総論
・ギランバレー症候群(Guillain-Barré Syndrome, GBS)は、急性の自己免疫疾患で、末梢神経を攻撃することによって筋力低下や麻痺を引き起こします。自己免疫性の運動優位の多発神経根炎です。
・下肢の筋力低下から発症し、症状は発症から2-3週以内にピークに達します。2ヶ月以上の進行を認める場合には、慢性炎症性脱髄性多発神経炎を考えます。
・この疾患は、感染症(カンピロバクター・サイトメガロウイルスなど)やワクチン接種後に発症することが多く、特に呼吸筋麻痺を伴う場合には生命を脅かす可能性があります。
・GBSは迅速な診断と治療が求められる緊急疾患であり、適切な対応が予後に大きく影響します。
原因
感染症との関連
・ギランバレー症候群の多くは、感染症をきっかけに発症します。最も関連が深い病原体としては以下のものがあります。
- カンピロバクター・ジェジュニ:食事からの感染が多く、不十分な調理による家禽類(鶏肉など)が主な原因です。
- サイトメガロウイルス(CMV):呼吸器や全身性感染を引き起こすウイルスです。
- エプスタイン・バーウイルス(EBV):伝染性単核球症を引き起こすウイルスです。
・これらの病原体に対する免疫反応が誤って自分自身の末梢神経を攻撃し、神経障害を引き起こします。この現象は「分子模倣」と呼ばれ、病原体と神経細胞の構成成分が類似しているために免疫系が誤作動することが原因です。
- 慶應義塾大学KOMPAS https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000322.html
症状
初期症状
・GBSは通常、感染後数日から数週間以内に発症します。
・典型的な初期症状としては、手足の筋力低下や感覚異常が挙げられます。これらの症状は下肢から始まり、徐々に上肢へ進行することが一般的です。
・なお、初期に軽度のしびれや痛みを伴うことがあります。
・自律神経症状を認め、不整脈、高血圧、膀胱直腸障害を認める場合もあります。
・また、一部の患者では顔面筋や呼吸筋にも影響が及びます。
進行・重篤な合併症
・筋力低下は通常対称的であり、弛緩性麻痺として現れます。
・重度の場合、呼吸筋麻痺によって人工呼吸器が必要になることもあります。
・また、自律神経障害も頻繁に見られ、血圧変動や不整脈など生命を脅かす合併症を引き起こす可能性があります。
2. Guillain-Barré syndrome: epidemiology, pathophysiology and management (Drugs. 2004;64(6):597-610. doi: 10.2165/00003495-200464060-00003.)

診断方法
臨床診断と電気診断検査
・GBSの診断は主に臨床的評価に基づいて行われます。
・患者の病歴や身体所見から疑われる場合には、電気診断検査(神経伝導速度検査や筋電図)が実施されます。これにより、脱髄型や軸索型などのサブタイプを区別することが可能です。
3. Electrodiagnostic methods to verify Guillain-Barré syndrome subtypes in Istanbul: A prospective multicenter study (J Peripher Nerv Syst. 2024 Mar;29(1):72-81. doi: 10.1111/jns.12612. Epub 2024 Jan 30.)

髄液検査
・髄液検査では、「タンパク細胞解離」と呼ばれる特徴的な所見が見られます。これは髄液中のタンパク質濃度が上昇しているにもかかわらず、白血球数は正常である状態です。
・この所見はGBSに特有であり、診断確定に役立ちます。
治療
免疫グロブリン静注療法(IVIG)
・GBS治療において最も一般的かつ効果的な方法は免疫グロブリン静注療法(IVIG)です。・IVIGは大量の抗体を投与することで免疫反応を抑制し、神経への攻撃を減少させます。
・この治療法は発症初期から行うことで予後を大幅に改善します。
血漿交換療法
・血漿交換療法もまた効果的な治療法です。
・この方法では患者の血液から有害物質を除去し、新しい血漿と交換することで免疫反応を抑制します。
・特に重篤な患者やIVIGが効果を示さない場合には、この治療法が選択されることがあります。
集中的サポートケア
・重度の患者では集中治療室で生命機能のモニタリングとサポートが必要です。
・呼吸補助や水分補給、褥瘡予防など全身管理も重要です。
・また、リハビリテーションも早期から開始し、不動による関節拘縮や筋萎縮を防ぐために理学療法士との連携が求められます。
予後
・GBS患者の大多数は数ヶ月以内に回復します。
・しかし、一部では長期的な筋力低下や感覚異常が残ることがあります。成人では約30%、小児ではそれ以上の割合で3年後も何らかの障害が残存すると報告されています。
・また、約2~5%の患者では慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)という慢性的な神経障害へ移行することがあります。このため、長期的なフォローアップとリハビリテーションが必要となります。
【まとめ】
・ギランバレー症候群は急性かつ進行性の自己免疫疾患であり、早期診断と治療が予後改善に不可欠です。
・感染後数週間以内に手足の脱力感や感覚異常を感じた場合には速やかに医師へ相談し、適切な検査と治療を受けることが重要です。
・また、IVIGや血漿交換療法など効果的な治療法も確立されており、多くの場合には回復が期待できます。
・しかし、一部では長期的なリハビリテーションやフォローアップケアが必要となることもありますので、その点も考慮した包括的なケア体制が求められます。


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