2025年の日本におけるインフルエンザ流行は、例年のピーク時期である1~2月に加え、近年は流行開始の前倒し傾向が目立ちます。南半球(オーストラリア)の今シーズンの大規模流行や、日本国内でも9月下旬より流行をきたしています。
●参考:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
●厚生労働省:インフルエンザに関する報道発表資料 2025/2026シーズン
2025年流行するインフルエンザウイルス株とその特徴
・オーストラリアをはじめとした南半球で検出されたA型(H1N1)株が今季の主役とみられ、日本でもこの型の流行が指摘されています。
・A型H1N1は年によって重症化リスクが変動しますが、今年は全世代に感染力が強い傾向。
追記:2025/11/10)今年もはじめはH1N1を認めたものの、現在はH3N2型が流行を認めている用です。
追記:2025/11/25) H3型の続報です。サブグレードKという変異株が認められているようです。多彩な臨床症状や強い感染力を呈す可能性があり、今年のインフルはやはり要注意と言えるでしょう。


定義
・インフルエンザウイルスが鼻腔、咽頭などの気道粘膜に感染し、発熱、頭痛、全身倦怠感などの症状を呈する急性呼吸器感染症です。
・感染症法第5類に分類されます。
・RNAウイルスで、ヒトへの感染性を持つのはA、B、Cの3型です。
病因
季節性インフルエンザ
・A-B-C-D型の計4種類が存在する。
・ウイルスの粒子表面には、宿主細胞表面のレセプターに結合するヘマグルチニン(HA)と、新たに出現したウイルスが細胞表面のシアル酸との結合を切断して細胞表面からウイルスを遊離させる働きがあるノイラミニダーゼ(NA)の2種類の糖タンパク質が存在する。HAは18種類の亜型(H1-18)、NAは11種類の亜型(N1-11)に分類されている。
・ウイルスが認識する宿主細胞の糖鎖末端のシアル結合が異なることで、種特異性(トリ・ブタと濃厚接触して感染することはあるが、さらにヒト-ヒト間で流行拡大することはない)という特徴がある。
トリインフルエンザ
H5N1型
・1997年、トリで流行していたウイルスが突然ヒトに感染し重篤な肺炎や多臓器不全を起こした。その後も2009年までは東南アジアや中央アジア、欧州、アフリカでヒトへの感染事例が報告されていた。
・2010年からはインドネシア、カンボジア、バングラデシュ、中国、カナダ、エジプトでの報告のみになり、2017年のエジプト、インドネシアでの感染者を最後に報告はなし(2021/5:クリニカルガイド小児科)
H7N9型
・2013年に流行あり。H5N1と同様にトリで流行しているウイルスが特別な状況下でヒトに感染している状況。
・感染者の増加率はH5N1に比べ急激であった。
ブタインフルエンザ
・米国予防疾病管理センターの報告では、ブタ由来H1N1ウイルス、H2N2のヒトへの感染は散発的。
・一方、H3N2は持続的な感染があり、重症化による入院例・死亡例の報告もある。
経過・症状
・潜伏期間は通常1-4日間(中央値2日間)。
・感染可能期間は症状出現の2-3日前から、発症後約10日間。
・年長児以降は突然の発熱に、頭痛、咳嗽、咽頭痛、筋肉痛、鼻閉、脱力感、食欲不振などを伴う。
・乳児では不機嫌や経口摂取不良のみや、発熱のみの場合があり、細菌感染症と鑑別を要する。新生児では無呼吸を起こすことがある。嘔気や下痢などの胃腸症状は未就学児で多い。
・多呼吸、結膜充血、鼻汁・鼻閉、頚部リンパ節腫脹などを伴う。
・症状は7日で徐々に軽快するが、特に幼児では咳や易疲労性が数週間続くこともある。
・多彩な症状を呈することがあり、インフルエンザと診断しても、虫垂炎や尿路感染症など他疾患については否定できないので要注意。
・A型インフルエンザの排菌は、発症後24-48時間でピークとなり、その後急速に減少する。5-10日後には、気道内でほとんど検出されなくなる。
・B型インフルエンザの排菌は、発症48時間前と24-48時間後の二峰性である。
・咽頭後壁の濾胞腫脹(イクラサイン)も知られているが、他のウイルス感染症でも起こりうる。
・発疹を伴う場合は、手掌と足底を除く全身性の紅斑性丘疹が出現し得る。
・ウイルス性または二次性細菌性の肺炎に進展することがある。細菌性の場合は、S. pneumoniaeやS. aureusが一般的である。
合併症
以下の合併症が認められる場合があるので要注意。
・けいれん
・熱せん妄
・脳炎、脳症
・ギランバレー症候群
・ライ症候群
・心筋炎
・心嚢液貯留
・ウイルス性筋炎
・耳下腺炎 などなど…。
出席停止
・発症した日から5日経過し、かつ解熱から3日経過するまで出席停止

