DKA:diabetic ketoacidosis
総論
・DKAとは、何らかの侵襲がきっかけとなり、インスリンの絶対量が少なく、高血糖・高ケトン血症、代謝性アシドーシスになってしまう病態。
・高血糖による浸透圧性利尿で脱水となる。
・小児では脱水によりショックになる例は成人より少なく、ショックの場合は他の原因の検索も必要
症状
高血糖による症状
・血液浸透圧の上昇と高浸透圧利尿に伴う口渇、多飲、多尿
インスリン作用不足によりブドウ糖をエネルギーとして利用できないことによる症状
・倦怠感
・体重減少
ケトン産生亢進による症状(筋肉組織からの蛋白異化、脂肪組織における遊離脂肪酸 FFA)
・Kussmaul呼吸(酸血症を代償するための大きな呼吸)
・意識障害、昏睡
特徴
ケトン体:+++ (HHSは-〜+)
HCO3-:<15mmol/L
pH:<7.3
背景:1型糖尿病、若年者、初発2-3割、Kussmaul大呼吸
発症:比較的急速(数時間〜数日) (HHSは緩徐で数日〜数週)
けいれん、昏睡、神経学的所見:稀
腹痛:半数(アシドーシスが関与)
血糖値:300-600mg/dL(HHSでは600以上)
浸透圧:正常〜325mOsm (HHSでは>320mOsm)
尿中ケトン:+〜+++ (HHSでは-〜+)
インスリン:インスリン絶対的不足、インスリンは多量に必要(→アシドーシスが治るまで治療)
診断
DKAの生化学的診断基準
①高血糖:>200mg/dL
②静脈血pH <7.3, HCO3- <15 mmol/L
③ケトン血症、かつケトン尿症の存在
重症度分類
軽症:pH7.2-7.3、HCO3- 10-15mmol/L
中等症:pH7.1-7.2、HCO3- 5-10mmol/L
重症:pH<7.1、HCO3- <5mmol/L
治療
・DKAの治療の目標は、①アシドーシス、ケトーシスの正常化、②脱水の補正、③血糖を正常域に近づける、④DKAとその治療に伴う合併症をモニターし、発生しうるイベントに対応すること。
・頻回の検査に対応でき、DKAの経験のあるスタッフのいる施設で治療を行うのが理想。
生理食塩水またはリンゲル液の急速投与
初期輸液
・ショックの場合、10−20mL/kgを1-2時間かけて投与
・ショックでないが脱水がある場合、生理食塩水を10mL/kgで1時間かけて行う。
・早すぎると、濃度差から脳浮腫をきたす恐れがある(最大40-50mL/kg)
維持輸液
・初期輸液後は、維持輸液量に加えて脱水分を24-48時間かけて補正する
・水分欠乏+水分維持量を48時間で輸液する。
水分欠乏量推定
例:pH<7.20, HCO3- <10では重度にあたり90-150mL/kgの欠乏
水分維持量
例:10歳代では30-50kgあれば50 mL/kg/day
欠乏量と維持量を合わせた輸液を行う。
・必要であれば、循環動態が改善するまで繰り返し輸液加療を行う。
インスリン
・あくまで、循環血液量を回復してから持続で投与。
・最初の1時間は使わない。
・5%以上の脱水、酸血症(過呼吸)、嘔吐がある場合などに使用
・速効型インスリン:regular insulin ヒューマリンR注100単位®︎
0.05-0.1 U/kg/時(乳幼児は0.05くらい)の速度で持続点滴投与する。
※ワンショットでの投与は脳浮腫発生リスクとなるので行わない。
・血糖測定は30分~1時間毎に行う。下降速度が100 mg/dL/時を超えないように投与速度を調節。急激な血糖降下は、脳浮腫発症の危険性を増大させる。
・血糖が250-300mg/dLとなったら輸液にブドウ糖を添加する。血糖が300mg/dL以上でも血糖硬化速度が90mg/dL/hrを上回るようであればブドウ糖を添加。
・最初のK濃度が2.5 mEq/L未満であった場合、K補充でK>2.5mEq/Lとしたあとにインスリン加療を開始する。理由はこの後のKへの対応↓参照。
K(カリウム)異常への対応
