総論(定義・病態)
・拡張型心筋症(Dilated Cardiomyopathy, DCM)は、心臓の左心室(または両心室)が異常に拡大し、収縮機能が低下する疾患です。
・全身に十分な血液を送り出す能力が低下し、最終的には心不全に至ることがあります。DCMは遺伝的要因や後天的要因によって引き起こされることが多く、その原因は多岐にわたります
■参考文献:
1.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31073128
2.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28190577
小児でもDCMは発症することがあります。特に小児では代謝異常やミトコンドリア機能障害などが原因となることが多いです。また、小児期におけるDCMは進行が速く、早期発見と治療介入が非常に重要です
要因(遺伝的・非遺伝的)
遺伝的要因
・DCMは多くの場合、家族性に発症します。家族性DCMでは、サルコメアや細胞骨格、核膜タンパク質などをコードする遺伝子に変異が見られます。これらの遺伝子変異が心筋細胞の構造や機能に影響を与え、最終的には収縮不全を引き起こします
・特定の遺伝子変異が見つかることで、早期診断や適切な治療選択が可能になることがあります。
・DCMの約30〜50%は遺伝的要因によるものであり、特にサルコメアや細胞骨格に関連する遺伝子変異が関与しています
■参考文献
3.Dilated cardiomyopathy: from epidemiologic to genetic phenotypes: A translational review of current literature(J Intern Med. 2019 Oct;286(4):362-372. doi: 10.1111/joim.12944. Epub 2019 Jul 29.)

4.Dilated cardiomyopathy in the era of precision medicine: latest concepts and developments(Heart Fail Rev. 2022 Jul;27(4):1173-1191. doi: 10.1007/s10741-021-10139-0. Epub 2021 Jul 14.)

・一方で、ウイルス感染や毒素(アルコールや薬物)、内分泌疾患などの後天的要因もDCMの発症に寄与することがあります。
■参考文献
5.Lancet. 2010 Feb 27;375(9716):752-62. doi: 10.1016/S0140-6736(09)62023-7.

6.In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024 Jan.
2023 Apr 7.

左冠動脈肺動脈起始症
・左冠動脈肺動脈起始症では、左冠動脈を流れる血液は酸素飽和度の低い静脈血であり、かつ左冠動脈内の血圧は肺動脈圧と同等である。よって、左冠動脈に支配される心筋には酸素の少ない血液が環流し、その環流圧は低いので心筋内にいきわたるには不十分となります。
・そのため、虚血性の変化として左室心筋障害が起こり、二次性拡張型心筋症を起こし得ます。
後天的要因(非遺伝的要因)
後天的なDCMの原因としては、以下のようなものがあります:
- ウイルス性心筋炎:ウイルス感染による炎症が心筋細胞を破壊し、その結果としてDCMが発症します。
- アルコールや薬物中毒:長期間にわたるアルコール摂取や特定の薬物使用が心筋にダメージを与えます。
- 内分泌疾患:甲状腺機能低下症や糖尿病などもDCMのリスクを高めます。
症状
・DCM患者は多くの場合、初期には無症状であることもあります。しかし、病気が進行すると以下のような症状が現れます。
- 息切れ(呼吸困難):軽い運動でも息切れを感じるようになります。
- 浮腫(むくみ):特に足や足首にむくみが出ます。
- 疲労感:日常生活で疲れやすくなります。
- 不整脈:心臓リズムの乱れ(不整脈)が現れることがあります。
5.Lancet. 2010 Feb 27;375(9716):752-62. doi: 10.1016/S0140-6736(09)62023-7.

診断
DCMの診断にはさまざまな検査が必要です。一般的には以下の方法が用いられます:
- 心エコー検査:左心室の拡大と収縮機能低下を確認します。
- MRI(磁気共鳴画像法):詳細な画像で心臓組織の状態を評価します。
- 遺伝子検査:家族性DCMの場合、特定の遺伝子変異を確認するために行われます。
7.Dilated cardiomyopathy: causes, mechanisms, and current and future treatment approaches(Lancet. 2023 Sep 16;402(10406):998-1011. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01241-2.)

8.Dilated Cardiomyopathy: A Comprehensive Approach to Diagnosis and Risk Stratification(Biomedicines. 2023 Mar 9;11(3):834. doi: 10.3390/biomedicines11030834.)

治療
薬物療法
DCM患者には主に以下の薬物療法が推奨されます。
- ACE阻害薬やARB:血圧を下げて心臓への負担を軽減します。
- β遮断薬:心拍数を抑えて心臓への負担を減少させます。
- 利尿薬:体内の余分な水分を排出し、浮腫や息切れを改善します。
非薬物療法
薬物療法だけでなく、以下の非薬物療法も重要です。
- ペースメーカーやICD(植込み型除細動器):重度の不整脈や突然死リスクを軽減するために使用されます。
- 左室補助装置(LVAD):末期心不全患者に対して使用される機械式補助装置です。
- 心臓移植:最終手段として考慮される治療法です。
予後
・DCMは進行性疾患であり、多くの場合、最終的には重度の心不全へと移行します。しかし、早期診断と適切な治療が行われれば、生存率は大幅に改善されます。
・特に遺伝子検査によってリスク群を特定し、適切な治療計画を立てることが重要です。
生活習慣改善
患者自身も生活習慣を見直すことで病気管理に貢献できます。以下は推奨される生活習慣です。
- 塩分制限:塩分摂取量を減らすことで浮腫や高血圧を防ぎます。
- 適度な運動:医師と相談しながら適度な運動を取り入れることで体力維持につながります。
- 禁酒・禁煙:アルコールやタバコは病気進行を悪化させるため避けましょう。
まとめ
・拡張型心筋症は複雑で多様な原因によって引き起こされる疾患ですが、近年では診断技術や治療法も進歩しています。
・特に家族性DCMでは早期診断と予防的措置が患者の予後改善につながります。
・また、小児でも発症する可能性があるため、小児科医としても注意深い観察と迅速な対応が求められます。


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