【小児科医blog:新生児, 先天性疾患】21トリソミー・Down(ダウン)症候群について | ゆるっと小児科医ブログ
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【小児科医blog:新生児, 先天性疾患】21トリソミー・Down(ダウン)症候群について

先天異常・染色体異常

総論

・21トリソミー(Down症候群)は、染色体異常によって引き起こされる遺伝子疾患の一種であり、先天性の身体的特徴と知的障害を引き起こします。

・また、心奇形など各種合併症も生じる割合の高い疾患です。

原因

・21トリソミーは、染色体異常によって引き起こされます。

・トリソミー型の約95%が母親の染色体不分離により生じ、その80%が第一減数分裂異常によって生じています。

・通常、人間の細胞には23対の染色体がありますが、21トリソミーの場合、21番目の染色体に余分なコピーが含まれています。責任領域は21q22.3と考えられています。よって、必ずしも21番染色体の過剰は必要ないとも言われます。

・染色体核型により、標準型(95%)、モザイク型(3%)、転座型(2%)に分類されます。モザイク型はトリソミー細胞と正常細胞が混在するタイプで、正常細胞の比率が高いと臨床症状の軽い場合もありますが、基本的には臨床症状は同じです。

症状

・21トリソミーには、多くの身体的特徴があります。

・これには、平坦な顔面、斜視、短い首および短い手指、内眼角贅皮、眼瞼裂斜上、睫毛内反、単一手掌屈曲線、後頸部皮膚のたるみなどが含まれます。

・知的障害も非常に一般的であり、重度の場合は自己介助や自己決定ができない可能性があります。

・新生児期には哺乳不良で胃管を留置する場合もあります。また気道感染症では重症化および治癒遷延がみられます(過半数が先天性心疾患を伴っていること、喉頭軟化症などの構造的問題、筋緊張低下に伴う喀痰排出困難、免疫グロブリンの低値などが原因とされています)。

発達

・個人差はありますが、おおよそ以下のような発達と月齢目安となります。

定頚6-8ヶ月

寝返り8ヶ月

座位12ヶ月

腹ばい14ヶ月

四つ這い18ヶ月

立位20ヶ月

歩行24ヶ月……………と言われます。

合併症

・21トリソミーを持つ人は、特定の合併症のリスクが高くなる可能性があります。これには、心臓疾患、消化器系の問題、呼吸器系の問題などが含まれます。

・特定の合併症がなくても、定期的にチェックをしていくことが望ましいです。少なくとも採血などの医療行為に極端な恐怖心を抱かず、どの診療科にいっても診療が円滑になることを期待するという意味もあります。

循環器

・先天性心疾患では、多い順にVSD(心室中隔欠損)、AVSD(房室中隔欠損症)、PDA(動脈管開存症)、ASD(心房中隔欠損症)があります。

・一般的先天性心疾患の5%とされるAVSDがDown症候群では20%と高率に認められるのも特徴です。

・もともと肺血管の脆弱性があり、肺高血圧症の進行が早いことが知られています。

消化器

・食道閉鎖から鎖肛に至るまで、先天性消化管閉鎖の頻度は高く、生後早期に手術を要します。消化管狭窄の程度により、通過障害の症状が軽いために発見が遅くなることもあります。

・便秘は特に乳児期、幼児期早期は高頻度に見られます。便性自体は固くないことも多く、腹筋の力の弱さや水分摂取を好まないことなどが原因と考えられます。2-3歳以降で運動量が増えると自然軽快することもあります。便が硬い場合は、浸透圧性下剤の内服を行います。

呼吸器

・喉頭軟化症、咽頭軟化症では、低酸素発作や吸気性喘鳴、哺乳障害などを呈します。対症療法を行い、年齢とともに改善されてきます。

・3-4歳から成人期に至るまで、睡眠時無呼吸の頻度は高いです。閉塞性無呼吸の場合はアデノイド・扁桃摘出を行うケースもあります。持続的陽圧換気(CPAP) は本人の協力を得られないことも多いです。

・RSウイルス重症化が懸念される場合、モノクローナル抗体のパリピズマブ(シナジス)の流行期の月1回の投与が保険適用とされています。

血液疾患

・TAMは新生児期のDown症候群患者全体の10%に認められる類白血病状態です。無治療で自然軽快することもありますが、臓器障害のために早期死亡する例もあります。代表的症状は白血球数増多、血小板減少、肝脾腫などで、重症では肝不全、DIC、全身浮腫などがみられます。