初期からのKの異常
・DKA では体液喪失とともにKも喪失されていることが多い。しかし脱水で血液濃縮されているので、相対的にKが高く見えることもある。また腎前性腎不全によりKが高くなることもある。
・初期輸液で低K血症が出現した場合、20 mmol/L濃度でKを添加する。
・高K血症は不整脈を誘発するので注意。心電図モニターが必要。テント状T波、QRS幅の増大に注意
インスリン注入開始後のK異常
・循環血液量が回復すると低Kとなる。加えてインスリンを使用すると、細胞内にKが入ってしまうので、より低Kとなる。U波に注意する。
・インスリン持続点滴を開始したら、1-2時間ごとに血清Kをモニタリングする。
・血清Kが5.5mEq/L以下になったら、持続点滴にK20-40mEq/L/hr加える。
P(リン)異常への対応
・血中Pも低下することが多い。ただしリン補充の臨床的有用性を示す報告はない。
・投与する場合、1.5 mEq/L/日までの量とする。
アシドーシスへの対応・インスリン皮下注射への適応
・血糖値が300mg/dLを切ってきたら、血糖値を250-300mg/dLに調節。
・アシドーシスが回復(pH>7.3, HCO3- >15mmol/L)したら、インスリンは0.01-0.05U/kg/hrに変更し、徐々にインスリン皮下注射に変更する。
インスリン皮下注射投与量
・年齢を問わず、原則1日4回法から開始する。
総インスリン量
前思春期:0.7-1.0 単位/kg
思春期:1.0-2.0 単位/kg
・総インスリンのうち、30-50%が持効型インスリン、残りを速効型インスリンで投与。
・1日総インスリン量:過去24時間の速効型インスリン投与量の限界
・1日総インスリン量を4等分:毎食前(食事15分前〜直前)に超速効型インスリンとして投与。就寝前には持続型インスリンとして投与。
・食事量が安定しない幼児や就学前の子どもに対しては、食事の摂取量をみながら食中または食直後でもOK
ブドウ糖投与
・当初は不要。血糖値が250-300 mg/dL以下なら、5-10%濃度となるようにブドウ糖を混入。
・インスリン単位数(単位/時)の4倍のブドウ糖(g/時)投与からはじめ、適宜調節。
脳浮腫
・PaCO2 <20mmHg、BUN高値、治療開始1時間以内のインスリン投与、炭酸水素ナトリウムの使用、低Na血症は脳浮腫のリスク。
・頭痛、徐脈、興奮、混乱、意識レベルの低下、失禁などの症状を呈する。
・まず治療による低血糖はないか、検査で確認することを忘れない。
・アシドーシスだからといってメイロン®︎にとびつかない。
・また脱水の補正も急速ではなくゆっくりと行う。
治療
マンニトール 0.5-1 g/kg (2.5-5mL/kg) 15分以上かけて点滴静注
→反応がなければ、同量のD-マンニトールを2時間後(最低30分)に再投与(1日3-6回まで)
食事療法
・意識が回復した後にジュースや軽食から開始する。1-2日後より年齢相当の糖尿病食に移行する。
・小児1型糖尿病の食事の基本は、十分な必要エネルギーを摂取すること、適切な栄養バランスをとることが重要で、過度な食事制限は必要ない。しかし、過体重の場合や食行動異常がある場合は、体重管理と栄養管理を適切に行う。
摂取カロリーの目安
・エネルギー摂取量は、年齢、性別、体重、運動量を考慮して厚生労働省より発表されている、「日本人の食事摂取基準」を参考とする。
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
・また、以下のような摂取カロリーの目安もある。
小児:1000+(100×年齢) (kcal/日)
※この計算式は12-13歳まで有効。
成人:30×標準体重. (kcal/日)
標準体重(kg)=(身長:m)2 × 22


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