予防接種
・予防接種は有効であるが、予防接種をしていても除外はできない。
・2025年のワクチンは、今季流行予測株に対応した4価ワクチンが採用されています。ワクチンの発症予防効果は40〜60%、重症化予防効果は50〜70%と報告されており、特に高齢者・基礎疾患患者・小児はワクチン接種が推奨されます。
●参考:日本ワクチン学会 2025-26 期の季節性インフルエンザワクチンの接種に関する 日本ワクチン学会の見解 https://www.jsvac.jp/pdfs/20250924.pdf
フルミスト:経鼻インフルエンザ生ワクチン
・2023年に日本で正式承認され、2024/25シーズンから接種が開始されたフルミスト(FluMist)は、2歳~19歳未満で適応となる経鼻弱毒生インフルエンザワクチンです。
・注射を使わず鼻腔に噴霧する投与方法が特徴で、痛みや不安感が少なく、小児や注射が苦手な患者に適した選択肢として急速に普及しています。
・フルミストは従来の不活化ワクチンと異なり、弱毒化したインフルエンザウイルスを経鼻投与することで鼻腔および全身の粘膜免疫を誘導します。その有効性は、未就学児や小児において70〜90%の発症予防効果とされ、欧米の大規模臨床試験でもB型およびA型株を含む広範な株に有効性が示されています
・ただし、喘息や免疫不全、妊娠、サリチル酸系薬剤服用時など、適応外となるケースもあり、慎重なスクリーニングが推奨されています。
薬物治療
NA阻害剤が治療の主流。薬剤の投与経路が多様性あり。

日本小児科学会では、以下のように薬剤毎の推奨度が定められています。
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20241202_2024-2025_infuru_shishin.pdf
①オセルタミビル(タミフル®︎)
1歳以上では4mg/kg/日、分2 5日間(最大150mg/日)
1歳未満では6mg/kg/日 分2 5日間
・生後2週以降で使用可能
・家庭内での二次感染を抑制し、喘息のない小児では症状が早く軽減するなど一定の効果はある。入院率には影響を与えず、補足的な薬。
・日本小児科学会によると、以下の条件で処方する。
『幼児や基礎疾患があり、インフルエンザの重症化リスクの高い患者や呼吸器症状の強い患者』
また、発熱後48時間以内の使用を原則とされている(重症化リスクが高く症状が遷延する場合は可)
●ハイリスク児:2歳未満、早産児、基礎疾患がある、免疫抑制薬や抗癌剤、長期アスピリン服用あり
※重症例も含めて、最もエビデンスがあるのは、下記いずれの薬剤よりもオセルタミビルであることは忘れてはならない。
②ザナミビル(リレンザ®︎)
1回 10mg(5mgブリスターを2回) 1日2回 5日
※ブリスターを使用な可能な児。5歳以上。
③ラニナミビル(イナビル®︎)
10歳未満:20mgを単回吸入投与
10歳以上:40mgを単回吸入投与
・自分で吸入できれば5歳以下も使用可能。
・幼児期以降、特に学童においては単回投与で良いというのが非常に便利。なるべく早く周囲への感染対策となる点も良いポイント。軽〜中等症かつ吸入できる子にはベストと言っても良い。もちろん、重症例については、その限りではない。
④ペラミビル(ラピアクタ®︎)
10mg/kg(最大300mg、ただし合併症により重症化のリスクあれば最大600mg)
15分以上かけて点滴。単回投与。
→血中濃度が長時間維持されるため、タミフルなどの内服薬(5日間)とは異なり、1回で同等の効果が期待されています。
・基本単回投与だが、重症と判断される場合には、例外的に連日反復投与が認められています。
・生後1ヶ月から使用可能
・バッグ製剤の場合は、そのまま使用。バイアルの場合は、電解質の混ざっていない生食ルートに側管から使用、いずれにせよ、急速静注は絶対にしないこと。
⑤バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ)
錠剤:10 mg錠:素錠、20 mg錠:フィルムコーティング錠
顆粒:2%分包 (1 包 500 mg 中に 10 mg 含有)
用法・用量:(添付文書より)
・通常、成人及び 12 歳以上の小児には、20 mg 錠 2 錠又は顆粒 4 包(バロキサビル マ
ルボキシルとして 40 mg)を単回経口投与する。
・ただし、体重 80 kg 以上の患者には 20mg 錠 4 錠又は顆粒 8 包(バロキサビル マルボキシルとして 80 mg)を単回経口投与する。
・小児では、以下の用量が推奨されます。
10kg以上20kg未満・・10mg
20kg以上40kg未満・・20mg 1錠 または 顆粒2包
40kg以上・・20mg 2錠 または 顆粒4包
・ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)は、2018年以降国内外で急速に普及している単回投与型抗インフルエンザ薬で、2025年には日本で最も処方される抗インフルエンザウイルス薬となりました。
・ゾフルーザの最大の特徴は、ウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性阻害による新規作用機序と、1回投与で治療が完結する利便性です。剤型・規格:
・2025年公開の世界的第Ⅲ相多施設共同試験(CENTERSTONE試験)では、ゾフルーザ投与群は家庭内へのウイルス伝播リスクがプラセボ群に対し32%減少、さらに発症同居者割合も25%低減しました(5日以内/同居者発症率:ゾフルーザ 5.8%、プラセボ 7.6%)と報告されています。安全性では従来から有害事象は少なく、新たな懸念も報告されていません。
・また、予防投与としての有用性についても注目されており、患者接触後48時間以内の内服により発症リスクが3%台まで抑えられる(プラセボ約14%→ゾフルーザ約3%、発症リスク86%減少)臨床成績も公表されています。2025年からは体重10kg未満の小児への適応拡大も進みました
●塩野義製薬株式会社:ゾフルーザⓇ錠 10mg / ゾフルーザⓇ錠 20mg / ゾフルーザⓇ顆粒 2%分包に係る 医薬品リスク管理計画書
毎年毎年、インフルエンザが流行しだすと小児科は大慌てです…。できるだけ軽い症状で済むように、みなさん大人もこどもも、予防接種は計画的に。。。。。
|
|




コメント