・TAM既往者の2割は、1-3年後に白血病を発症します。多くはAML(急性骨髄性白血病)で、中でもAMKL(巨赤芽球性白血病)が多いです。ほとんどが4歳以下で、非Down AMLより減弱した治療を行います。

・TAMは21番染色体上の責任領域(特にRUNX1)が3コピーあるために血液前駆細胞数が増加し、血球分化に必須の転写因子であるGATA変異の存在が異常巨核球の産生を引き起こし、さらに責任領域(特にERG, ETS2, RUNX1)が3コピーあることが変異GATA1の発現増加を引き起こす相乗効果で生じると考えられています。

内分泌疾患

・甲状腺機能亢進症に比べ、甲状腺機能低下症の頻度が高いです。

・先天的な甲状腺機能低下であるクレチン症では、活気のなさ、哺乳不良、便秘、浮腫、皮膚の乾燥などがみられ、放置すれば心身の発達が遅れますが、新生児マススクリーニングで発見され、内服継続することで、上記のような症状を呈する症例は減ってきています。

・また、平均的身長は健常児の3%タイル程度ですが、多くの場合成長ホルモン分泌不全は認められません。しかし、Down症候群専用の成長曲線で検討してもなお低い場合、途中で身長の伸びが停滞している場合は負荷試験の上GH補充の自己注射を行うケースもあります。

代謝

・肥満、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症などの生活習慣病に注意が必要です。

・乳児期は哺乳不良、体重増加不良に注意が必要で、肥満に注意の必要なのは学童期後半からです。咀嚼がしっかりできないまま年齢が上がり、炭水化物の嗜好が強く、運動不足、家族歴が重なればなお肥満になりやすくなります。

神経

・てんかん発症率は5-10%程度ですが、中でも1歳以下でみられる点頭てんかん(West症候群)は治療開始が早いほど予後が良いので早期発見が重要となります。

耳鼻科

・外耳道が狭く鼓膜の観察が難しく、滲出性中耳炎になりやすく治療期間も長くなります。しかも反復しやすく長期化する時は、鼓膜チューブを留置します。

・新生児聴覚スクリーニング検査(AABR)でreferとなっても、その後の再検査で問題ないことが判明することもあります。35dB程度聞こえれば日常生活での支障は少ないです。

眼科

・光感受性期に中心部分に重度の白内障があると、早期手術を行わないと視力を獲得できません。

・斜視は両眼視機能獲得のため、睫毛内反は角膜刺激が強い場合に手術を行います。

・遠視は69.1%、2D以上の乱視は58%に認められ、他の屈折異常も含め、眼鏡を必要とする率は非常に高いです。

整形外科

・大部分が外反扁平足です。必要に応じて足底板(インソール)を用います。

・環軸椎亜脱臼については、Down症の10-30%の頻度で発生します。2-3歳で歩行が可能になるころの評価が合理的です。手術が必要な症例は約1%と言われます。

泌尿器

・停留精巣は生後6ヶ月までに下降がなければ自然下降は望めず、放置すれば将来腫瘍化、ときに悪性化の恐れがあるので手術します

・尿道下裂の手術は生後6ヶ月〜1歳半の間が望ましいとされます

疫学

・21トリソミーは、人口1000人あたり1人の割合で発生する比較的一般的な染色体異常の一つです。また、母親の年齢が高いほどそのリスクが高くなることが知られています。

検査

・21トリソミーの診断には、いくつかの検査があります。これには、超音波検査、血液検査、および羊水検査などが含まれます。

・出生前診断がない場合、臨床診断で疑われた場合、丁寧にインフォームドコンセントを行った上で、染色体検査(G-banding)を行います。染色体検査は必ず両親に検査の意味を説明し、同意を得てから行います。

・出生前診断を行う場合は、遺伝カウンセリングは必須です。なお、羊水検査でもFISH法だけに終わっている場合には、生後改めてG-banding法により染色体格型を確定します。

21トリソミーの成人移行

・21トリソミーを持つ人は、成人しても特別なケアが必要な場合があります。必要に応じて、特別な学校やグループホームでの生活を支援することができます。

・小児科の対象年齢を外れてからの人生のほうがはるかに長い時代となっていますが、成人科では意思疎通の難しさや家族の不安などで難しい面もあります。適切な成人科への移行が今後の課題です。

以上が、21トリソミーに関するまとめです。21トリソミーを持つ人々やその家族にとって、この情報が役立つことを願っています。

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