初期対応:中毒を疑う患者がきたら、まずどうする?
・何よりも、まずはABC、バイタルサインの評価→安定化、全身管理が基本です。
・そこが落ちついている場合、中毒に対しての治療を始めていきます。
活性炭
・内服1時間以内、もしくは徐放製剤(テオフィリン、キニン、アスピリン、バルビタール、β遮断薬、カルバマゼピン、フェニトインなど)であれば活性炭投与を行います。
・投与量:1g/kg 経管チューブから
※徐放製剤では、活性炭を 0.5g/kg 経口で、2-4時間ごとに繰り返し投与
・活性炭は効かない薬剤(アルコール、重金属、酸・アルカリ、灯油・ガソリンなど)はあるが、禁忌はない。
・エビデンスに乏しいものの、同時に緩下剤(酸化マグネシウム、ソルビトール)を混ぜて排泄を促進する方法もある。
・中毒物質は胃、小腸で吸収され、緩下剤は大腸で働くため、緩下剤単独では効果は乏しい。薬物を活性炭に吸着させ、それを大腸に達したら早めに排泄させるのが目的。
・胃洗浄は効果が乏しく、合併症も多いので推奨されません。
拮抗薬
・適応があれば使用するが、わからなければ、早めに日本中毒情報センターに連絡する。
●日本中毒情報センター

中毒症状と拮抗薬
アセトアミノフェン
中毒量:成人では150 mg/kg、小児では200 mg/kg
症状:悪心・嘔吐や食欲不振, 黄疸, 腹痛等
アセトアミノフェン中毒量以上の内服を行った場合, 内服2-3日後をピークに肝機能障害を起こす危険性があり(18-24時間後からみられる), 重症例においては肝機能障害が持続し肝不全に至る場合もある
中毒医療ガイドライン 医薬品 アセトアミノフェン. 106-125, 2008
拮抗薬:N-アセチルシステイン(NAC) 内服液
初回:140 mg/kg 経口
維持:70 mg/kg 4時間ごとに計17回投与
ポイント:摂取後8時間以内の投与で肝障害を軽症化しうる。
※強烈な匂いがあり、内服にはオレンジジュースなどと一緒に飲ませる方法もある。
・Rumach-Matthewノモグラムでは、服毒4時間以後の血中濃度を参考にN-アセチルシステイン適応を考慮しても良い。しかし、アセトアミノフェン血中濃度を迅速に計測できる環境にない場合、明らかに中毒量を内服したエピソードがあれば治療を開始するのが良いか…。
オピオイド
症状:鎮静、極端な縮瞳(pin-point pupil)、腸蠕動減弱、呼吸抑制
拮抗薬:ナロキソン 0.4mg(小児では0.01mg/kg), 1分毎 覚醒まで
0.4-2mg 筋注・経鼻・髄注も可。
半減期が短いので4時間経過観察を行う。
コリン作動薬(有機リン、サリン、カーバメイト)
症状:副交感神経症状(極端な縮瞳、流涙、発汗)、気道分泌物増加、気管攣縮、嘔吐、下痢、筋攣縮、徐脈、低血圧
拮抗薬:アトロピン 0.5 mg 静注(小児 0.02 mg/kg, 最大1mg)
3-5分ごとに繰りかえす。有機リン中毒では大量に必要になるので専門医へ
気道分泌物減少が目標。
プラリドキシム:PAM 1-2g(小児 20-50mg/kg) 15-30分で静注→8mg/kg/hr 持続静注
※PAMは有機リンにのみ有用。
抗コリン薬(抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬、抗パーキンソン薬)
症状:交感神経は亢進(散瞳、腸蠕動減弱、頻脈)しているが、分泌低下で乾燥が特徴的。意識変容、幻覚、鎮静
拮抗薬:通常は全身管理のみで良い。
重症例は、ネオスチグミン 小児 0.01-0.07 mg/kg 緩徐静注
交感神経作動薬(カフェイン)
症状;交感神経症状(散瞳、発汗、頻脈、血圧上昇、高体温)
拮抗薬:ミダゾラム 0.1-0.3 mg/kg 静注
→0.03-0.18 mg/kg/hr 持続静注
セロトニン症候群(SSRI)
症状:意識変容、頻脈、血圧上昇、腱反射亢進、クローヌス、高体温
拮抗薬:シプロヘプタジン 12mg経口
2時間ごとに2mg追加可能(最大32mg)
→8mg 経口 6時間ごと8回
β遮断薬、カルシウム拮抗薬
症状:高度徐脈、ショック
拮抗薬:脂肪製剤 20% イントラリポス. 1.5mL/kg 静注
5分後に効果判定し、2回繰り返し可能。
続いて 15mL/kg/時(0.25mL/kg/分) 持続点滴(最大10mL/kg、30分まで)
循環動態が安定後、10分持続点滴継続して中止する。
スルホ二ルウレア
症状:遷延性低血糖
拮抗薬:オクトレオチオド 0.1μg/kg 皮下注射
必要に応じて6時間ごとに2-3回繰り返す。
5μg/kgを24時間かけて持続皮下投与または3-4回に分けて皮下注射(max 25μg/kg/日)
三環系抗うつ薬
症状:不整脈 Torsades de Pointesを引き起こす。
拮抗薬:重炭酸ナトリウム QRS幅が広いとき 1-2mEq/L/kg 静注
pH>7.5 に保つように繰り返す。持続点滴は推奨されない。
人口換気による過換気で血中pH 7.5-7.55をたもてれば、重炭酸ナトリウムは不要。
カルシウム拮抗薬中
症状:低血圧、徐脈
対応:低血圧・徐脈に対してはアトロピン、輸液、昇圧薬を使用する。
拮抗薬:上記の対応で反応しない場合、カルシウム塩を使用する。
メトクロプラミド
症状:頭頚部、眼球、四肢のジストニア
治療:抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)→症状軽減に有効
銀杏
病態:4-o-メチルピリドキシンによるGABA合成抑制に起因すると考えられている
拮抗薬:ビタミンB6
ヒ素
症状:急性期で消化器粘膜の腐蝕作用(胃仙痛、下痢)、血圧低下、脳浮腫
無機水銀
症状:消化器粘膜の腐蝕作用(胃仙痛、嘔吐)、腎障害
鉛
症状:貧血、腹部仙痛、神経症状(末梢神経障害、橈骨神経麻痺)
灯油
・一般的に胃洗浄は禁忌。
・消化管の灯油は少量であれば放置して良いが、肺に吸入されると誤飲後に時間経過して肺炎を起こす。そのため、来院時と6時間後に胸部Xp検査をチェックする。
薬物検査 シグニファイER
・尿から中毒の原因薬物を特定可能。
・元々ERでよく使われていた、TriageDOAは販売中止となっている。
●シグニファイER紹介


・アンフェタミン類、バルビツルートルイ、ベンゾジアゼピン類、コカイン系麻薬、大麻、MDMA、モルヒネ系麻薬、オキシコドン類、フェンシクリジン類、プロポキシフェン類、三環系抗うつ薬の11種類を同定できる。
・判定方法は少しわかりづらく、試験キットでラインが出なかった項目が陽性となる。


特に注意の必要な薬剤
・同居している成人の薬を飲んでしまうと、たった1錠でも子供にとっては重篤な症状をきたすことがある。
・心血管系(カルシウム拮抗薬)
・経口血糖降下薬(特にスルホニルウレア)
・麻薬
・テオフィリン系
・アルコール類(エタノール、メタノール)
・腐食剤(酸、アルカリなど)
・除光液、殺虫剤(有機リン)、除草剤(パラコート)


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