【小児科医Blog:先天性疾患】Marfan症候群について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医Blog:先天性疾患】Marfan症候群について

先天異常・染色体異常

総論

・Marfan症候群は、結合組織の異常を引き起こす遺伝性疾患で、全身のさまざまな器官に影響を与えます。眼、心血管系、筋骨格系の病変を主症状とします。

・結合組織は、体の構造を支え、臓器や組織を安定させる役割を担っており、その異常が体全体に広がることで、さまざまな症状が現れるのが特徴です。

・解離性胸部大動脈瘤、僧帽弁逸脱、心機能傷害などの心血管症状は、罹患率および死亡率の主要因であり、臨床上重要なポイントとなります。

原因

・この疾患の主な原因は、FBN1(フィブリリン1)遺伝子の変異です。この遺伝子は、結合組織の弾力性を保つための重要な役割を果たしており、その異常によって結合組織が脆くなります。

・FBN1は、細胞外膜の構成成分であり、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)の生物学的利用能の調節に関与します。

・Marfan症候群は、常染色体優性遺伝形式をとるため、親から子へ50%の確率で遺伝します。5000人に1人の割合で発症します。

主な症状

Marfan症候群の症状は非常に多岐にわたり、主に以下の3つに影響を及ぼします。

1. 骨格系の異常

長身と四肢の異常な長さ

・患者は通常、身長が高く、手足が長く細い特徴があります。

脊柱側弯

・背骨が横に曲がることがあり、これが痛みや呼吸困難の原因となることもあります。

胸骨の異常

・胸骨が内側にへこむ「漏斗胸」や外側に突出する「鳩胸」が見られることがあります。

2. 心血管系の異常

大動脈瘤および大動脈解離

・Marfan症候群の患者では、大動脈が異常に拡張しやすく、心エコーまたはCT・MRIで描出される組織硬化を伴う胸部大動脈瘤を特徴とします。また、血管の老化促進および不適応なりモデリングを示す病理組織学的変化を伴います。

・Marfan症候群の患者の大動脈組織は、弾性板の断片化、過剰なコラーゲンとムコ多糖の蓄積を伴う大動脈構造の無秩序化、血管平滑筋細胞の相対的欠損が認められます。

僧帽弁逸脱

・心臓の弁が正しく閉じず、血液が逆流する状態を引き起こします。これは、弁が粘液腫性に肥厚するためです。

・Marfan症候群では、僧帽弁逸脱は弁膜症の中で最も多く、有病率は一般集団の1.3%に対して、約75%と非常に多くの割合を占めます。

・僧帽弁逸脱は、うっ血性心不全につながる重度の逆流と心機能障害をもたらす場合があり、成人患者を中心に外科的修復術が行われます。しかし、逆流が強く心機能障害をもたらしている場合は、その限りではなく早期に手術を行う場合もあります。

心筋症

・新生児Marfan症候群患者の心疾患は、弁逆流、心房中隔欠損、心室中隔欠損、うっ血性心不全を併発するのが一般的です。

・成人Marfan症候群患者では左室収縮および拡張機能障害は、弁逆流および左室容量負荷により二次的現象と考えられてきました。

3. 眼の異常

水晶体亜脱臼

・ 目の水晶体が正常な位置からずれてしまうことがあります。

・水晶体亜脱臼の検査のため、定期的な眼科診察を要します。

近視

・Marfan症候群の患者には、進行性の近視が一般的です。

・水晶体亜脱臼を認めない場合でも、近視は呈している場合もあります。

診断

・Marfan症候群の診断は、家族歴、臨床所見、および遺伝子検査に基づいて行われます。

・診断基準には「Ghent基準」があり、これに基づいて診断が確定されます。

・また、定期的なエコー検査やMRIを通じて心血管系の状態をモニタリングすることが重要です。

治療

・Marfan症候群には根本的な治療法はありませんが、症状を管理し、合併症を予防するための治療が行われます。

・身体/精神的なストレスを最小限とし、定期的なエコースクリーニングを行うことがMarfan症候群患者の管理上、重要となります。

薬物療法

・β遮断薬やアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)が、大動脈の拡張を抑えるために使用されます。これは解離のリスクを軽減させるため、治療の主軸となっています。

・非選択的β遮断薬であるプロプラノロールは、心臓の強心作用と大動脈の緊張を低下させ、Marfan症候群の標準治療となっています。

手術

・大動脈瘤や心臓弁の異常が深刻な場合、手術による治療が必要です。特に大動脈解離のリスクが高い場合は、予防的な大動脈置換手術が行われます。

眼の治療

・近視や水晶体の問題に対しては、適切な眼鏡やコンタクトレンズ、あるいは外科手術が考慮されます。

生活の中での注意点

・Marfan症候群の患者は、運動や日常生活でいくつかの注意が必要です。高強度の運動や競技スポーツは、大動脈に負担をかける可能性があるため、控えることが推奨されます。

・また、定期的な医療フォローアップと早期の治療介入が、合併症の予防に非常に重要です。現在のガイドラインでは、小児患者または大動脈起始部の成長が加速している患者は、年に2回のエコーで評価すべきであるとされています。

類縁疾患

・以下の疾患が、Marfan症候群関連疾患群として知られています。

・胸部大動脈瘤の病因にTGF-β経路が共通して関与している可能性が示唆されています。

Loeys-Dietz症候群

・動脈の蛇行、頭蓋顔貌病変、胸部大動脈瘤が主な症状です。

・Marfan症候群同様に、血管障害は主に上行大動脈に起こり、下行大動脈や腹部大動脈に起こる頻度は少ないです。

Aneurysm-osteoarthritis症候群

・Smad3の不活性化ヘテロ接合体変異を保有し、大動脈瘤、動脈の蛇行、早期発症の変形性関節症、Loeys-Dietz症候群に類似した頭蓋顔貌病変を含む複雑な発達症候群を呈します。

症候性胸部大動脈瘤

・TGF-β2の変異は、TGF-β1のアップレギュレーションとR-Smadシグナリングの亢進を逆説的に伴う症候性胸部大動脈瘤を引き起こします。

まとめ

・Marfan症候群は、遺伝的に引き起こされる結合組織の疾患であり、全身にわたる影響を持つ複雑な病気です。

・しかし、適切な診断と治療、そして生活管理によって、合併症のリスクを軽減し、生活の質を向上させることが可能です。

・Marfan症候群に関する知識を深め、早期の診断と治療を目指して、医療従事者や患者が一丸となって取り組むことが重要です。

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