総論
・三尖弁閉鎖症(tricuspid atresia: TA)は、心臓の右心房と右心室をつなぐ三尖弁が閉鎖しているか、形成不全である先天性心疾患です。
・この疾患では、右房と右室の交通がないため右心室が十分に発達せず、右室は低形成となり、正常な血液循環を維持することができません。
・三尖弁は筋性(70%)、膜性(30%)に閉鎖します。
発生頻度
・三尖弁閉鎖症は比較的稀な疾患で、先天性心疾患全体の約1%を占めています。
・日本では年間約100人の赤ちゃんがこの疾患を持って生まれてくると推定されます。
病型分類
・TAの病態と症状は心室大血管関係、肺動脈狭窄、心室中隔欠損の程度により異なります。主にKeith-Edwardsの分類が用いられます。
Ⅰ型:正常大血管関係(70‐80%)
A.心室中隔欠損なし、肺動脈閉鎖
B.心室中隔欠損 小、肺動脈狭窄
C.心室中隔欠損 大、肺動脈狭窄なし
Ⅱ型:完全大血管転位(10‐25%)
A.心室中隔欠損、肺動脈閉鎖
B.心室中隔欠損、肺動脈狭窄
C.心室中隔欠損、肺動脈狭窄なし
Ⅲ型:修正大血管転位(3‐6%)
症状と診断
主な症状には以下のようなものがあります:
- チアノーゼ(皮膚や唇が青紫色になる)
- 呼吸困難
- 哺乳困難
- 成長障害
診断は主に心エコー検査で行われ、必要に応じてMRIや心臓カテーテル検査も実施します。
治療方針
・三尖弁閉鎖症の治療は、段階的な手術アプローチが一般的です。最終的には「フォンタン手術」と呼ばれる手術を目指します。
新生児期
・動脈管開存を維持する薬物療法や、必要に応じて短絡手術
・肺動脈閉鎖の場合(ⅠA・ⅡA)、生後早期から肺血流は動脈管に依存するため、プロスタグランジン製剤の持続投与、体肺動脈短絡術が必要となる。
・肺動脈狭窄ありの場合(ⅠB・ⅡB)、過度な肺動脈狭窄を認め体肺血流比が適切な症例(SpO2 75‐85%程度で心不全症状を呈さない症例)については、新生児期の外科的治療を要さず経過観察が可能。しかしTAの心室中隔欠損は筋性欠損であるため、経時的な狭窄の進行に注意が必要である。重度の肺動脈狭窄や低酸素発作を呈する肺血流減少型の症例は、肺動脈閉鎖症例同様にプロスタグランジン製剤や短絡術の適応となる。
・肺動脈狭窄なしの場合(ⅠC/ⅡC)、生後の肺血管抵抗の低下に伴い肺血流が増大し、高血流性心不全の症状が出現する。酸素投与や過度の水分負荷は、この状態を悪化させる。肺血流の制御のため肺動脈絞扼術を必要とする。
プロスタグランジン製剤の副作用
・無呼吸発作
・(長期使用で)骨膜肥厚
・肝機能障害
・無顆粒球症
・ショック、アナフィラキシー
・意識消失(血圧低下に伴い)
・心不全、肺水腫
・間質性肺炎
・心筋梗塞
・脳出血、消化管出血
乳児期
・新生児期に肺血流を管理する姑息手術を行い、よりよいFontan循環を目指して十分なサイズと左右均等な肺血管床の発育を促すことが重要である。
・心房容積減少などにより心房間交通が狭小化した場合にはバルーン心房中隔切開(BAS:Baloon atrial septostomy)が行われるが、十分に交通孔が拡大されない場合には外科的に心房交通拡大術が行われる。
両方向性グレン手術(上大静脈を肺動脈に接続)
・上大静脈を心房から離断して肺動脈に端側吻合し、上半身からの血流を心室を経由せず直接肺に還流させる手術。
・単心室循環の問題点である単心室容量負荷を軽減するとともに、Fontan手術による急激な中心静脈圧上昇と単心室前負荷と心拍出量低下を緩和し、Fontan循環への移行を容易にすることを目的として行われる。
幼児期
・フォンタン手術(下大静脈の血液も肺動脈に直接流す)
予後と生活
・医療の進歩により、多くの患者さんが成人期を迎えられるようになりました。
・しかし、定期的な経過観察や、場合によっては再手術が必要になることもあります。運動制限や感染症予防など、日常生活での注意点はありますが、多くの患者さんが学校生活や就労など、充実した生活を送っています。


コメント