さい弁尖を切除して4尖弁を3尖弁化するなどの弁形成術が行われているが、形成困難の場合は弁置換が行われるよう備える必要がある。
・総動脈幹弁の形成術後遠隔期には最終的に弁置換が必要になることが多い。
予後
- 未治療例の1年生存率は約20%
- 手術成績の向上により、近年の手術死亡率は10%以下
- 予後不良因子として中等度以上の総動脈幹弁逆流、大動脈離断、冠動脈異常の合併や診断の遅れ、低出生体重などが挙げられる。
- 長期予後: 再手術(導管交換など)、不整脈、大動脈弁逆流に注意
最新のトピック
- 胎児診断の進歩
- 3Dプリンティング技術を用いた手術シミュレーション
- 組織工学的手法による自家組織グラフトの開発


コメント