【新生児マススクリーニングの最前線:最新の科学と日本の現状】
・新生児マススクリーニング(Newborn Screening、NBS)は、生まれたばかりの赤ちゃんに対して遺伝性疾患や先天代謝異常などを早期発見するための非常に重要な検査です。
・日本では1977年(昭和52年)から本格的に始まり、その対象疾患や検査技術の発展とともに、児童の健康維持に不可欠な施策となっています。
・以下、直近5年以内の最新の科学的知見や日本の現況を踏まえ、医療の専門家向けにわかりやすく解説します。
【新生児マススクリーニングの目的と基本体制】
・新生児マススクリーニングの目的は、フェニルケトン尿症をはじめとした先天性代謝異常症や内分泌疾患を、新生児期に確実に発見し、適切な治療や生活指導につなげることで、生涯にわたる知的障害や重症化を予防することにあります。
・検査対象者はすべての新生児(出生後28日以内)であり、都道府県及び指定都市が実施主体となって、地方衛生研究所等の検査機関に委託して行われています。2024年度の出生数は約69万人と推計され、全国で高い受検率を誇っています。
【検査対象疾患の現状と拡大傾向】
・現在、日本の新生児マススクリーニングでは20疾患が対象とされており、これはアミノ酸代謝異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、糖代謝異常症、内分泌疾患(先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成症)を含みます。
・2014年のタンデム質量分析法(Tandem Mass Spectrometry; TMS)導入による対象疾患拡充を経て、平成29年(2017年)にはカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2欠損症(CPT2欠損症)が追加されました。
・近年、治療法の進展や検査技術の高度化に伴い、重症複合免疫不全症(SCID)と脊髄性筋萎縮症(SMA)が実証事業として公費化に向けた取り組みが進められ、2024年から複数自治体で検査が実施されています。また、各地でムコ多糖症、ライソゾーム病群(ポンペ病、ファブリ病、ゴーシェ病など)の拡大スクリーニングも進展しており、今後対象疾患はさらに増加していく見込みです。
一次対象疾患
・タンデムマス法で検出できる疾患のうち、感度よく発見でき、大部分が早期治療で障害発生を予防できる疾病を一次疾患と分類します。
・見逃す可能性があり確定診断が必ずしも容易ではなく治療法も確率されていないなどの理由で、現時点では「検討段階」とされている疾病を2次対象疾患と分類します。
・新生児マススクリーニングの一次対象疾患は、現在(2024年7月時点)日本では20疾患が対象とされています。主に先天性代謝異常症と先天性内分泌疾患に分類されます。特にタンデムマス法(質量分析装置を用いた検査)で検査される先天代謝異常症が中心です。
一次対象疾患の代表例は以下の通りです
【アミノ酸代謝異常症】
• フェニルケトン尿症
• メープルシロップ尿症(楓糖尿症)
• ホモシスチン尿症
• シトルリン血症1型
• アルギニノコハク酸尿症
【有機酸代謝異常症】
• メチルマロン酸血症
• プロピオン酸血症
• イソ吉草酸血症
• メチルクロトニルグリシン尿症
• ヒドロキシメチルグルタル酸血症(HMG血症)
• 複合カルボキシラーゼ欠損症
• グルタル酸血症1型
【脂肪酸代謝異常症】
• 中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD欠損症)
• 極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(VLCAD欠損症)
• 三頭酵素/長鎖3ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症(TFP/LCHAD欠損症)
• カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1欠損症
• カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2欠損症
【糖質代謝異常症】
• ガラクトース血症
【内分泌疾患】
• 先天性甲状腺機能低下症
• 先天性副腎過形成症
・これらの疾患は生まれてすぐに治療を開始すれば、発症や重症化を防げる可能性のあるものです。
・検査は生後4〜6日目頃に新生児のかかとから採血し、専用のろ紙に血液を染み込ませて行われます。日本ではすべての新生児がこの検査の対象です。
【検査技術の進歩と精度管理】
・日本ではタンデムマス法によるスクリーニングが全国的に標準化されており、検査の精度管理は日本マススクリーニング学会(JSMS)が中核となって実施しています。
・2023年度からは、SCIDおよびSMAスクリーニングにも同様の精度管理が適用され、検査施設の技術向上と誤診防止に寄与しています。
・また、LC-MS/MS(液体クロマトグラフィータンデム質量分析法)を活用した副腎過形成症の検査は、従来のELISA法と比較し偽陽性率の大幅な低減に成功し、検査後の再採血率や精密検査率の削減、患者家族の精神的負担の軽減に貢献しています。


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